コミュニケーション力、略して「コミュ力」。今、学生社会人問わずに注目されている力の一つですよね。本屋に行くと人気ビジネス書のコーナーには、数多くのコミュニケーション関連の本が並んでいます。それだけ、社会人に共通した悩みであり課題であると言えるでしょう。 そのコミュ力と大きく関係してくるのが、国語力です。国語力には「読む」、「聴く」、「話す」、「書く」という4つの種類があります。「話す」「聴く」は日々の生活の中で何十回と繰り返されていることなので、今回はその中でも「読む」、「書く」の2つの力について考えてみようと思います。
書くときはとても重要なとき
みなさんはどんな時に文章を作成しますか?特別な専門職でない限り、文章を日常的に作る機会はあまりないですよね。その分、重要な時に書面化することは多いと思います。例えば、議事録やプレゼン資料、本当に「書く」という意味で論述試験など。「ここぞ」という時にアウトプットが求められるため、その時に良い文章が書けないと、大きな損をするわけです。
良質のアウトプットには良質のインプットを
重要な時にその真価を発揮する書く力。ただ、その習得にはとても大きな労力を要するのだそう。 編集者として書く力の重要性と向き合ってきた川辺秀美さんは、「書く」前に「読む」技術が必要だと述べています。書く力を育てるには、その前に読む力を育てる必要があるのです。また、ジャーナリストの池上彰さんは著書の中で、以下のように述べています。
理解していないことをわかりやすく説明することはできない
引用元:「伝える力」
読んで理解できなければ、ましてやそれについて自分の言葉で書くことなどできない。だからこそ読む力が必要になるのです。
「縮約」って知ってますか?
読み書き能力を鍛える方法の一つに「縮約」という方法があります。大野晋さんの「日本語練習帳」の中で紹介された方法だそう。そこでは新聞の社説を縮約することが練習に良いと述べられています。具体的には次のようにやります。
1.縮約とは、要約することや要点を取ることではなく、地図で縮尺というように、文章全体を縮尺して、まとめること。 2.1行20字詰20行の原稿用紙を使い、最後の1行あるいは2行の空白を作ってもいけない。つまり、ぴったり20行にわたる文章にまとめる。 3.400字から1字はみだしてもいけない。 4.句点(。 )、読点(、)は1字分取る。 5.全文を段落なしに書き続けてはいけない。途中に段落をつけ、改行すること。 6.題目は字数外とする。
引用元(読書猿Classic: between / beyond readers|30日で達人級の実力がつく日本語トレーニング〈縮約〉はこうやる)
文章の要点を理解していなければ文章を短くすることができないため、読む力を向上させてくれます。また縮約することによって、自然と要点を押さえた論理的な文章を書くことにもつながるのです。さらにはプロの文章を書き写すことで、どのような文章が魅力的なのかが分かるというメリットもあります。縮約することで、読む力と書く力の両方が効率よく鍛えられると言えますね。
コミュニケーションというと、「話す」「聞く」を思い浮かべがち。ですが、私たちは書いたり読んだりすることによっても考えを伝えあうことができます。そして、書いたものは半永久的に残り続ける上に重要なシーンで求められることが多いだけに、非常に大きな意味を持つのです。さらっと書いた文章が美しいと、人間としてとても知性を感じますよね。ぜひ、コミュニケーションの一つとして「書く力」を磨いてみませんか。
(参考) 日経BizアカデミーBizCOLLEGE|新社会人のための国語力:20代に国語力を磨かないと30代は真っ暗だ! 読書猿Classic: between / beyond readers|30日で達人級の実力がつく日本語トレーニング〈縮約〉はこうやる 池上彰 PHPビジネス新書 2007年 伝える力