知らず知らずのうちに脳を疲れさせている3つの最悪行動。“効率を重視しすぎ” はかえってキケン。

規則正しい生活を心がけているのに、いまひとつ気分が優れず仕事が捗らない。仕事に集中できず、考えもまとまらない……。

それは、脳が疲れているせいかもしれません。自分の脳に、無理なことを強いてはいませんか? いますぐ「脳を疲れさせる最悪行動」を改めましょう

脳を疲れさせる最悪行動1:なんでも理性で押さえつける

わたしたちの食欲や睡眠といった本能、喜び・悲しみ・怒り・不安といった情動を担うのは「大脳辺縁系」です。

そして、言語や理性、合理的判断に、論理的思考など、人間の高度な機能を担うのは「大脳新皮質」です。他の動物と比べ、人間が極度に発達している部分でもあります。そんな「大脳新皮質」を持つからこそ、人間は秩序的な生活を営むことができます。

しかし、「大脳辺縁系」で生じた不安や怒り、欲求などを、「大脳新皮質」の理性で無理矢理押さえつけている不自然な状態が長く続くと、「大脳辺縁系」が疲れ果てて動かなくなってしまいます。こうして脳内に不和が生じると、脳の機能低下につながり、体調まで崩してしまうのだとか。

たとえば、良かれと思ってこんな生活をしていませんか?

  • 大好物は、糖質と脂質が多いので一切食べない
  • 美味しくはないが、健康的なものしか口にしない
  • 何をするにも、まず「効率」を考える
  • 平日も休日も、スケジュール通りに動く
  • バカバカしい漫画を読みたいが有用な活字だけ読む

こうした「完璧すぎる生活」を送っていても、恒常的に気分が良く、仕事のパフォーマンスも安定しているのであれば問題ありません。しかし、何だか「疲れた」「集中できない」「考えがまとまらない」と感じるのであれば、この生活を変える必要があります

脳を疲れさせる行動01

心地よいことを増やそう!

1991年に「脳疲労」概念を提唱した、九州大学名誉教授の藤野武彦氏が診療に取り入れているBOOCS理論では、脳疲労を解消するために、自分への抑制を減らすこと、「~すべき」を禁じること、心地よいこと、好きなことをひとつでもいいから始めていくことなどを、具体的な方法としています。それらを参考に、たとえば前項で示した「完璧すぎる生活」を、以下のように緩めてみてはいかがでしょう。

  • 好物は週に1度、好きなように食べる
  • どんなに健康的でも、嫌いなものは食べない
  • 「効率」8割、「非効率な寄り道やボンヤリ」2割
  • まったく予定を立てない休日を設ける
  • たまにはバカバカしい漫画を読んで日々のストレスを解消

中国春秋時代における哲学者・老師はこういいました。

柔を守るを強と曰う

(引用元:BEST TIMES|柔を守るを強と曰う

「人生を強く元気に生きぬく秘訣は、柔軟に生きることだ」という教えなのだとか。仕事や日々のパフォーマンスを上げるためにも、全てにおいてガチガチにならず、心地よさを増やしていきましょう。

脳を疲れさせる行動02

脳を疲れさせる最悪行動2:やたらに選択することが多い

たとえばあるコーヒーショップで、「えーと……、ディカフェのソイラテに、フォームミルクを追加して、Tallサイズで」と選んでオーダーし、ラーメン屋さんで「麺かため、背脂少なめ、ネギ多めで」と選んで頼み、動画配信サービスで莫大な数の選択肢から何を観るか選び、公共料金をどの会社でまとめるか迷い、大型スーパーに並ぶ多種多様なヨーグルトのなかから何を選ぶか迷っている……。

とにかく、現代は「選ぶこと」が尽きません。実はこれも、脳を疲れさせる原因なのです。

メンタリストのDaiGo氏によれば、人間の脳は選択や判断をするときにも集中力を使うとのこと。その際に、ウィルパワー」と呼ばれる意志力を消耗してしまうそうです。しかも、このパワーには限りがあるといいます。

事実、意思決定と心理学の分野には「決断疲れ」という言葉があるそう。ネゲヴ・ベン=グリオン大学やコロンビア大学による2011年の研究では、裁判官の好意的な判決は、午後になるにつれ少なくなっていくことが明らかになっています。日常でたとえると、何を食べるか悩んでいるうちに疲れて、最適であるかないかは関係なく無難に「今日の定食」を選ぶようなものです。

ウィルパワーの基盤は脳の前頭前野にあり、認知を制御する実行機能に加え、やる気を制御する報酬系などが関わっているそう。つまり、あらゆる選択をしてウィルパワーを消耗している状況は、脳が疲れている状況でもあるということ。

それを避けたいなら、無駄な選択を減らすことです。

脳を疲れさせる行動03

無駄な選択を減らそう!

