緊張に強い人のことを、羨ましいと思ったことはありませんか?

大事なプレゼンや会議、交渉の大一番、大きな試験の直前など……緊張する場面は誰しもあると思います。そんなときに緊張が高まって落ち着かず、折角準備をしていたのに実力を出し切れなかったという経験はとても悔しいものですよね。

ではどのようにすれば、緊張から解放されて実力を出し切ることができるのでしょうか。
緊張してしまう原因を正しく理解し、実際に緊張と戦い続けている二人の成功者の「緊張を解すコツ」を参考にしながら、実力を出し切る方法を学んでいきましょう。

なぜ緊張してしまうのか?

緊張から解放される方法を考える前に、どうして緊張してしまうのか、その原因について考えてみたいと思います。

緊張とは一般的に、不安によって脳内伝達物質であるアドレナリンやノルアドレナリンの分泌が促進され、その結果ストレスが高まって自律神経系が過敏になっている状態のことを言います。

人間は危険や恐怖に相対したとき、脳内で交感神経系が活発になり、一般的に「戦うか逃げるか反応(fight-or-flight response)」と呼ばれる状態に入ります。これは人間が進化する過程で培ってきた、本能に刻み込まれたもので、目の前の危険に対して「戦う」か「逃げる」かということを素早く選び反応を返すための、いわば身体の「エマージェンシーモード」。優先的に筋肉に血液が供給されるようになり、結果として他の部分への血液の供給が抑制されます。そのため心拍や呼吸が早くなり、血圧が高くなるという反応が見られるのです。

人間の進化の過程において、危険を回避し、相手に打ち勝ちながら繁栄するためには必要不可欠だったこの本能が、今の私たちに緊張をもたらす原因となっているのですね。

このように、進化の大きな助けになってくれた緊張ですが、高度に発達した現代社会においては、悪さをしてしまう場面が少なくありません。

例えば重要なプレゼンのシーンを考えてみると、そこは原始時代のように「戦う」か「逃げる」かという選択の場面とは違います。必要とされるのは冷静な判断力や理路整然とした口調であり、肝心なのは平常心でしっかりと乗り切れるかどうか。それなのに、私たちは緊張を強いられます。かつての社会とは真逆となってしまった文明社会の現状が、私たちを苦しめているわけです。

しかも、そのような緊張状態に対する耐性や身体の反応というのは、あまり影響を受けない人もいればすぐに頭の中が真っ白になってしまう人もいるように、個人差がかなり大きい領域になってきます。特に耐性の低い体質……つまり緊張しやすいタイプの人は、本能の自然な反応と本来必要とされている能力の差に苦しむ、ということになってしまいます。だから「大事な場面で失敗してしまった」「本来の力を発揮できなかった」と悩んでしまうのですね。

だからこそ、現在的な「勝負の場」では、上手に状況に対処して緊張を和らげることが、勝敗を左右する大きなカギになって来ます。

では実際、「勝負に強い」人たちがどのようにして緊張と戦っているのか、実際に緊張と戦っている二人の成功者の「戦い方」を見てみましょう。

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五郎丸ポーズの本当の意味

2015年のラグビーワールドカップ日本代表として活躍した五郎丸歩選手は、その活躍ぶりだけではなく「五郎丸ポーズ」と呼ばれる独特のポーズでも有名になりました。その「五郎丸ポーズ」にこそ、緊張と戦うための重要なカギが隠されています。

一般的に、キックを行う前に身体の前で両手を組み合わせて祈るようなポーズが「五郎丸ポーズ」と思われている節がありますが、実はそうではありません。ボールを地面にセットするところから彼にとっての「五郎丸ポーズ」は始まっています。

1.ボールを2回転させてセットする。
2.手を合わせてボールが飛んでいく様子をイメージする。
3.後ろに3歩。
4.左に2歩。
5.助走8歩でボールを蹴る。

これがプレースキックを行う前に、五郎丸選手の毎回行う動作です。ボールを回転させる2回転や、3歩、2歩、8歩という部分まで、毎回キッチリと同じ動作を繰り返しています。

そのことについて、東海大学体育学部の高妻容一教授は次のように語っています。

キック前の行動をパターン化することで、一定のリズムが生まれる。そのリズムを毎回体感していれば、緊張状態にあっても意識をリズムへと集中させられるはず。そうすれば、ネガティブ思考などの邪念から解放されて“いつもの力”を出せるから、キックの精度も上がるのです

(引用元:日経Gooday|五郎丸ポーズ、イチローのカレー…大一番で“いつもの力”を発揮するコツ
プレッシャーで折れない心のカギ“ルーティン”を味方につける

この方法は「ルーティン」と呼ばれ、今ではトップアスリートの間で広く採用されているメンタル面での戦略です。傍から見ると一種の願掛けのように見えることも多いルーティンですが、実は彼らが緊張から解放されて100%の実力を出すための強力な武器なのです。

ジョブズの強さは“瞑想”にあり!

