教員の転職と転職エージェント。エージェントに話をする前に、強く勧めたい「自己分析」について

クジラボ・森實泰司が解説する教員の転職エージェント活用術——紹介手数料140万円の仕組みと自己分析を先にすべき理由

転職するなら、まずは転職エージェントだろう。それ自体はごく自然な考え方です。相談しながら、あった転職先を案内してくれる、理想的なサービスだといえます。

でも、いざ登録してみた先生たちから聞こえてくるのは「求人票を読んでもピンとこない」「面談で『未経験だと評価されにくい』と言われて落ち込んだ」という声です。

悪いのは先生でも、エージェントでもありません。あのサービスが無料で成り立つ仕組みが、知られていないだけ。のべ1,000人以上の先生の相談に向き合ってきたキャリアコーチング「クジラボ」代表の森實泰司さんに、先生が転職支援サービスとうまく付き合う方法を、お金の流れから聞きました。

【プロフィール】

森實 泰司(もりざね・だいじ)

株式会社クジラボ 代表取締役。1986年、福岡生まれ。ソフトバンク、リクルートを経て、ITベンチャーのキュービックで人事責任者を務め、組織を3年で30名から300名へと拡大。2019年に学校法人の事業承継に携わり、教育の現場へ。2021年に株式会社クジラボを設立する。「支えるひとをささえる。」をビジョンに掲げ、先生・公務員・看護・介護・保育など、誰かを支える仕事に就く人のためのキャリアコーチングを手がける。

エージェントは「タダ」ではなく「企業が140万円払う」サービス

相談の場で、先生たちに「エージェントって、なんで無料だと思いますか」と聞くことがあります。

企業からお金をもらっているらしい、というところまでは、みなさんなんとなく知っています。「いくらだと思いますか」と重ねると、多くの方が「10-20万円くらいですか」と答えます。

実際は、幅はあるものの、転職した人の年収の35%程度です。年収400万円で転職が決まれば、140万円。ここで、みなさん絶句します。無料の正体は、企業が代わりに払う高額な紹介手数料だったわけです。

この金額は、先生の転職のしやすさにも関わってきます。企業から見ると、エージェント経由の応募者には「採用すると140万円かかる」という値札がついています。教員からの転職はどうしても未経験扱いになりますから、「未経験の採用に140万円は出せない」と判断されやすくなるのです。

エージェントを通すこと自体が、未経験者にとってはハードルを1段上げる場合がある。あまり知られていない事実かもしれません。

ちなみに、手数料を嫌ってエージェントに求人を出さない会社も多く、エージェントが持っている求人以外にもたくさんの求人はあります。ナビサイトや直接応募の先にも、多くの求人案件はあるのです。

転職エージェントのビジネスモデルと教員転職の相性——迷っている段階では客扱いされない理由と未経験評価の仕組み

「迷っている人」はエージェントのお客さんではない

お金の流れがわかると、エージェントの面談で起きたことにも説明がつきます。

エージェントの売上は、転職が決まってはじめて発生します。ですから彼らの仕事は、相談者を納得させることだけではなく、その上で受からせることです。「受かりそう」な求人を選び、年収交渉までしてくれる。無料でここまでやるのですから、じつは優秀なサービスなのです。

ただし、売上につながらないことはやれません。自己分析は基本的には「ご自身でお願いします」になりますし、「学校では実現できなかった理想の教育を実現したい」という思いを話しても、そういう求人が手元になければ「営業はどうですか」と返ってきます。

まずすすめられる会社は、塾や予備校などの教育系が多い。「受かりそう」を基準に考えるなら、経験が活かせることは有利に働きますし、そもそも適性にそっておすすめすればそうなるのも不自然なことではありません。

そして、辞めるかどうか迷っている段階の人は、そもそもお客さんとして扱われません。面談しても売上が見込めないからです。

「未経験でゼロからですね」と言われて、自分には価値がないと感じた先生へ。あの場で測られたのは、あなたの価値ではありません。

転職市場には営業、経理、人事といった職種の枠があり、その枠のどこにも「教師」がないから、未経験の棚に置かれただけです。仕組みの話であって、あなたの20年、10年の価値の話ではないのです。

教員転職で自己分析を先にすべき理由——キャリアコーチングで強みを言語化しエージェントを味方にする順番

先に「軸」をつくってから使えば、エージェントは味方になる

では、どうすればいいのでしょう? 順番を変えてみる、というのがひとつの答えです。求人を探す前に、まず自己分析をする。

なにを大切にしたいのか。なにが得意なのか。それを必要としてくれるのはどこか。自己分析を通じてこれらがはっきりしていれば、エージェントにすすめられた求人を、自分の物差しで選べるようになります。逆に、ここを飛ばして行くと、受かりそうな求人に流されて、入ったあとで後悔することにもなりかねません。

ただ、自己分析を自力で完成させるのは、誰にとっても難しいものです。人は自分のことを全体の3〜5%しか理解できていないといわれます。残りは、自分では見えていないのです。

私たちのようなキャリアコーチングは、ここを対話による内省と、診断ツールを使った自己分析で掘り下げていきます。強みを客観データで測ると、自分の上位5つの強みが見えてきます。「先生しかやってこなかった」と思っていた人が、市場で通用する強みを自分の言葉で語れるようになるのです。履歴書の書き方や、元先生がつまずきやすい面接の受け答えも、そのうえで整えます。

ライザップと同じで、ひとりでもできるけれど、プロと組めば速くて確実、という種類のサービスです。企業ではなく本人からお金をいただくので、転職しない結論になっても、私たちは困りません。

整理すると、こうなります。まず自己分析と内省で、自分の軸をつくる。そのうえで、エージェントも、ナビサイトも、直接応募も全部使う。

エージェントは、自己分析ができている人にとっては強力な味方になります。逆に、自己分析が曖昧なままだと、提案にそのまま流されてしまうこともあります。順番さえ間違えなければ、無料であれだけ働いてくれるサービスを、使わない手はありません。

急いで求人を見たい気持ちをいったん置いて、まず自分を知ることから始めてみてください。それがいちばんの近道です。

先生のキャリア実践編・連載まとめ——クジラボ森實泰司が3回で解説した教員転職の全体像と次のステップ

【先生のキャリア実践編 連載】

【ライタープロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)

株式会社新恵社 代表取締役。
1977年生まれ、福岡県出身。2010年に株式会社恵学社(現・株式会社イングリッシュカンパニー)を創業。2014年に学習メディア「STUDY HACKER」を立ち上げ、編集長を通算10年以上務める。
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