つい”感情的になってしまう”人のための「EQ(感情知能)」向上トレーニング|”冷静さ”を5分の練習で手に入れる

感情を表す顔文字が並んでいる

企画書の修正が何度も通らず、イライラが募る。そんなときに限って後輩がミスをし、感情的に叱責してしまった。「あんな言い方をしなければよかった」と後悔が残る。

一方で、隣の席の先輩は違う。突発的な仕事が入っても、厳しいダメ出しを受けても、感情をコントロールして冷静に対応している。そんな姿に「私もあんな風になりたい」と思いながら、また感情的になってしまう自分。このままでは、後輩との関係も、自分のキャリアも望む方向に進まないのでは……。

あなたも、仕事での感情コントロールに悩んでいませんか? 実は、この能力は「EQ(感情知能)」と呼ばれ、誰でもトレーニングで高めることができます。EQを磨けば、ストレスに振り回されず、周囲からの信頼も得られる存在に変われるはず。

本記事では、EQを高める具体的な方法と、それがキャリアにもたらす効果について解説します。

EQ(感情知能)とは?

心理学を専門とするセラピストのジャンヌ・シーガル氏らによると、EQとは「自分の感情を前向きに理解、活用、管理する能力」と定義されています。職場での感情コントロールに必要不可欠なこの能力は、ストレス軽減や効果的なコミュニケーション、他者への共感に役立ちます。*1

大切なのは、感情を抑え込むのではなく、理解して上手に活用すること。たとえば、締切間際に仕事を依頼されたとします。そこで不満をあらわにしたり、我慢して「任せてください!」と言うのではなく、自分の気持ちを認めたうえで期限の相談や協力を求めるなど、建設的な行動をとることができます。

これは、IQ(=Intelligence Quotient)と呼ばれる知能指数とは異なります。

『Emotional Intelligence 2.0』の共著者トラヴィス・ブラッドベリー氏は、次のように説明しています。

知能とは学習能力であり、15 歳のときも 50 歳のときも同じです。一方、感情的知能は、訓練によって習得および向上できる柔軟なスキルのセットです。*2

つまり、IQは生まれつきの能力である一方、EQは後天的に伸ばせる能力だということです。さらにブラッドベリー氏は、IQとEQに関連性はなく、IQが高いからといってEQも高いとは限らないと述べています。*2

職場でのストレスマネジメントやキャリアアップに欠かせないEQは、年齢や学校の成績などとは関係がなく、トレーニングをすれば誰でも高めることができるのです。

積み木が階段のように積み上げられ、向上することが表現されている

EQを高めるメリット:職場での感情コントロールがもたらす効果

EQは、仕事の業績やメンタルヘルスなどさまざまな要素と関連しています。前出のブラッドベリー氏が創設したメディア「TalentSmartEQ」の調査では、以下の結果が明らかになっています。*2

  • 高い業績を上げている人の 90% はEQが高い。
  • 業績が下位の人のうち、EQが高いのはわずか20%。
  • EQが高い人は、低い人よりも年間平均29,000ドル収入が多い。

つまり、EQの高さに応じて、仕事のパフォーマンスと収入が上がるということです。職場での感情コントロール能力が、このように具体的な成果につながるのです。この傾向は、地域や業界を問わず共通しているといいます。*2

さらに、シーガル氏は、EQの高さがストレス耐性の向上にもつながると指摘します。なぜなら「感情をコントロールできない人は、ストレスもコントロールできていない可能性が」あるためです。「制御できない感情やストレスは心の健康にも影響を及ぼし、不安やうつにかかりやすく」なるリスクもあると言います。*1

たとえば、商談の前に不安や緊張を感じているとしましょう。不安感を制御できないと、いつまでもストレスにさらされて心が疲れてしまいます。EQの高い人は、適切なトレーニングを重ねることで、深呼吸やポジティブなイメージなどで感情をコントロールし、ストレスを軽減できるのです。

EQを高めることで、仕事のパフォーマンスや収入の向上だけでなく、メンタルヘルスの維持にもつながります。持続可能なキャリアアップのために、EQを高める方法を身につけることが大切です。ビジネスパーソンのデスクの上の様子

