タルトタタンというフランスのお菓子をご存知ですか? タルト生地の上にきらきら飴色のキャラメリゼされたリンゴがぎっしり載ったこのお菓子には、うっかりかわいい誕生秘話があります。
19世紀後半、パリ南方のソローニュ地方にあるラモット・ブーヴロン(Lamotte-Beuvron)に、タタンという名の姉妹が小さなホテルを経営していました。 ある時、りんごのタルトを作っていて、焼く時にうっかり間違えてタルト生地を入れ忘れてしまいました。型の中にりんご、砂糖、バターだけを入れて焼いてしまい、仕方なく、途中で上から生地をかぶせてみたら、意外にも、底にたまったお砂糖がキャラメル状になってりんごに染み込んで、なんとも香ばしいすてきな味になっていたのです。 それ以来、このお菓子は、最初からそのようにして焼くようになり、タタン姉妹のタルトということで、タルト・タタンと呼ばれるようになりました。 (引用元:タルト・タタン物語)
何事も失敗は成功のもと。 今回は、タルトタタンの誕生エピソードをヒントに、失敗と成功を分けるちょっとしたコツについてのお話です。
分かれ道は、お客さんに出すか出さないか
タルトタタン誕生の話の中で、失敗と成功の分岐点となっているのが、『お客さんに提供した』というところ。 どうしてもデザートを出さねばならない状況がそうさせたのかもしれませんし、料理担当のステファニーが、フランスではコルドンブルーと呼ばれる料理の達人だったから、これならいける! と思えたのかもしれません。 けれど、失敗した! と思ったらそれを成功に変えるのはなかなか難しいもの。 アップルパイの失敗作をタルトタタンに変えてしまう、その秘密はなんだったのでしょうか。 ここでは、二つの要素が考えられるのではないでしょうか。
勘・経験・度胸
KKDはシステムマネジメント用語で、要は『勘、経験、度胸』のことです。 コルドンブルーであるステファニーの勘、これまでお客様に料理を提供してきたという経験、姿はアップルパイでなくても、おいしければ出しても良いか!という度胸。 なんだそんなことか、というこの三要素。現在の社会では、これらに頼らずに判断した方がいいとよく言われます。全ての判断には、きちんとした根拠があるべきだと。 というのも、一般的な評価基準などに基づかず、KKDで判断した場合、その選択が誤っていた時の言い訳ができなくなるからです。 自分の勘や経験に頼れば、間違っていた場合に、全ての責任が自分にかかってきてしまいます。世間的に正しいとされている判断基準に従って判断をすれば、間違っていた場合も、一応根拠がある、ということで言い訳が立ちます。 現実、私たちが直面する場面では、数値的な基準や世間的な価値観では判断しきれない場面が数多くあります。 自分が誤った時の逃げ場を最初から作ろうとするのではなく、失敗してしまったと思った時こそ正面からKKDを働かせて、成功に変えていくことが必要です。
視点を変える
タタン姉妹のエピソードで失敗を成功に変えたもう一つの分岐点が、『パイを上からかぶせた』というところ。 タルト生地なしで焼いてしまったから、上にタルト生地をかぶせてみるという発想が、失敗を成功に変えた鍵になっています。 さらに、このデザートをどうすればおいしく見せられるかと考え、大皿に型を載せてひっくり返すことで、現在のタルトタタンのように、宝石のような見事な見た目のお菓子を生み出すことができたのです。 これらの機転には、失敗にとらわれない、発想の転換が見て取れます。 こうした発想の転換には、視点を変えてみることが一番の近道です。 NHK、Eテレの番組、『デザインあ』でも、視点を変える、ユニークな特集をしています。 『モノ目線』と名付けられたこの特集は、身近にあるモノから世界を見てみたら、というもの。 ずっと見ていると、頭がほぐれて、見え方が変わってくるかもしれません。 今まで失敗した、できないと思っていたものも、見方を変えると、思いがけず見えてくるものがあるはずです。
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失敗を成功に変えるには、失敗を失敗と思わず、見方を変えてみるのが一番。最後の決断はKKDで。タルトタタンのかわいい誕生秘話は、失敗を失敗のまま終わらせない、一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。 (ちなみに、京都では、岡崎にある『La Voiture』というお店のタルトタタンが有名です。1ホールに18個ものりんごを使ったタルトタタンは、本場フランスのタルトタタン協会から承認をうけていたり、NHKの番組でも紹介されたりと、大人気。京都に来た際にはぜひ足を運んでみては。
参考・引用サイト 辻調グループ/愛され続けるりんごのお菓子~タルト・タタン~(1) wikipediaタルトタタン タルト・タタン物語 マネジメントシステム用語集/KKD