次に、元AppleCEOのスティーブ・ジョブズ氏を見てみましょう。彼は独特の習慣や美学を持っていたことで有名で、実際に長年実践していた習慣の一つが、瞑想です。彼が瞑想と出合ったのは19歳の頃、インドを訪れたとき。そこで瞑想の持つ可能性に触れた彼は、それから毎日欠かすことなく瞑想をし続けたそうです。

そしてそんな彼の習慣が話題になり、今ではIT最先端であるシリコンバレーのビジネスパーソンの間でブームを引き起こすほどになっています。

では瞑想のどんなところが、そこまでビジネスパーソンを惹きつけ、また緊張と戦う武器になってくれるのでしょうか。

ビジネスパーソンに向けた「オフィスヨガ」として瞑想を教えている、ヨガインストラクターの品川ゆかり氏は、瞑想について次のように説明しています。

瞑想の説明として、よく、わたしたちは、過去のことを考えると7割が後悔に、未来を考えると7割が不安になってしまう例を使います。瞑想中は、過去にあったことや、未来に起こることにとらわれずに、「いま」に集中していくのです。

(引用元:CodeIQ|ジョブズはやっていた。シリコンバレーで流行の『マインドフルネス瞑想』──オフィスヨガ【1】

瞑想とは、自分の意識を呼吸に向けることを中心として、頭の中で絶え間なく吹き荒れる思考の流れから離れ、自分自身を客観的に見ることで精神を静める行為を指しています。無意識に絶え間なく何かを考え続けてしまうのが人間ですから簡単なことではありませんが、目を閉じて呼吸に集中したり、マントラと呼ばれる短い呪文を唱えたりするなどの様々な方法によって、少しずつ自分自身を客観的に見ることができるようになると品川氏は言います。

人間が考えることというのは、ほとんどが過去についてか未来についてです。しかし瞑想では、瞑想している「今、この瞬間」に集中することで過去や未来から解放され、落ち着いて「自分自身」と向き合うことができるようになります。

そのような瞑想の効能について、品川氏は更に次のように述べています。

自身の思考を客観視するトレーニングをするため、ネガティブな思い込みもなくなり“生きやすく”なっていきます。自律神経が整えられるので、ストレスに強い身体に導き、集中力もアップします。

(引用元:同上)

つまり瞑想を行うことで、ネガティブな思い込みや失敗への不安から解放され、それによって身体が「エマージェンシーモード」を抜けてストレスを軽減することが期待できるのです。

緊張とは、その場や状況に呑まれてしまい、気圧されている状態だと言い換えることができます。だからこそ瞑想を通して自分自身を客観的に見ることは、その場の空気を跳ね返して平常心を保つための強力な武器になります。

瞑想をルーティンに

では、実際に五郎丸歩選手やスティーブ・ジョブズ氏のそれぞれの習慣を上手に取り込むにはどうしたら良いのでしょうか。ここで提案するのは、ルーティンと瞑想の合わせ技です。

普段から仕事に取り掛かる前、何かを「頑張ろう」と思ったときに、必ず数分瞑想をしてから取り掛かるようにするのです。重要なのは、それを普段から根気強く続けること。続けることで、数分の瞑想があなたにとってのルーティンになり、平常心に戻って高い集中力を獲得するための強力な武器になってくれるでしょう。

それがルーティンになっていれば、超重要なプレゼンに挑むときでも、重要な取引先との交渉の席につくときでも、必ず平常心に戻って自分の力を最大限に発揮することができるはずです。

たとえまだ瞑想を取り入れたばかりでルーティンとしての定着が浅いとしても、短い時間目を閉じて自分自身にじっと意識を向けるだけで十分瞑想として機能します。どうしよう、どうしようと考え続けることよりも、そうして「緊張」自体を根本から克服していくことが、緊張に強くなるための近道といえるでしょう。

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ルーティンも瞑想も、決まった型がある訳ではなく、一人一人が自分に合ったやり方を見つけていくのが基本です。これは「平常心に戻る」ということと無関係ではないと思います。大切なのは「普段の自分」に戻ることができる方法をきちんと確保しておくこと。

筆者自身、自分の緊張耐性の低さに悩まされた経験があります。受験の際には「最大の敵は緊張しやすい自分自身だ」と銘打って、克服のために本格的なトレーニングを行いました。その結果分かったのは、緊張しやすい性格はトレーニングで改善可能ということです。

自分なりのルーティンを作り上げたり、瞑想法を模索したりしていく中で、緊張なんかに呑まれない自分なりのスタイルを見つけ出せると良いですね。

(参考)
MEN-ZINE|現代人に厄介なノルアドレナリンの機能と減らしかたを考える!?
Wikipedia|戦うか逃げるか反応
Wikipedia|アドレナリン
Wikipedia|ノルアドレナリン
QREATORS|五郎丸ポーズから見えてくる「ルーティン」を見直す技術
日経Gooday|五郎丸ポーズ、イチローのカレー…大一番で“いつもの力”を発揮するコツ
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