それ、『会話泥棒』かも。コミュニケーションが得意でも陥る "好感度を削る話し方"

会話泥棒する男性

会話のあと、「今日はよく話せた」という手応えがあったのに、相手の反応はどこかそっけない。そんな経験はありませんか。原因は、こちらが気づかないうちに相手の話を自分の話にすり替えてしまう「会話泥棒」にあるかもしれません。

厄介なのは、コミュニケーションが得意と自認している人ほど陥りやすいかもしれないという点です。沈黙を埋めたい、相手に共感を示したい。そんなサービス精神が、皮肉にも会話泥棒を引き起こす引き金になっています。

あなたのまわりにも、思い当たる人がいるかもしれません。その正体を、まずは具体的な会話例から見ていきましょう。

コミュニケーションが得意な人ほど"会話泥棒"になりやすい理由

会話泥棒とは、相手が主導権をもって話しているときに、その発言のキーワードを拾い、自分の話題にすり替えてしまう行為を指します。*1

たとえば、こんなやりとりです。

相手「先週、京都に旅行に行ったんです」

私「私も京都、大好きです!じつは去年ひとりで嵐山に行って……」

一見、共感を示しているように見えますが、話題の主語は「相手(You)」から「自分(I)」へとすり替わっています。相手はまだ京都旅行の続きを話したかったかもしれません。

会話泥棒をする人の多くは、悪意ではなく「無自覚な承認欲求」によって動いています。「この話題なら自分も話せる」という思いを抑えきれず、相手の話題を無意識に奪ってしまうのです。*1

会話泥棒の心理はそれだけではありません。相手の意見や感情そのものにあまり関心がなく、「どう自分を印象づけるか」にばかり意識が向いてしまうケースもあります。*1

競争心の強さから「相手より優位に立ちたい」という思いが働き、少しでも自慢されたと感じると、自尊心を守るために強引に自分の話へ持っていってしまうケースもあります。*1

こうして並べてみると、承認欲求・無関心・マウント、いずれの背景があっても行き着く先は同じです。話し手の視点が、相手から自分へと移動してしまうのです。悪気なく起きるからこそ、指摘されるまで自分では気づきにくいというのが、会話泥棒の厄介なところと言えるでしょう。

自己開示の多い男性

「会話が上手い人」と"会話泥棒"の決定的な違い

両者を分けるのは、話術の巧拙ではなく、会話の「スポットライト」を誰に当て続けるかというコントロール感覚です。

スポットライトの向き

上手い人相手に当て続ける

会話泥棒気づかぬうちに自分に戻す

相槌のあと

上手い人質問で話を広げる

会話泥棒「私も」で自分の話に接続する

沈黙への反応

上手い人相手の言葉を待てる

会話泥棒埋めようとして話し始める

会話後の相手の印象

上手い人「話を聞いてもらえた」

会話泥棒「結局、自分の話だった」

聞き上手な人は、相手の話をいったんそのまま受け止めます。臨床心理学者カール・ロジャーズが提唱した傾聴の三原則のひとつ「共感的理解」は、聞き手の価値観を交えず、相手の立場に立って理解しようとする姿勢を指すものです。*2

この「いったん受け止める」ひと呼吸があるかどうかが、両者の分かれ目になります。会話がうまいことと、相手にスポットライトを当て続けられることは、似ているようで別の技術です。話術に長けているからといって、聞き手に回れているとは限りません。

ビジネスでの信頼リスク

ビジネスの場では、この違いが信頼関係に直結します。1on1や商談で自分の話ばかりする人は、相手に「この人は自分の利益にしか関心がない」という印象を与えかねません。

反対に、話を最後まで受け止める姿勢は「この人はちゃんと理解してくれる」という安心感を相手に与え、部下や顧客との信頼構築につながります。*2

active listener

会話泥棒は一回きりなら気づかれにくいものですが、積み重なると「話を聞いてくれない人」という評価が定着してしまうでしょう。特にリーダーの立場にある人ほど、この評価の積み重ねが部下の本音を引き出せるかどうかを左右するため、注意が必要です。

