脳機能アップに “とりあえず立ち上がる” が効く科学的根拠。

ワーキングメモリ(作業記憶)は、さまざまな認知・学習プロセスの遂行時、一時的に情報を保持する脳の機能です。この働きが低下すると、日常生活では「あれ、何をとりに来たんだっけ?」が続出し、仕事においては「どの資料を閲覧していたのか忘れた」が頻発し、物事がうまく進まなくなってしまいます。

しかも最新の研究では、座り仕事が多いビジネスパーソンにとって、ワーキングメモリをうまく働かせることが大きな課題となりそうなことが示唆されています。そこで今回は、「仕事が捗らなければ、とにかく1回立ち上がるべき科学的根拠」と「身につけるべき習慣」を紹介します。

座り姿勢はワーキングメモリに悪影響

イギリスの心理学ジャーナル「British Journal of Psychology」で2018年10月12日に公開された、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン心理学科の新しい研究では、有酸素運動中などに、認知能力がどのように改善するかについて調べられました。

研究者らは、参加者24名が「自転車に座っている・ペダルをこいでいる・ランニングマシーンに立っている・歩いている」といった安静時と運動時の状態で視覚的作業記憶タスクを行うあいだ、脳波を記録しました。その結果、有酸素運動と直立姿勢は、VWM(Visual working memory:視覚性ワーキングメモリ)のパフォーマンスによい影響を与える可能性があるとわかったそう。

有酸素運動(自転車をこぐ・歩く)に関しては、タスクの処理速度を著しく改善し、直立姿勢(この実験ではランニングマシーンに立つ)においては、タスクの処理速度および応答精度の両方を向上させることができたそう。

しかし一方で、座っている安静時(この実験では自転車に座っている)の状態が、もっともVWMのパフォーマンスを改善しない可能性が示されたのです。

VWM=視覚性ワーキングメモリとは

VWM(視覚性ワーキングメモリ)は、進行中のタスクのニーズに対応するために視覚情報を維持する脳の機能です。ものを動かしたり、探したり、視覚情報を用いて活動したりする際に、重要な役割を果たすといいます。また、課題や行動の目標に応じて視覚情報を変換したり、統合したりもするのだそう。

しかし、容量が限られているにもかかわらず、VWMには課題とは無関係な視覚情報まで保持されているのだとか。2018年に発表された東京大学の研究では、視覚から入ったイメージは、自動的かつ強制的に保持されてしまう可能性が示されています。したがって、そもそもVWMは空き容量が少なくなりやすい脳のメモリ。しかも、多くのビジネスパーソンがパソコンの前で座り仕事をしています。

メモリ不足で動作が遅くなったパソコンの状態は、わたしたちにも頻繁に起こっている可能性が高いということです。

VWMの働きが悪くなるとどうなる?

たとえばプレゼンの資料づくりをする際、座りっぱなしで作業していると、どんどんVWMが働かなくなり、広げている参考資料の、どの部分に注目すべきなのか、いま行っている作業はどの段階にあるのか、資料の全体像はどうなっているのか、どうやって図にまとめるのか、いちいち忘れては最初から確認し、どんどん効率を悪くしてしまいます。

あるいは、いくつものサイトを開き情報を得ながら文章を書く場合、長時間座って作業していると、やがてほんの数秒前に見ていたサイトのタブを忘れるようになり、おびただしく開かれたブラウザのタブを前に、茫然としてしまうかもしれません。

複数の参考書を開いて勉強をしていても、恐らく同じようなことが起こるでしょう。その状況が続けば「あれ? いま何やってたんだっけ?」ともなりかねないのです。

仕事や勉強、日常生活をスムーズに送るためにも、限られたワーキングメモリの貯蔵容量を有効利用できるよう、意識的に行動しましょう。

とにかく1回立ち上がること

昨今は仕事中の休憩が重要視されているので、たとえば「1時間経ったら5分間休憩しよう」と習慣づけているビジネスパーソンは、決して少なくないかもしれません。しかし、もしも以下の状況であれば、決めた時間は関係なく、とにかく1回立ち上がることです。

・パフォーマンスが落ちた気がする ・どうも思考が鈍くなっている ・しばしば動作(書く・キーボードを打つなど)が止まる ・「あれ、何だっけ?」と一度でも思った

少しでもこう感じたらすぐに立ち上がる。これだけで、タスクの処理速度が上がり、より正確な受け答えもできるのです。ぜひ、今日から習慣づけてくださいね。

*** 立ち上がったついでに、可能ならば、筑波大学体育系教授の征矢英昭氏が考案したフリフリグッパー体操を行うことがおすすめです。前頭前野が活性化し、脳の認知機能が高まるのだとか。足のかかとを左右交互に上げるくらいなら、デスクの前でもできるはず。こちら「“たった10分” で失敗から立ち直れる。フロイト提唱「すっぱいブドウの法則」で今すぐポジティブに」で詳しく紹介しています!

(参考) Wiley News Room|Study Provides Insights on the Effects of Exercise on Cognitive Performance Wiley Online Library|British Journal of Psychology|Electroencephalographic evidence for improved visual working memory performance during standing and exercise - Dodwell - 齊藤智(2010),「アクション・コントロールと作動記憶と意味記憶(講演)」,ITL001,20日 9:30-11:30(Σホール),日本心理学会第74回大会. 松吉大輔(2009),「視覚的ワーキングメモリの容量制約と神経機構」,京都大学学術情報リポジトリ (KURENAI),京都大学,2009-11-24. 李琦(2018),「視覚性ワーキングメモリの保持における空間的・非空間的属性の抑制(発表)」,No.9,第16回合宿研究会プログラム(3月5日10:15-10:45).

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