ピンチの「チ」はチャンスの「チ」。昔、小説に影響を受けた母親が、何度も繰り返し言っていた言葉です。当時の筆者はちょうど反抗期だったこともあり、「いや、本当にピンチになったら、チャンスを生み出す余裕なんてないでしょ」とあまり真面目に受け取りませんでした。 しかしその時より少し成長した今は、その言葉に納得もしています。ピンチをピンチのまま終わらせてしまってはいけないし、ピンチをチャンスに変えるだけの強い心が必要ではないでしょうか?
逆境に負けない、つまり本当にピンチをチャンスに変えるためのタフな精神を作るには、人間関係の充実が重要なのです。今回は人間関係と折れない心について考えてみたいと思います。
ピンチをチャンスに変えた成功者たち
ピンチをチャンスに変えて成功した人たちは数多くいます。かの、スティーブ・ジョブズもその一人です。 彼は自ら創立したアップルを解雇されるというピンチを迎えますが、その後すぐに「NeXT」という会社を設立しました。彼は当時のことを次のように語ったそうです。
当時は分からなかったが、アップル社に解雇されたことは、私の人生で起こった最良の出来事だったと後に分かった。成功者であることの重さが、再び創始者になることの身軽さに置き換わったのだ。何事につけても不確かさは増したが、私は解放され、人生の中で最も創造的な時期を迎えた。
(引用元:名言DB|スティーブ・ジョブズの名言・格言|アップルをクビになって運が良かった)
なんと、彼にとっては解雇は創造性を伸ばすためのチャンスになったのだというのです。確かに、彼はこの後アップルに戻り、iPodやiPhoneといった新商品を次々に提供して成功を収めています。 文字通り彼はピンチを最大のチャンスへと変えることに成功したわけですが、ピンチをチャンスに変えられる人と変えられない人、いったい何が違うのでしょうか?
逆境に負けない人は、「レジリエンス」が高い人なのです。
逆境に負けない力「レジリエンス」
「レジリエンス」という聞き慣れない言葉を知っていますか? スイスの世界経済フォーラム(通称ダボス会議)以来使われるようになった「レジリエンス」という言葉は、もともとは物理用語で、抵抗力、復元力という意味で使用されていました。
そこから派生し、最近では、「大きなストレスにさらされたときにもしなやかに生き残ることができる力」を意味しています。精神科医の大野裕氏は、レジリエンスにおいて大切なのは人間関係と、自分を客観的に見る力だといいます。
国立精神・神経医療研究センターの大野裕さんは、けん玉の一喜一憂を「目の前のできるできないにとらわれて、自分が何をしているかが見えなくなる。大事なのは自分を客観的に考えること。そして人間関係だ」という。レジリエンスは「人間関係」の上に「楽観性」「自己効力感」「自尊感情」「感情のコントロール」を重ねて培われるものらしい。
(引用元:Jcast|折れない心育てる『レジリエンス』カギは楽観だった! 逆境グラフ作って落ち込み客観視)
自分を客観的に考えることができれば、落ち着き、パニックになるのを防ぐことができます。またピンチが訪れた時も「大丈夫、何とかなるさ」と笑いあい、一緒に立ち向かってくれる仲間がいれば、だいぶ気分が楽になりますよね。 私たちは仲間と共にいることでつらい時を耐え、チャンスの訪れを待つことができるのかもしれません。
人間は他者とのかかわりの中で生きていく
「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」と言い切るアドラー心理学。課題の分離や今この瞬間を生きよなど、数々の問題解決のテクニックを教えてくれますが、一方で人生の目標として「他者貢献」を掲げています。
またフィンランドで15~64歳の約3500人を対象に、2000年から8年間に渡って抗うつ剤の使用について調査を行ったところ、一人暮らしの人は家族と共に暮らす人に比べ、80%もうつになる可能性が高いことがわかったのです。
高いレジリエンスを持った強い心。それは他者と支えあうことによって得られるものなのかもしれませんね。
*** 人間は社会的な動物だといわれています。もしかしたら、他者と支えあって過ごすことで強くなるように遺伝子上でプログラムされているのかもしれません。周りの人を大切にして、困難に立ち向かう強い心を構築してくださいね。
(参考) 名言DB|スティーブ・ジョブズの名言・格言|アップルをクビになって運が良かった Jcast|折れない心育てる『レジリエンス』カギは楽観だった! 逆境グラフ作って落ち込み客観視 Menjoy|一人暮らしは「うつ病リスクを80%高める」ことが明らかに 岸見一郎 古賀史健(2013),『嫌われる勇気』,ダイヤモンド社.