EQを高めるトレーニング法:職場での感情コントロール実践ガイド

では、どのようなトレーニングを行なえばEQを高められるのでしょうか? 前出のシーガル氏は、感情をコントロールするためのスキルとして「自己管理」と「自己認識」のふたつを挙げています。*1

それぞれのスキルを伸ばすための、具体的な方法をご紹介しましょう。EQを高めるトレーニングは、職場ですぐに実践できるものばかりです。

自己管理スキルを高めるトレーニング:呼吸法でストレスをコントロール

イライラや緊張を感じた時は、感情的な行動を抑えて冷静さを取り戻すことが大切。そのためにおすすめしたいのが、呼吸法です。

イェール大学経営大学院の教員を務めるエマ・セッパラ氏は「長く息を吐く」という呼吸法を提案しています。この方法は「感情を処理する最も効果的かつ最速の方法の1つ」とされ、ゆっくりと長く息を吐くことで副交感神経が活性化し、心身がリラックスするといいます。*3

たとえば、仕事でミスをしてしまったときやプレゼンの前など、感情が大きく揺れるタイミングで意識的に呼吸法を取り入れてみましょう。このトレーニングを継続することで、感情をコントロールし、職場でのストレスに対する耐性を高められます。

デスクで深呼吸するビジネスパーソン

自己認識スキルを高めるトレーニング:職場のEQを高めるジャーナリング実践法

自己管理をするには、自分の感情や思考のクセなどを知る「自己認識」も重要です。職場での感情コントロールには、自分の気持ちに目を向ける習慣が欠かせません。イライラや緊張といった感情に気づきやすくなれば、ストレスへの対処も上手くなるでしょう。そんな自己認識のトレーニングには、ジャーナリングをおすすめします。

臨床心理士の藤本志乃氏によると、ジャーナリングとは「頭に浮かんだことをそのまま紙に書いていくこと」。日記のように整理する必要はなく、「思いつくままに、感情を吐き出すことが重要」です。*4

ジャーナリングのメリットは、自分の感情を客観的に見られる点です。藤本氏は「書いたことを客観的に眺める」ことで、「『自分ってこんなことを考えていたんだ!』と、今まで気づかなかった自分の新しい一面を発見できる」と言います。*4

毎日のトレーニングとしてジャーナリングを続けることで、自分がどのような場面でどう感情をコントロールすべきか、ストレスを感じたときにどんな対処法が効果的かなど、職場での具体的な行動指針が見えてきます。

ここでは、EQを高めるジャーナリングの具体的な方法をご紹介します。

まずは、紙とペンを準備します。「丁寧に書かないと」と構えてしまわないよう、あえて捨ててもいいノートや裏紙などを用意するのがポイントです。*4

筆者はA5サイズのルーズリーフを用意して、頭に浮かんだことを書き出してみました。

筆者が書いたジャーナリング

画像は筆者が作成した

書く量や時間は決まっていないので、今回はルーズリーフが1枚埋まるまで書いてみました。かかった時間は10分ほど。書いたものを読み返すまでもなく、書き出す過程で、「自分のペースで仕事ができないとイライラする」「相手の反応を必要以上に気にする」といった職場での感情コントロールの課題が見えてきました。

これまで筆者はイライラして作業に集中できなかったり、不安感から行動が遅れたりして仕事が進まないことが多くありました。しかし、EQを高めるトレーニングとしてジャーナリングを始めてからは、自分の感情の変化に早く気づけるようになりました。ジャーナリングで得た自己認識と呼吸法を組み合わせることで、職場でのストレスに対して効果的な対処ができ、気持ちを切り替えて次の行動に移せることを実感しています。

ジャーナリングでEQを高めることについては別記事でも詳しく紹介しています感情を「書いて」成功する。EQを高める”ジャーナリング”実践ガイド

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EQは、キャリアの成長に欠かせない要素です。今回ご紹介した呼吸法ジャーナリングを日々の業務に取り入れ、感情をコントロールする力を磨いていきましょう。

※引用部分の太字は筆者が施した

【ライタープロフィール】
藤真唯

大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。

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