勉強をする上で必要な道具。それって一体何だとおもいますか? ペン?消しゴム?それともノート? いいえ、答えは「ストップウォッチ」です。
「タイムプレッシャー」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。時間制限があることで、作業効率がアップする。今日はそんな「タイムプレッシャー」の話です。
集中力が増すだけじゃない。「締め切り」はやる気につながる?
脳科学者である茂木健一郎氏が、タイムプレッシャーについて連続ツイートをし話題になったことがあります。(茂木健一郎 タイムプレッシャー)
脳内報酬物質であるドーパミンが放出されたとき、その前にやっていた行動の回路が強化される。この強化学習をすすめる際に、タイム・プレッシャーを通して「難易度」を調整することが有効な方法である。全力を尽くしてやっと終えることができる程度の、時間設定をする。
つまり、「時間制限があって辛かったけど、やりきった」という快感が、脳へのとても良い刺激になるということ。
そこでドーパミンはやる気のもととなる物質であると言われています。タイムプレッシャーを設け、それを達成することはやる気につながります。
これ、単調になりがちな勉強にすごく有効な方法です。単語カード作りやノート整理など、ついつい作業になってしまうことってありますよね?そこに時間制限を設けてみるんです。
片手間でダラダラやってしまいそうなものも、時間制限のおかげで難易度アップ。やりがいがグッと上がります。
「自分に厳しく」もほどほどに。キツすぎると逆効果
ただ、張り切り過ぎるのも要注意です。
産業医科大学の山本氏らは、被験者を対象にして簡単な間違い探しクイズの実験を行いました。左右に四つずつの図形を表示しておき、どれが違うかを制限時間内に答えてもらうというもの。 その制限時間に工夫が。まず、事前のテストで各被験者の「作業処理能力」を調査。それに対応する制限時間を設定します。つまり、作業効率が悪い人には長めの制限時間を、良い人には短めの制限時間を与えるのです。そして
1、まずは個人別の制限時間で実験を行う 2、一番制限時間が「長い」人に合わせて実験を行う 3、一番制限時間が「短い」人に合わせて実験を行う
と三回実験を実施。どれが最も効率が良いのかを調査しました。
一体、どれが一番だと思いますか? なんと答えは「2」。ちょっと緩めの制限時間の方が、正解数が多くなったのです。
目標が高すぎて挫折する。そんな経験、誰しもあるはずです。 制限時間も、短すぎては逆効果だということ。 「自分に厳しく」も時には大事ですが、制限時間はほどほどにしましょう。
目安は「あとプラス5分」
時間を測って勉強するとき。「よしやるぞ!」とタイマーをセットする前に、ちょっと待ってみてください。
その時間設定、厳しすぎはしませんか?やる前はやる気に満ち溢れていて、なんでも素早くできる気がしてしまうもの。考えたその制限時間に、もうプラス五分してみましょう。ちょっと長いかな?そのくらいが、ちょうどよかったりするものです。
参考 山本華代, 泉博之, & 神代雅晴. (2007). 時間的制約のある単純繰り返し作業において, 作業者の作業処理能力と要求される作業速度のバランスが作業パフォーマンスと作業者の心理生理状態へおよはず影響. 産業医科大学雑誌, 29(1), 1-26.

