人に好印象を与えたい、コミュニケーションを円滑に進めたい、という思いは誰もが持っているでしょう。しかし、いきなり「コミュニケーション能力を上げるぞ!」と意気込んでも、何から手をつけてよいのかわからないもの。そこで今回は、心理学の観点から、人との関係をスムーズに築きやすくするポイントをお伝えしていきます。
円滑なコミュニケーションのために大切な「ラポール」
ラポールという言葉を聞いたことがありますか? これはフランス語で、直訳すると「橋をかける」という意味。臨床心理学において使われる言葉で、セラピストとクライアント(相談者)との間に相互の信頼が築かれ、安心して自由にふるまったり感情の交流を行ったりできる関係にある状態を表す用語です。
ラポールは、カウンセリングだけに留まらず、家族・友人関係やビジネスにおいても、コミュニケーションを円滑にするためにとても大切なことです。それでは、ラポールを築くためのポイントを4つ紹介していきましょう。
1.ミラーリング
ミラーリングとは、相手のしぐさや姿勢、表情などを鏡のように自分も真似することです。これによって、相手は無意識にあなたを自分と似た存在だと認識して、警戒心を解き、好意や安心感を抱きます。
よく、恋愛テクニックのひとつとして「コップを同時に持ち上げる」といったものが指南されていますが、これもミラーリングの効果をねらったものです。ただし、あまりにあからさまなのもNGなので気をつけてください。
2.ペーシング
ペーシングとは、相手の話しかたや感情、ペースにあわせていくこと。声のトーン(大小、高低など)や速さ、感情の様子(明るさや興奮度合いなど)などを、相手とそろえるということです。同じ呼吸のリズムをとるとなおよいですね。
ここでは、相手との共通点を作り出すことがポイントとなります。先ほども述べたように、共通点があると、無意識的に好感を抱きやすいからです。
3.バックトラッキング
耳慣れない言葉かもしれませんが、これは相手の言ったことを返す、つまり「オウム返し」です。相手の話をきちんと聞いていると示し、相手に自分が発した言葉を再認識してもらうことが目的です。
まるまる相手と同じ表現でなくてはならない、ということではありません。「相手の話す内容の事実」「相手の感情」「その話の要約」を返すのが基本です。特に感情表現は、それを強調するように返すとよいですね。これによって、相手は自分の話がきちんと理解され、受け入れられているという感覚を持ちます。
4.キャリブレーション
キャリブレーションとは、相手の心理状態を、言葉以外の表情や動作、呼吸の様子、声のトーンや速さなどで認識することです。会話をしているときに、話の内容だけでなく相手の様子にも注意を向けて、本当の気持ちを理解しようというものです。ペーシングともつながってきますね。
たとえば、相手が普段より大きな声で早口で話している様子を想像してみてください。きっと、相手はその話題に食いつき興奮しているでしょう。相手の様子をよく観察することで、相手の感情が理解できるようになるのです。
この4つのポイントすべてに共通するのが、「相手のことを観察し、理解しようとする」ことです。ラポールを築き、コミュニケーションを円滑に行うためには、相手を知ろうとすることが非常に重要となるのです。
ザイアンス効果で印象アップ
「単純接触効果」とも言います。単純接触効果という言葉は聞いたことがなくても、ザイアンス効果という言葉はなんとなく耳にしたことがあるという人は多いのではないでしょうか。
これは、何度も繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果です。最初は苦手意識があったり関心がなかったりしたものも、何度も見聞きしているうちにいつの間にか好印象を抱くようになった、という経験はありませんか? CMなどでも、このザイアンス効果をねらって、何度も放送することで好感度をアップさせるという手法がよくとられているのです。
つまり、よく会う人は自然に好きになってくるということ。コミュニケーションを円滑に進めたければ、とにかく会いにいく! ということですね。ちなみに会っている時間ではなく、回数によって起こる効果なので、一度に長い時間というよりは何回も会うことが重要です。
*** いかがでしょうか。人と人との関係は、もちろんこれらの効果だけでうまく築けるものではありませんが、少しでもコミュニケーションを上手く進めるための手助けにしてくださいね。
(参考) NLP学び方ガイド|ラポールテクニック、バックトラッキング、ペーシング、キャリブレーション NLPとは?はじめてのNLP入門|ラポールって何? Wikipedia|単純接触効果

