「仕事や勉強に集中できない」
「何かを始めても三日坊主」
「やるべきことを先延ばしにしてしまう」
どれもこれも、やる気が出ないから――そう思っていませんか?
しかしやる気が出るのを待っていては、いつまでも行動を起こせずパフォーマンスも安定しません。
そこで意識したいのが仕組みづくり。
やる気や意志の力といった感情に頼らず、行動を起こし継続する仕組みをつくることでパフォーマンスを安定させるのです。
どのような仕組みがあるのか、本記事で詳しくご説明します。
やる気はいらない
日々の仕事やスキルアップに向けた勉強を前に「やる気さえあれば……」と二の足を踏んでいる人は多いでしょう。
しかし、行動を起こすために必要なのは、じつはやる気ではないのです。
行動科学マネジメントの第一人者である石田淳氏は「何かを確実に成し遂げようとしたときに『やる気』という曖昧なものをよりどころにしてはいけません」と注意を促しています。
代わりに「『仕組み』をつくり、その通りに行動することがもっとも賢明」だと述べています。*1
たとえば仕事のやる気が出ないなら「小さなタスクを書き出してから順にこなす」、本を開く気にならないなら「アプリを使って勉強をする」など。
このように行動に焦点を当て、やる気の有無に関係なく動けるように誘導することが成功の鍵となります。
では「やる気に頼らない仕組みづくり」はどのように行なえばいいのでしょうか?
本記事では3つの方法をご紹介します。
やる気に頼らない仕組み1:ライバル行動をなくす環境づくり
1つめは「ライバル行動」に着目した方法です。
前出の石田氏は、行動の種類について次のように分類しています。
- ターゲット行動:不足行動(勉強や運動など増やしたい行動)または過剰行動(タバコや過食など減らしたい行動)
- ライバル行動 :ターゲット行動を邪魔する行動 *2よりまとめた
「行動を継続するコツの一つは、このライバル行動をなくしていくこと」だと述べる石田氏。*2
しかしライバル行動として、ついテレビをつけてしまうといった習慣や、行動したくないためにダラダラとしてしまうケースもよくあります。
そこで石田氏は「ライバル行動ができない環境」をつくることをすすめています。*2
具体例をいくつか挙げましょう。
- 勉強をしたいけれど眠くなってしまう→人の目があるカフェに行く
- ついスマートフォンを見てしまう→スマートフォンを別の部屋に置いておく
- 細かな作業ばかりで重要な仕事が手につかない→「今日〇時にチェックしてください」と上司に頼んでおく
スマートフォンやテレビなどライバル行動のもとから物理的に離れるほか、人や場所といった周囲の物事を活用するのもおすすめです。
まずは自分のターゲット行動と、それを邪魔するライバル行動を明らかにしてから対策を立ててみましょう。
やる気に頼らない仕組み2:誘惑バンドル
1つめではライバル行動を排除する仕組みづくりをご紹介しましたが、2つめはあえて「一緒にやる」仕組みをご提案します。
これは行動科学者のケイティ・ミルクマン氏がすすめる「誘惑バンドル」という方法。
ターゲット行動とライバル行動を一緒に行なうのです。
誘惑バンドルの特徴は「誘惑に浸ってよい時間を、やる気をとくに高めなくてはできない活動をするときだけに制限」すること。*3
つまり、ターゲット行動をとるときにだけ、好きなことを抱き合わせにするというルールを設けるのです。
以下に具体例をご紹介します。
- 重要な仕事をするときだけ、お気に入りのお菓子を食べる
- 勉強をするときだけ、好きな音楽を聴く
- ジムで運動をするときだけ、アニメを見る
ミルクマン氏は「誘惑バンドルが効果を発揮すると、困難な目標を手強いと感じなくなり、おまけにこれまで無駄にしていた時間まで減らすことができる」と述べています。
実際に、フロリダの高校で行なわれた研究では、生徒が難しい数学のドリルを解いている間だけ飲食や音楽などを許可すると、多くの課題をやり遂げたという結果が出たそうです。*3よりまとめた
誘惑バンドルは、ついやりたくなるライバル行動の性質を生かして、ターゲット行動の頻度を高めることができます。
しかしターゲット行動に集中するには「認知的負荷のかかる作業同士」または「肉体的負荷のかかる作業」同士は避けるべきです。*3よりまとめた
勉強をしながらゲームをする、ランニングをしながらお菓子を食べるといったことは難しいので、ターゲット行動を妨げないような組み合わせを考えましょう。
やる気に頼らない仕組み3:B=MATモデル
3つめは、スタンフォード大学行動デザイン研究所の創設者、B・J・フォッグ氏が提唱する「B=MATモデル」です。これは動機(Motivation)と実行能力(Ability)、きっかけ(Trigger)の3つが揃うことで、行動(Behavior)につながるというもの。*4
つまり、行動が起こせない、または長続きしないのはやる気がないからではなく、動機・実行能力・きっかけのうちどれかが足りないからだと言えます。
なんとなく行動しようとしたり、自分の能力よりも難しい行動を設定してしまったりしていませんか?
フォッグ氏は、行動を起こし習慣化させる方法を、B=MATモデルを使って説明しています。
- B(行動):目標とする行動を具体的にする
- M(動機):やりたいと思うことをする
- A(実行能力):まずは簡単にできることから行なう
- T(きっかけ):日常的に行なう行為をきっかけにする *4
資格試験の勉強を例に、NG例とOK例を考えてみましょう。
❌ 【NG例】
- B(行動):資格試験に向けて勉強する
- M(動機):上司に言われたので仕方なく
- A(実行能力):毎日、朝と夜に1時間ずつ勉強する
- T(きっかけ):忙しいけれどなんとか時間をつくろう
✅ 【OK例】
- B(行動):半年後の資格試験に向けてコツコツ勉強する
- M(動機):今後のキャリアアップに欠かせない、仕事にも活かせそう
- A(実行能力):毎日10分だけ勉強をする
- T(きっかけ):通勤電車に乗っているあいだ、テキストを読む
OK例のように、自分が「やりたい」「これならできそう」と思えるようなB=MATモデルにすることで、やる気に頼らなくても行動できるようになるはずです。
気が進まないけれどやらなければならないことも、自分にどのようなメリットがあるかを考えることで前向きな動機が見つかるでしょう。
B=MATモデルを使って、自分の行動を客観的にとらえ直してみてはいかがでしょうか。
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仕事や勉強などで、気が進まないときや習慣化できないことは誰にでもあります。
しかし、やる気が出るのを待つのではなく、仕組みを活用して行動することが大切です。
ぜひ、今回ご紹介した仕組みづくりを日常に取り入れ、成功に近づいてください。
※引用の太字は編集部が施した
*1 日経ビジネス|「やる気」をよりどころにしない 「仕組み」があれば学びは続く
*2 三菱電機 Biz Timeline|習慣化 仕事術 やる気は不要!行動科学に基づく4つの秘訣
*3 ダイヤモンド・オンライン|【行動科学】「退屈な勉強」でもパッと集中できる1つの方法
*4 クーリエ・ジャポン|「読書を習慣化したいなら、まずは本を開くことを目標に」とにかくシンプルが鍵
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。