みなさんは、日々の睡眠時間は足りていますか。普段から8時間くらい寝ている方もいれば、5時間睡眠で充分という方もいるかもしれませんが、特に忙しいビジネスパーソンであれば、「ちょっと睡眠不足かも……」と感じている方も多いのではないでしょうか。
寝不足には、過労死のリスクを高めたり、うつ病につながったりと、さまざまな悪影響があるというのは周知の事実かもしれません。Study Hackerでも何度か、寝不足が人体に及ぼす悪影響について取り上げてきました。
今回は、これまでとは少し異なった「経済的損失」という観点から寝不足の弊害を説明し、良質な睡眠をとるための方法についてご紹介していきます。
睡眠不足による日本の経済的損失は14兆円
非営利シンクタンクであるランド・ヨーロッパが、2016年に興味深い調査結果を発表しました。というのも、OECD5カ国(アメリカ、イギリス、ドイツ、カナダ、日本)の睡眠不足による経済的損失を、実際の数値で表したのです。
彼らは、国内総生産(GDP)に占める割合で経済的損失を考え、日本の場合は2.92%にも及ぶという試算をしました。2016年度の日本の国内総生産が約505兆円なので、その額はなんと約14兆円にものぼります。ちなみにこの2.92%という損失率は、調査対象の5カ国の中で最も高い数字となっています(ワースト2位のアメリカは2.28%、ワースト3位のイギリスでも1.86%です)。
また、同じくランド・ヨーロッパの調査によれば、日本では睡眠不足により社会全体で年間60万日もの労働時間を失っているとのこと。逆に、1日の睡眠時間が6時間未満の人たちが、6~7時間しっかりと眠って睡眠不足を解消することで、日本経済は757億ドル(8.4兆円)の上昇が見込めるとも述べています。
たしかに睡眠不足のまま仕事を進めていると、頭が働かなかったりミスが続いてしまったりと、生産性が低下してしまいますよね。睡眠におけるほんの少しの変化でさえも、その労働時間や経済状況に対して非常に大きな影響を与えるため、私たちはもっと睡眠を重要視するべきではないでしょうか。
日本における睡眠不足を訴える人の割合
以上のことを踏まえると、やはりビジネスパーソンとして効率良く仕事を進めるためにも、睡眠時間をしっかりと確保することが求められてきます。
厚生労働省が発表している「国民健康・栄養調査」によれば、成人している男女の1日の睡眠時間が平均して6時間を下回っている人の割合は平成27年度に39.5%となり、この10年で見ると最高の値となっています。そして睡眠時間が6時間未満である場合、男女ともに「日中に眠気を感じた」と訴えている人が全体の半数近くおり、このことからも社会全体において睡眠不足が労働の生産性を奪っていることがわかります。
ちなみに睡眠時間が6時間未満の人は、7~9時間の人に比べて死亡率が13%も高くなるという研究結果もあるため、生産性を落とすだけでなく死のリスクに直面していることも無視できません。
深い睡眠をとるためには
厚生労働省の調査に基づくと、睡眠時間が6時間未満である人が感じていることとして「睡眠の質に満足できない」「夜中に目が覚めてしまう」が3割近くを占めています。もちろん睡眠時間を確保するのは言うまでもありませんが、これら負の要素を解決して “深い睡眠” をとることでも、睡眠不足の改善が期待されるでしょう。
深い睡眠をとるために今すぐ実行できることはいくつかあります。
例えば、胃腸に負担をかけないために、眠りにつく3時間前には食事をしないこと。胃腸は、睡眠時に身体が最もエネルギーを割いて回復させる器官です。しかし、その睡眠中に消化を行わなければならないとしたらどうでしょうか。消化と並行して休息もしなければならないため、充分に休まることができず、結果として良質な睡眠が阻害されてしまいます。
また、太陽光と同じレベルで脳を覚醒させるスマートフォンやPCの画面を見ないことも大切です。電子機器の光は視神経を通じて脳に直接刺激を与えるため、就寝前に見ると脳が活性化し、眠れなくなってしまいます。
仮に0時に就寝することを考えると、21時を回ったら食事をしないように、また23時を回ったらスマートフォンやPCなどの強い光を放つ電子機器にいっさい触れないようにして、質の良い睡眠を得られるように試みることが肝要ですね。
*** 自分の傷病リスクを高めるだけでなく、ひいては社会全体の経済的停滞にまで影響を及ぼす睡眠不足。自分の睡眠生活を見直すとともに、簡単にできる対策から実行していきたいものです。
(参考) RAND Europe|Why Sleep Matters: Quantifying the Economic Costs of Insufficient Sleep 内閣府|国民経済計算 厚生労働省|国民健康・栄養調査