不規則な生活でも勉強が続けられる。社会人のための「もう一つの計画」のつくり方


規則正しい生活を送れていない女性

「規則正しい生活さえ送れれば、もっと勉強がはかどるのに」

そう感じた経験はありませんか。

残業や急な予定変更で、決めていた学習時間があっという間に消えてしまう。そのたびに「自分はだらしない」と感じて、勉強そのものから足が遠のいてしまう。

習慣化アプリやTodoリストで計画を立て直しても、予定が崩れた途端にやる気を失って三日坊主。そんな悪循環の繰り返しで、自分にうんざりしてしまうこともあるかもしれません。

しかし、スケジュール通りに毎日を過ごせないのは、働く人にとってごく自然なこと。大切なのは「規則正しい生活」を目指すのではなく、スケジュールはズレこむものという前提で、あらかじめ備えておくことです。

そのカギになるのが、崩れたときのための「対処プランニング」という考え方。

この記事では、忙しい日々でも挫折しにくい学習計画のつくり方を紹介します。

「崩れがちな自分」を責める前に知っておきたいこと

結論から言うと、生活が不規則になれば、学習計画も思うように進まなくなるのは自然なこと。大切なのは、崩れた計画にどう備えるかです。

日本国内で8,000人を超える社会人を対象に行われた調査があります。

この調査では、日々の生活のなかで体を動かす機会が少ない人ほど、平日と休日の起床・就寝時刻のズレ(社会的時差ぼけ)や抑うつ症状の傾向が高いことが分かりました。あわせて、「出社していても本来の力を発揮できない状態(プレゼンティーズム)」の傾向も高かったのです。*1

眠気と戦っている女性

ここで言う社会的時差ぼけとは、平日と休日とで起床・就寝の時刻が大きくずれることによって生じる、体内時計の乱れを指します。

たとえば、締め切り前に夜更かしを重ねたり、休日にまとめて寝だめをしたりする生活を続けると、体内時計が乱れてしまいます。

この調査が特に注目したのは、運動習慣の有無です。とはいえ、活動量が少なく生活のリズムが崩れやすい人ほど心身の不調が起こりやすい傾向は、忙しさで生活全体が乱れがちな社会人にも当てはまるのではないかと考えられます。

だからといって「立てた計画を絶対に崩してはいけない」と自分を追い込む必要はありません。崩してしまった自分を責めるより、計画は崩れる前提で備えておく。

実際、次の項で紹介する研究でも、計画通りに進まない場面への備えこそが行動を続けるカギだと示されています。

「if-thenプランニング」と「対処プランニング」の使い分け

挫折しにくい学習習慣をつくるには、学習計画をふたつのタイプに分けるのが賢明です。

ひとつは「うまくいく前提」の計画、もうひとつは「うまくいかない場面」まで見越した計画

このふたつを状況に応じて使い分けるのが、忙しい日々でも続けられるコツです。

いつも通りの1日なら「if-thenプランニング」

「if-thenプランニング」(実行意図)は「もしAが起きたら、Bをする」という形で行動をあらかじめ結びつけておくもので、実際にその場面に出会ったときに迷わず動くのに役立ちます。*2

  • 「始業前にコーヒーを淹れたら、机で15分だけテキストを読む」
  • 「通勤電車に乗ったら、単語アプリを開く」

ただし筆者は、if-thenプランニングには弱点があると感じています。

心身ともにコンディションが整っているときは効果的ですが、残業が続いて疲れきっているときや、急なトラブル対応でまとまった時間がとれないときなど、実践するのが難しい場面も多いからです。

予定が乱れた日・疲れている日は「対処プランニング」

そこで補完的な役割を果たすのが「対処プランニング(コーピングプランニング)」。

これは、「計画が崩れたときに、どう対処するか」をあらかじめ決めておくもので、疲れている日や忙しい日の自分を想定しておきます。

  • 「残業で21時を過ぎたら、テキストを1ページだけ開く」
  • 「出張の移動中で机が使えないなら、音声教材を1分だけ聞く」

心臓リハビリテーションを受けている患者を対象に、4か月にわたって行われた海外の研究があります。

この研究では、リハビリを始めた直後の時期は、「いつ・どこで・どうやるか」を決めるif-thenプランニングがよく機能していました。if.then.

