「初めて部下を持ったけれど、上司としてどうふるまえばいいかわからない」 「リーダーとしてチームをうまくまとめられない」 特に上司やリーダーという立場になってまだ日が浅い場合など、こういった悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
単に自分のタスクをこなすだけでは役割が務まらないのがチームマネジメントですよね。部下の仕事の管理はもちろん、チーム内の人間関係の構築など、これまでとは仕事の勝手が異なるため戸惑っている方も数多くいるはず。
そこで今回は、いわゆる「カリスマ」と呼ばれるリーダーたちから、私たちが「できるリーダー」になるために必要な3つの素養について探ります。
カリスマとは
「カリスマリーダー」と聞いて、皆さんはどういった人を思い浮かべるでしょうか。個性的な発想を持ち、革命的な方法を次々と実践する。そんな人を思い浮かべる方も多いかもしれませんね。
一見するとこれらは “生まれ持った才能” のように思えるかもしれません。しかし社会学者であるR.house氏は、カリスマとは決して先天的な特性ではないと主張しています。
部下にカリスマと認知されることで、リーダーはカリスマとなりうる
(引用元:INVENIO LEADERSHIP INSIGHT|カリスマ的リーダーシップ理論 Theory of Charismatic Leadership)
重要なのはあくまで、部下からどう評価されるかということ。部下にカリスマだと思われる行動を取ることができれば、私たちはカリスマと認知されうるのですね。それでは、いったいどのような行動がカリスマへとつながっていくのでしょうか。以下に3つご紹介します。
1. 明確な目標設定を行なう
1つめは目標設定です。それらしい言葉ですと戦略ビジョンの提示といったところでしょうか。
カリスマと呼ばれるリーダーたちは、それぞれが明確な目標を持ち、そこへ向かって迷いなく突き進むことで部下を引っ張っていきます。将来的に自分やチームがどうありたいのか、その具体的な未来のイメージを持つ。そして、そのために何をしていけばいいのかを明確にする。はっきりとした指針の提示は部下の安心感にもつながりますから、当然チームにもよい影響を与えます。
逆に目標設定を怠ってしまっては、目的がわからないまま “ただやるだけ” の状態が続いてしまいます。これでは仕事の効率の低下や部下のやる気の減退を引き起こしてしまいかねませんよね。
目標設定を行なううえで参考にしたいのが、青山学院大学陸上部を大学駅伝三冠同時達成に導いた原晋監督の次の方法です。この目標設定法によって、選手ひとりひとりの自己管理能力とモチベーションが目に見えて上がったのだそう。
- チーム全体の最終目標を提示する
- 1を踏まえて、メンバー個人の目標を、長期・中期・短期(1日)の順にメンバーひとりひとりに設定させる
- 設定した期間が終わるごとに目標達成率を自己申告させ、次の目標を改めて設定させる
これはビジネスの世界にもそのまま適用させることができるでしょう。チームとしての目標をこちらから明確に提示したうえで、メンバー各人の目標をひとりひとりに考えさせ、振り返りの機会を細かく設ける。このサイクルをまわすことで、チームとしての成果も上がっていくのではないでしょうか。
2. 部下の規範となる
大きな仕事や初めての仕事を前にすれば、誰だって尻込みをしてしまいますよね。そのようなとき、リーダー自らが先陣を切って模範を示すことができれば、チームとしての方向性が統一されますから、周りも安心してあなたについていくことができます。
リーダーが先陣を切らなければ、チームの仕事の整合性が失われて混乱が生じてしまいます。いずれ部下からの人望も失ってしまうでしょうし、さらにチームが崩壊してしまう危険性だってあるのです。
先陣を切るカリスマといえばスティーブ・ジョブズ氏ですよね。彼は商品開発のみならず、交渉や宣伝など様々な分野で前面に立ち、会社を引っ張りました。彼の死後も「Appleといえばジョブズ」と考え続ける人は少なくありません。
スティーブは常に矢面に立ってくれた
(引用元:竹内一正著(2008),『スティーブ・ジョブズ 人を動かす神ーなぜ、人は彼に心を奪われるのか?』, 経済界.)
とはいえ、「規範を示す」はいまいち漠然としているため、実際に何をすればいいのか迷ってしまいますよね。そんな人はまず「約束を守る」を心がけてみてはいかがでしょうか。
仕事の約束はもちろん、チームメンバーとのちょっとした口約束もしっかり守る。これならすぐに実行に移せそうですよね。無責任で適当な約束が減り、チーム内に余計な混乱を招いてしまうことも防げるはず。こういった小さいことの積み重ねが、「規範を示せるリーダー」へとつながっていきますよ。
3. 正確な現状把握を行なう
最後の3つめは、チームの現状を正確に把握することです。チームが今どうなっているのか、あの仕事はどこまで進んでいるのか。こういったことを正確に把握できていれば、部下のミスや不測の事態にもリーダーとして迅速に対応することができるでしょう。
日産自動車の経営を立て直したカリスマ経営者カルロス・ゴーン氏も、現状把握をとても重要視していたのだそう。彼が日産で行なった経営法は、その魔術的ともいえる業績から「ゴーンマジック」とも呼ばれていますが、それもじつは正確な現状把握から導き出される最適解をなぞっていただけなのです。
現場に出かけていって直接話をすることはとても重要です。そうすれば社員たちが自分たちの置かれた状況をどう捉えているのかわかりますし、またそれを通して状況そのものもはっきり見えてくるからです。現状把握は経営の要です。全体の状況を把握し、対策の規模、期間、効果を見極めること。これが経営の基本中の基本なのです。
(引用元:名言DB|カルロス・ゴーンの名言・格言|現状把握は経営の要。トップは現場に出て直接社員の話を聞け。)
仕事の状況を正確には把握するためには、やはりチーム内のコミュニケーションが重要です。
ここで、1つめに挙げた原晋監督の目標設定法が活躍します。1日ごとに目標設定を行ない、その達成率を申告させるということは、すなわちチームメンバーと毎日必然的にコミュニケーションを取ることになります。1日という短いスパンでしたら、メンバーが仕事の悩みを必要以上に抱えこんでしまうことも未然に防ぐことができますし、今持っている悩みもすぐに把握して対応することができますから、仕事も円滑に進められるようになるでしょう。
*** カリスマリーダーとしての行動は、意外と「当たり前」のものがほとんど。しかしその「当たり前」を行なうのが案外難しいのかもしれませんね。
今日からでも、上でご紹介した3つの行動を意識してみてください。カリスマリーダーとなる道へとつながっていくはずです。
(参考) INVENIO LEADERSHIP INSIGHT|カリスマ的リーダーシップ理論 Theory of Charismatic Leadership 杉山浩一著(2009),『図解入門ビジネス最新リーダーシップの基本と実践がよ~くわかる本』, 秀和システム. 日刊スポーツ|青学大ダメ部 伝説営業マン原監督変えた 竹内一正著(2008),『スティーブ・ジョブズ 人を動かす神ーなぜ、人は彼に心を奪われるのか?』, 経済界. 名言DB|カルロス・ゴーンの名言・格言|現状把握は経営の要。トップは現場に出て直接社員の話を聞け。