「最近、人間関係で消耗している」
「人と接するだけで、なんだか疲れる……」
このように、人間関係をストレスに感じている人は、身近に「付き合うと損をする要注意人物」がいるかもしれません。
今回は、関わると損するタイプの人と、溜まってしまったストレスを解放する方法についてご紹介します。
間違ったブランド・ビルディングをする人には要注意
「ブランド・ビルディング」という言葉をご存知でしょうか? 通常は肯定的な観点で使われることが多く、ブランドを構築し、ライバルとの差別化に成功した企業や個人のことを指します。
しかし、「私はこんなにすごい!」と自分の能力を積極的にアピールすることも、同様にブランド・ビルディングと呼ばれているのをご存じでしょうか。メンタリストDaiGo氏は、著書『コミュ障でも5分で増やせる超人脈術』の中で、間違ったブランド・ビルディングをする人には近づかないことをすすめています。
「みんなが使っているあのサービス。あれ、うちの会社が運営しているんだけど、企画したの、俺だから」(中略)あなたの周辺にも、こんなふうに自分のことを自慢する「あれ俺詐欺」的な人がいるのではないでしょうか? 結論から言うと、この手の人たちからは距離をとるようにしましょう。よき聞き手となってあげたとしても、あなたが疲弊するだけです。
(引用元:メンタリストDaiGo(2019), 『コミュ障でも5分で増やせる超人脈術』, マキノ出版.)
特に、自信がない人や心に不安を抱えている人が、間違ったブランド・ビルディングや「あれ俺詐欺」をやる傾向にあるそう。
このような人々は一見優秀な人物に思えますが、彼らのブランド・ビルディングは、自己顕示欲から来る自分語りであり、実際は自信のなさの裏返しであるため、しばらく付き合ってみるとメッキがはげてくるのだとか。DaiGo氏によると、次のような人に会ったら注意する必要があるそう。
- 初対面で「コミュニケーション能力が異常に高い!」と感じさせる人
- 会話を盗んで自分のことばかり語る人
- 「あれ俺詐欺」的な言動を見せる人
- 顔が広くて知り合いは多いものの、親しい友だちは少なそうな人
初対面で見抜くのは難しいため、1〜2ヶ月の「試用期間」を設けるのがいいかもしれません。誇らしげに語っていることが真実であれば、それを実行して成果を出しているはずです。
また、共通の知り合いに評判を聞いてみるのもひとつの手。ネガティブな声が多いようならば、そのような人のために大切な時間を費やして心を消耗させるのは無駄と考え、関わらないようにするのがベストでしょう。
意外に多い「ダークトライアド」とは
心理学における「ダークトライアド」とは、ナルシスト・マキャベリスト・サイコパスという3つのパーソナリティ特性の総称です。これらの特性を持った人々は、社会的苦痛や重大な問題を引き起こす恐れがあるとされています。当然、関わりたくないですよね。
3つのパーソナリティの特性は、以下の通りです。
- ナルシスト:自己中心的で、うぬぼれが強い人
- マキャベリスト:他人をだまし、操って、自分の利益を得ようとする人
- サイコパス:他人への共感や、罪悪感を抱かない人
このような特性を持っている人たちは、いったいどの程度の割合で存在するのでしょうか。
インターネット上に嘘の書き込みをしたり、誰かを誹謗中傷したり、相手が苦しむ様子を見たりして喜びを感じる人たちを「インターネットトロール」と呼びます。マニトバ大学を中心とする研究チームが、インターネットトロールに関するアンケート調査を実施したところ、トロールを行なう人は、ネットユーザー全体の5.6%であることが判明しました。そして、研究チームがトロールを行なう人たちの性格も調査したところ、彼らはダークトライアドの気質を持っていることがわかったそう。
5.6%と聞くと少なく感じられるかもしれませんが、すなわち20名の会社であれば、確率的に1名はダークトライアドの気質を持った人がいるということです。大企業となれば、いったい何人いるのか計り知れないですよね。自己中心的で、他者の苦しみを喜ぶような人と関われば、痛い目を見るのは容易に想像できます。このような人たちを避けるには、どうしたらよいのでしょう?