一方で、4か月後の時点まで運動を続けられるかどうかを左右していたのは、「うまくいかないときにどう対処するか」を決めていた対処プランニングだったのです。*3

なお、この研究はもともと心臓リハビリ患者を対象にした運動継続に関するものです。しかしこの考え方は、社会人の学習習慣にも応用できるのではないかと筆者は考えています。

理想の行動プランに加えて対処プランをあわせてもっておくのが、不規則な生活のなかでも学習を続けるレジリエンス(回復力)を高めてくれると考えられるからです。

実践編|「崩れて途切れない」計画のつくり方

ここからは、実際に対処プランニングを取り入れた学習計画のつくり方を、3つのステップで紹介します。

ポイントは、崩れたその瞬間に考えるのではなく、余裕のあるうちに「崩れたらどうするか」をあらかじめ言語化しておくことです。

とっさの判断に任せてしまうと、疲れているときほど「今日はやめておこう」という選択に流れやすくなります。

スマホのメモやスクリーンショットに残しておくと、崩れそうになったときにすぐ見返せて便利です。

Step1理想のif-thenプランニングを決める

まずは、普段通りの1日を過ごせたときの学習計画を決めます。

例)「帰宅して夕食を終えたら、すぐにテキストを1章分読む」

Step2崩れるパターンを2〜3個洗い出す

自分の生活のなかで、計画が崩れやすい状況を具体的に書き出します。

例)「急な飲み会が入った」「体調がすぐれず集中できない」「休日に予定が重なって時間がとれない」

Step3それぞれに縮小版アクションを用意する

崩れるパターンごとに、「これだけならできる」というハードルの低い代わりの行動を決めておきます。

例)「参考書を1行だけ読む」「オーディオブックや録音した音声などを聞き流す」「講義動画を1分だけ再生する」

【保存用】穴埋めテンプレート

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「埋め合わせ」はしない

このとき気をつけたいのは、「今日できなかったぶんを、休日にまとめて取り戻そう」としないことです。

縮小版アクションの狙いは、遅れを取り戻すことではなく、ゼロの日をつくらないようにすることにあります。

運動の分野では、平日に時間をとれず休日にまとめて体を動かす「ウィークエンド・ウォリアー」的な過ごし方をする人が一定数いて、それ自体が悪いわけではないことも示されています。*1

ただし、日々の学習習慣を途切れさせないという観点では、毎日ゼロにしない縮小版アクションのほうが取り入れやすいはずです。

挽回しようと気負うより、「今日も1ページだけは開けた」という積み重ねのほうが、結果的に続けやすいのです。

***

不規則な生活のなかでも勉強を続けられる人は、意志が強い人でも、完璧に自己管理ができる人でもありません。崩れたときの準備をあらかじめもっている人です。

理想の計画と対処プランの2本立てを用意して、今日からまた気負わずに机に向かってみてください。

よくある質問(FAQ)

Q if-thenプランニング(実行意図)とは何ですか?

A 「もしAが起きたら、Bをする」という形で、あらかじめ条件と行動を結びつけておく計画の立て方です。心理学で「実行意図」と呼ばれ、実際にその場面に出会ったときに迷わず動けるようになります。

Q 対処プランニングとは何ですか?

A あらかじめ立てた計画が崩れたときに、どう対処するかを事前に決めておく考え方です。「いつ・どこで・どうするか」を決めるif-thenプランニングとセットで持つことで、疲れている日や予定が乱れた日にも行動を続けやすくなります。

Q if-thenプランニングだけではうまくいかないことがあるのはなぜですか?

A if-thenプランニングが効果を発揮しやすいのは、心身のコンディションが整っているときです。残業が続いて疲れきっているときや、急なトラブル対応でまとまった時間がとれないときは、決めていた行動をそのまま実践するのが難しくなります。そうした場面をあらかじめ想定しておくのが対処プランニングです。

Q if-thenプランニングと対処プランニングの違いは何ですか?

A if-thenプランニングは「いつも通りの1日」を想定した計画で、条件と行動をあらかじめ結びつけておく方法です。対処プランニングは、残業や体調不良などで計画が崩れた場面を想定し、その場合の代わりの行動を決めておく方法です。

Q 崩れるパターンはいくつ用意すればいいですか?

A 2〜3個が目安です。「残業で帰宅が遅くなる」「出張で移動時間しかない」など、自分の生活で実際に起こりやすい状況を具体的に書き出し、それぞれに縮小版アクションを用意しておくと使いやすくなります。

Q 「埋め合わせ」をしてはいけないのはなぜですか?

A 縮小版アクションの狙いは遅れを取り戻すことではなく、ゼロの日をつくらないことにあるためです。まとめて取り戻そうとすると気負いが生まれ、かえって続かなくなりやすくなります。

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。