あなたは"会話泥棒"になっていないか? 6項目でセルフチェック

胸に手を当てて、次の項目にいくつ当てはまるか確認してみてください。

"会話泥棒" セルフチェック

相手の話の途中で、キーワードから自分の話を始めてしまう

相手が話し終える前に「私も」が口をついていないか、意識してみましょう。

共感のつもりで「わかる、私も」と自分の経験談を長く語ってしまう

ひとこと共感したら、続きは相手に返す意識をもつと変わります。

沈黙が苦手で、間が空くとすぐに自分から話し始める

沈黙は「相手が考えている時間」かもしれません。数秒待つ練習が有効です。

会話のあと、自分がどれだけ話したか覚えていない

体感で構わないので、「相手7、自分3」くらいを目安にしてみましょう。

相手の話を聞きながら、次に話す自分のエピソードを探している

聞く姿勢と話す準備は両立しません。まずは最後まで聞くことを優先しましょう。

質問をするより、先に自分の意見や経験を伝えることが多い

「それでどうなったんですか?」と、まず相手に話の続きを促してみましょう。

いくつ当てはまったとしても、落ち込む必要はありません。「気づけた」こと自体が大きな一歩です。会話泥棒は無自覚に起きるからこそ、セルフチェックを通じて一度立ち止まること自体に意味があります。

もし"会話泥棒"に遭遇してしまったら? スマートな対処法3つ

自分が気をつけていても、職場の同僚や取引先が会話泥棒であるケースもあります。角を立てずに主導権を取り戻す方法を見ていきましょう。

1話題を元に戻す

「そういえば、さっきの話の続きなんですけど」と、いったん相手の話にひと言合わせたうえで、多少強引にでも元の話題に戻します。*1

話題を管理する意識をもつだけで、一方的に話され続ける状況を防げます。

2あえて質問で返す

相手が自分の話を始めたら、「それってつまりどういうことですか?」と質問を挟み、会話の主導権を握り直します。

会話泥棒をする人は「かまってほしい」という欲求が根底にあるため、質問されて自分の話に関心をもたれると、案外あっさり主導権を返してくれることがあります。*1

3反応を控えめにする

相槌を普段より少なめにし、あまり深く反応しない態度をとるのも有効です。*1

むやみに同調すると「もっと話していい」と相手に受け取られてしまうため、意識的に反応を絞ることで、会話の熱量を落ち着かせられます。

この3つに共通しているのは、相手を責めるのではなく、会話のスポットライトの向きを自分の手で静かに調整するという発想です。

吹き出し

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会話とは、一方が話し続けるものではなく、スポットライトを交互に当て合う共同作業です。相手にスポットライトを当て続けられるかどうかは、話術の巧拙ではなく、相手へのリスペクトがあるかどうかにかかっています

「自分は聞き上手」と思っている人ほど、一度立ち止まって振り返ってみる価値があります。今日の会話から、スポットライトを渡す意識を少しだけもってみませんか。

よくある質問(FAQ)

会話泥棒とは何ですか?
相手が主導権をもって話しているときに、その発言のキーワードを拾い、自分の話題にすり替えてしまう行為を指します。悪意ではなく、無自覚な承認欲求などによって起こることが多いとされています。
自分が会話泥棒になっていないか、どう確認すればいいですか?
相手の話の途中で自分の話を始めていないか、沈黙が苦手で埋めようとしていないかなど、記事内のセルフチェック項目を振り返ることで確認できます。
会話泥棒に遭遇したときの対処法はありますか?
話題を元に戻す、あえて質問で主導権を取り戻す、反応を控えめにするなど、相手を否定せずに主導権を取り戻す方法があります。
会話泥棒とマウンティング(マウント)は同じものですか?
マウンティングは、会話泥棒を引き起こす原因のひとつです。一方の会話泥棒はより広い概念で、承認欲求や相手への無関心が原因になることもあります。つまり、会話泥棒のすべてがマウンティングによるものとは限りません。
会話泥棒を直すには、まず何から始めればいいですか?
記事内のセルフチェック6項目を確認し、当てはまる項目から意識することが第一歩です。特に「沈黙が苦手で埋めようとしていないか」は多くの人に共通しやすいクセなので、まずそこから見直すのがおすすめです。

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。