毎朝何を着ていくか迷わないよう、毎日何を食べるか迷わないよう、そのほかあらゆることで迷わないように、以下のルールを設けましょう。

  1. 小分けにするルール
  2. 曜日ごとのルール

たとえば着ていく服も、全ストックから選ぼうとすると大変ですか、小分け・曜日分けしておけば選びやすくなります。「来週分の服」あるいは「月曜日は暖色系」などとザックリ分けておけばいいのです。

また、メールについても作業を一括せず、「読む」「書く」「確認して送信」それぞれを時間で小分けておけば、段階を経ることで考えがまとまりやすくなり、迷いが減ります。仕事の優先順位をつける際にも、単純な2工程に分け、「1.いつまでに」で順番を決め、「2.どのレベルで」で調整すれば、決めやすくなるはず。

いつもランチで何を食べるか悩んだ挙句「なんでもいいや」となってしまうなら、たとえば月曜は中華、火曜は洋食、水曜は和食などと決めてしまいましょう。これらの方法は『なんでも迷いたがる人は「ウィルパワー」を無駄に消費して脳を疲れさせている。』で詳しく紹介しています。

選択する機会や選択肢を減らしてウィルパワーを節約し、脳の疲れを減らしましょう。

脳を疲れさせる行動04

脳を疲れさせる最悪行動3:とにかく休憩が足りない

オフィスワークでは、多くの人が座りっぱなしの状態です。長いあいだ座りっぱなしの状態だと、股関節が圧迫されて血液やリンパの流れが滞り、疲労物質が脳や自律神経に溜まってしまうのだとか。

また、デスクワークをしていて「疲れた」「だるい」と感じる場合、脳が疲労してSOSを出している可能性があると、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生はいいます。同じ脳細胞を繰り返し使われ、疲れた脳が「もう、これ以上使わないで!」と叫んでいるわけです。

この SOSを無視していると、脳神経の働きが落ちて注意力が低下してしまうといいます。それもこれも、とにかく休憩が足りていないせい。

脳を疲れさせる行動05

休めたり、動かしたりしよう!

脳のSOSを無視せず、あるいはSOS発信を未然に防ぐべく、以下テクニックで脳の疲れを予防・回復しましょう。ポイントは、よく休ませ、よく動かすです。

  1. 1時間ごとに休憩する
  2. 休憩ごとに立ち上がり軽く歩く
  3. 貧乏ゆすりをする
  4. 短時間の昼寝をする

仕事中にだるさやパフォーマンスの低下を自覚したとき、15~30分程度眠るだけでも、脳と自律神経はかなり回復するのだそう。梶本修身先生もすすめていますが、その際には「コーヒーナップ(coffee naps)」と呼ばれる方法が効果的です。

眠気をもたらす物質の受容体が、カフェインとくっつき眠気をブロックするメカニズムでコーヒーは覚醒作用をもたらしますが、「眠気」自体は眠らない限り消えません。丁度よく、カフェインが効くまで20~30分かかるので、その時間を昼寝に充ててしまえば、そのあとの仕事が捗るはず。

どうも調子が出ない、集中できない、というときはランチを早めに済ませ、コーヒーを飲んだあと、20~30分のお昼寝をしてみてくださいね。

***
脳を疲れさせる最悪行動3つと、その解消法を紹介しました。

  1. なんでも理性で押さえつける→→→心地よいことを増やそう!
  2. やたらに選択することが多い→→→無駄な選択を減らそう!
  3. とにかく休憩が足りない→→→休めたり、動かしたりしよう!

仕事が捗るということは、心身の調子がいいということ。心身の調子がいいということは、脳が疲れていないということです。ぜひ心地よく仕事のパフォーマンスを上げてください。

(参考)
PNAS|Extraneous factors in judicial decisions
BOOCS公式サイト|脳疲労とBOOCS|脳疲労とは
BEST TIMES|柔を守るを強と曰う
editeur|仕事中のだるさは「脳疲労」かも? ヤル気が復活する「脳回復テクニック」
Study Hacker|なんでも迷いたがる人は「ウィルパワー」を無駄に消費して脳を疲れさせている。
Study Hacker|仕事の精度が劇的に上がる。最強の休憩術「コーヒーナップ」のすごい効果
Wikipedia|決断疲れ

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