仕事がスタックしたとき、問うことはひとつだけ。『選択肢』の有無で思考が動き出す

どうすればいいかわからない女性

月曜の朝、メールを開いた瞬間に手が止まる。「この件、どう進めますか」と聞かれている。返信を書きかけて、消す。考えようとするけれど、何から考えればいいのかが分からない。

仕事が前に進まなくなる、いわゆる「スタック」の状態。新人の頃は「どうしたらいいですか」と上司に聞けたのに、いまは自分で判断しなければいけない場面が増えた。それなのに、いざとなると動けない。「もっとよく考えなければ」と思うほど、むしろ深く沈んでいく。

じつは、そのスタックには打開策があります。必要なのは、たったひとつ、問うことだけです。

「選択肢が、いま頭のなかにあるか?」

これだけで、次に動く方向が決まります。なぜそうなのか、説明します。

「スタック」には、2種類ある

スタックには、2種類あります。

ひとつは、「選択肢がない」スタック。何をすべきかが見えない。候補すら浮かばない。「どうすればいいか、そもそも分からない」という状態です。

もうひとつは、「選択肢がある」スタック。候補はいくつか頭に浮かんでいる。でも、どれを選べばいいか決められない。「AかBか」と行き来したまま、時間だけが過ぎていく状態です。「迷い」といってもいいかもしれません。

どちらも「前に進めない」ことに変わりはありません。でも、動くべき方向はまったく逆です。

2種類のスタックと、動く方向
選択肢がない → まず「つくる」。調べる・聞く・分解する
選択肢がある → まず「絞る」。判断軸を一本立てて選ぶ

スタックしたとき、反射的に「もっと情報を集めよう」と動く人は多いのですが、それが効くのは、選択肢がないスタックのときだけです。

選択肢がすでにある状態で情報を集めると、候補がさらに増えます。増えるほど、選べなくなる。心理学者バリー・シュワルツはこれを「選択のパラドックス」と呼び、選択肢が多過ぎることが決断を難しくする一因になると指摘しています。*1

困っている男性

一問で、スタックの正体を取り出す

スタックの中身を知るにはどうしたらいいか。自分にこう問うだけです。

「選択肢が、いま頭のなかにあるか?」

候補が浮かんでいないなら、選択肢がないスタックです。このとき必要なのは、考えることではありません。情報を集める、人に聞く、問題をもっと小さく分解する、といった「作業」です。思考より先に、動く。

候補がいくつか浮かんでいて選べないなら、選択肢があるスタックです。このとき情報収集は逆効果です。必要なのは、判断の軸を一本だけ立てることです。「今週中に動けるか」「上司に説明しやすいか」など、基準をひとつに絞って、それで選ぶ。

一問で見極める、次の一手
候補が浮かばない → 選択肢がないスタック → 調べる・聞く・分解する
候補はあるが選べない → 選択肢があるスタック → 軸を一本立てて選ぶ

この問いにすぐさま答えが出なくても構いません。

「どちらか分からない」と気づいた時点で、すでに思考は動いています。問いを立てること自体が、スタックを解除するトリガーになるのです。

一週間動けなかった理由

提案する女性

具体的なケースで考えてみましょう。

入社4年目の営業担当Aさんは、担当顧客から「来月、提案をしてほしい」と依頼を受けました。しかし、一週間経っても提案方針が決まらない。「もっとよく考えなければ」と思いながらも、思考は進まない。

Aさんに足りなかったのは、考える力ではありません。スタックの種類を見極めていなかったことです。

顧客がいま何に困っているのかをまだ十分に把握できていないとしたら、選択肢がないスタックです。考えても候補は出てきません。顧客への追加ヒアリングや、社内の類似案件の調査など、調べる・聞くといった作業が先です。

一方、提案の切り口としてコスト削減訴求か業務効率化訴求かで迷っているなら、これは選択肢があるスタックです。候補はすでに出ています。「顧客が今期もっとも優先していることはどちらか」という軸を一本立てれば、選べます。

Aさんのケースを整理すると
顧客の課題をまだ把握できていない → 選択肢がないスタック → ヒアリング・調査が先
コスト削減か業務効率化か迷っている → 選択肢があるスタック → 顧客の優先事項を軸に選ぶ

ひとつの案件のなかに、2種類のスタックが混在していたのです。

選択肢があるスタックに対して「もっと情報を集めよう」と動いても的外れですし、選択肢がないスタックに対して「AかBかいますぐ決めよう」と絞ろうとしても、材料が足りないから決められない。

現実には、スタックの原因は複合的で、選択肢のある問題のなかに選択肢のない問題が隠れていることもあります。問題を紐解き、可視化・言語化することで対処が可能になっていく。「選択肢はあるか?」は、その第一歩めの問いです。

***

スタックには種類があります。種類を見極めずに動くから、力が空回りしてしまいます。そこから抜け出すのに必要なのは、もっと頑張ることではありません。ただひとつ、問うだけ。

スタックしたら、まずこれだけ
「選択肢が、いま頭のなかにあるか?」

答えが出れば、次の動きが決まります。答えが出なくても、問うた瞬間に思考は動き始めています。

考える力の問題ではなく、考える方向の問題です。その方向を決めるのが、この一問です。

よくある質問(FAQ)

Q. 仕事で決められないのはなぜですか?
多くの場合、「選択肢がなくて決められない状態」と「選択肢が多すぎて選べない状態」が混在しているためです。このふたつは原因が異なり、対処法も逆方向になります。まず「選択肢が頭の中にあるか」を問うことで、どちらの状態かを見極めることができます。
Q. 悩みと迷いの違いは何ですか?
悩みは選択肢がない状態、迷いは選択肢があるが選べない状態です。同じ「前に進めない」状態でも、動くべき方向は正反対です。悩みには選択肢を増やす行動が、迷いには選択肢を絞る判断が必要になります。
Q. 選択肢が多すぎて決断できないときはどうすればいいですか?
判断の軸を一本だけ先に決めることが有効です。「今週中に実行できるか」「上司に説明しやすいか」など、基準を一つに絞り、その基準だけで選ぶ。心理学者バリー・シュワルツの「選択のパラドックス」が示すように、選択肢を増やすほど決断は難しくなります。
Q. 仕事で自分で判断できないと感じたらどうすればいいですか?
「判断できない」のは能力の問題ではなく、思考の方向が合っていない可能性があります。まず「選択肢が頭の中にあるか」という一問を立ててみてください。選択肢がなければ情報収集や問題の分解が先で、選択肢があれば絞ることが先です。方向が合えば、思考は動き出します。
(参考)

*1: バリー・シュワルツ 著, 瑞穂のりこ 訳|なぜ選ぶたびに後悔するのか 「選択の自由」の落とし穴

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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