米ワシントン大学は、209人の被験者に対し、ダークトライアドの要素を持つ人を見分けさせる実験を行ないました。実験で使われた顔写真は、サイコパス度やマキャベリスト度の高い人たちの顔写真を合成したもの。すると、被験者らは60%の確率で、ダークトライアドの要素を持つ人たちの顔を言い当てたのだとか。
つまり、私たちは、半分以上の確率でダークトライアドを見分けることが可能なのです。「この人、なんか変かも」と思ったら、自分の直感を信じ、近づかないようにするのがいいかもしれませんね。
負の感情を手放そう
厄介な人を相手にしてストレスを溜めると、他人に攻撃的になるなどして、自分自身もトラブルメーカーになってしまう可能性があります。そうならないためにも、負の感情を手放すコツをご紹介しましょう。
感情を書き出す
1つ目は、感情をノートや紙に書き出すことです。嫌なことがあったときに紙に書き出す行為は、「ライティングセラピー」と呼ばれており、臨床心理士にも使われている方法です。
米国の心理学者であるジェームス・W・ペネベイカー氏の研究によると、心の内にこもったネガティブな感情を筆記して表に出すことはセラピー効果、つまり感情を落ち着かせる効果があるのだそう。負の感情を書き出すことで頭の中に留まることを防げますし、紙に書かれているのを見ることで客観視できるようになり、解決の糸口が見つかる可能性もあるでしょう。
また、レジリエンスの専門家で、ポジティブサイコロジースクールという団体の代表をつとめる久世浩司氏によると、ポジティブな内容を書き出すことにも、心理的に良い効果があるそう。同氏は、夜寝る前に10〜15分ほど「すべてがうまくいったと想像して、将来の最高の自分を思い描き、紙に書く」ことをすすめています。これを3日間続けた人には、「ポジティブな感情が増した」「気持ちが前向きになった」という結果が出ているそう。
グリーンエクササイズ
2つ目にご紹介するのは、グリーンエクササイズです。
英国エセックス大学の研究者らが、1,250名の被験者を対象に行なった調査によると、たった5分間、自然の中で運動するだけで気分がよくなり、自信を得る効果が見られたのだとか。緑の中でエクササイズを始めると、最初の5分間でメンタル面に大きな変化が見られ、その後も緩やかに状態が良くなっていったそう。研究に携わったジュールズ・プリティー氏によると、グリーンエクササイズは、精神的に参っている人やストレスが溜まっている人に特に効果的なのだそうです。
国内の研究でも、グリーンエクササイズの効果が証明されています。千葉大学環境健康フィールド科学センターの宮崎良文教授が率いる研究チームは、被験者を「森を15分散策するグループ」と「都市の中心部を15分歩くグループ」の2つに分けて調査しました。結果、森を散策したグループは、ストレスホルモンのコルチゾールが16%減少し、血圧は2%、心拍数は4%低下したのだとか。
ストレスを和らげたい人にとって、緑は非常に効果的なのです。仕事の休み時間や休日に、近所の公園などで軽く散歩してリフレッシュしてみてはいかがでしょう。
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ご紹介したような「付き合うと損をする要注意人物」が同じチームや隣の席にいる場合は、上司に相談して、チームや席を移動させてもらうのがいいかもしれません。それが難しい場合は、転職を考えるのもひとつの手です。もし、転職できないのであれば、期限を決め、かつご紹介した方法で、ストレスを溜めないよう工夫することをおすすめします。
(参考)
メンタリストDaiGo(2019),『コミュ障でも5分で増やせる超人脈術』, マキノ出版.
日経ビジネス電子版|手を動かし、「書く瞑想」をしよう
SLATE|Internet Trolls Really Are Horrible People
Wikipedia|ダークトライアド
Nicholas S. Holtzman(2011), “Facing a psychopath: Detecting the dark triad from emotionally-neutral faces, using prototypes from the Personality Faceaurus," Journal of Research in Personality, No. 45, pp. 648-654.
BBC News|'Green' exercise quickly 'boosts mental health'
ナショナルジオグラフィック日本版サイト|自然に癒される
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。