「苦手な上司の話が覚えられない」は脳の性質だった!? それでもなんとか仕事をこなすための3つの工夫

問い詰められる女性

「苦手な上司や先輩の話が、全然頭に入ってこない。疲れているのかな……」

こんなふうに、ちゃんと聞こうとしているのに、特定の人からの指示や説明だけが記憶に残らない。聞かなきゃ、覚えなきゃと思っても難しい。なぜだ……。

じつは、それはいたって普通のことだそうです。脳の仕組み上、苦手な人の話は頭に入りにくいものなのです。驚きですね。

とはいえ仕事である以上、「あなたが苦手なので、話が頭に入りませんでした」とは言えません。確実に怒られます。かといって、相手を好きになる必要があるか、というとそんなことはありません。というか無理ですよね。

今日の記事では、苦手なままで仕事の指示だけは落とさずに聞ける工夫をご紹介していきます。

なぜ、苦手な人の話は頭に入らないのか?

まず、そもそもなぜ、苦手な上司の話は頭に入ってこないのか。それは、3つの脳の仕組みが理由です。話を聞く男性

理由1 「話を聞く」より「警戒」が優先されるから

苦手な相手を前にすると、脳では、脅威への反応にかかわる部位である「扁桃体」が活動を始めます。相手を脅威と受け取ると、警戒することに意識を集中させるのです。*1

つまり、あなたの脳は「悠長に話なんて聞いている場合じゃない! 安全を確保しなければ!」と防衛モードに入っているわけです。「怖い上司だ。やばい逃げろ」みたいな反応です。

理由2 情報を整理・記憶する能力が落ちるから

苦手な人と話している最中にも、脳には変化が起きます。相手と接すること自体がストレスとなり、ノルアドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンが分泌されるのです。

すると、「苦手」「嫌だ」といった感情的な記憶が強く残る一方で、思考や記憶を司る「前頭前野」の機能は一時的に低下することがわかっています。*2

前頭前野は、情報を整理して記憶する部位です。ここの活動が落ちれば、話の内容を整理して頭に入れることが難しくなるのは当然なのです。

「ストレスフルな相手だ。いやだ!」と思ってると一時的に思考力が落ちている。最悪ですね。

理由3 あとから思い出しにくくなるから

ストレスホルモンは、情報を整理・記憶する機能を下げるだけではなく、あとからその情報を思い出す機能も妨げることが報告されています。*3

苦手な人との会話は、記憶に残りにくいだけでなく、思い出しにくくもなるわけです。

「嫌いな人だからさっさと忘れよう」と、大事な話ごと忘れてしまう、ということです。いいのか悪いのか……。

このように、「苦手な人の話が頭に入らない」のは、脳がもつ防衛システムが動いた結果です。あなたの努力不足ではありません。

メモを取る二人

苦手な相手の話も最低限聞けるようになる小さな工夫

苦手だからといって、まったく関わらないわけにはいかないのが仕事の難しさですよね。大人だから、やらないといけない。

でも、相手の話をすべて受け止める必要はありません。「仕事に必要な情報だけ」をサッと拾えればそれで足りるのです。聞き方を少し工夫するだけで、無理なく情報をキャッチできるようになりますよ。

工夫1 「聞く前」にメモを準備する

ルーティン系の報連相であれば、「話を聞く前」にメモのフォーマットをつくっておくのが効果的です。

相手の話を聞く前に、「日時」「タスク内容」「締め切り」など、聞き取るべき項目をメモに書き出しておきます。

あらかじめ「話のなかから、どの情報を拾えばいいか」がわかっていれば、扁桃体が警戒に使っていた注意資源の一部を、必要な情報の処理に向けやすくなります。

嫌な相手の話は忘れるのだから、入念にメモをするってことですね。

工夫2 その場で「復唱」して記憶に焼き付ける

とはいえ、事前にメモを用意できない場面も多いものです。そんなときは、話を聞いたあとに「要点を声に出して復唱する」のがおすすめです。たとえば「見積書を金曜までに、ですね」のように、その場で声に出して確認するのです。

声に出して情報を再生することで、記憶に残りやすくなることが心理学の実験でもわかっています。*4

また、声に出して確認することは、あとから「言った・言わない」のトラブルを防ぐ効果も期待できます。

メモがないときは復唱。記憶の基本みたいな話ですが、これが意外と効くのです。

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苦手な人の話が頭に入らないのは脳の防衛反応で、集中力不足とは別の話です。小さな工夫を取り入れて、うまい具合に折り合いをつけていきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 苦手な人の話が頭に入らないのは、聞く姿勢が悪いからではないのですか?
いいえ、姿勢や努力の問題ではありません。苦手な相手を脅威と判断した脳が、注意やエネルギーを警戒に振り向けてしまうために起こる、自然な反応です。
Q. メモを準備する以外に、今からできる工夫はありますか?
話を聞いたら要点を声に出して「復唱」するのもおすすめです。声に出して情報を再生することで記憶に残りやすくなることが心理学の研究でも確認されており、あとから「言った・言わない」のトラブルを防ぐ効果も期待できます。
Q. あとで話の内容を聞き返すと思い出せないのはなぜですか?
苦手な相手との会話で分泌されるストレスホルモンには、あとから情報を思い出す機能を妨げる作用があるためです。その場で復唱して記憶を固定する習慣が、対策として有効です。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。