「努力が苦手」は脳の○○が原因。どうすれば努力できる人になれるのか?

脳科学で見る、努力できる人とできない人の違い01

みなさんは努力が好きですか? あるいは、コツコツと努力するのは得意ですか?

じつは脳科学では、「努力できる人」と「努力できない人」とでは脳の働きが違うとされています。どうすれば「努力できる人」に近づけるのでしょうか。

努力が苦手な人に、そのヒントをお届けします。

「努力できる人」と「努力できない人」の脳の違いとは?

ヴァンダービルト大学(アメリカ)の研究チームが行なった以下の実験によって、努力できる人と努力できない人とでは脳の働きが異なることが示唆されました。

この実験では、25人の被験者に「簡単なタスク(利き手の人差し指で7秒間に30回ボタンを押す。成功したときの報酬は少額)」と「難しいタスク(利き手でないほうの小指で21秒間に100回ボタンを押す。成功したときの報酬は高額)」を選んでもらったうえで、タスク実行中に起こる脳の変化をモニタリングしました。その結果、タスクを最後までやり遂げようとする人(=努力できる人)と、タスクを途中で諦めてしまう人(=努力できない人)のあいだで、脳の3つの部位に大きな違いが見られることが判明しました。

まずは、脳の報酬系の一部である「線条体」と「前頭前皮質腹内側部」。タスクを最後までやり遂げようとする「努力できる人」は、これらの部位が活発に動いていたのです。彼らの脳では、「これだけ頑張れば、これだけの報酬が得られる」という報酬予測の機能が働き、脳内で快感を得ることで努力の推進力を得ていました。

一方で、努力できない人は「島皮質」が活発だったそう。島皮質が活発になると損得勘定がネガティブに働き、「頑張っても無駄ではないのか……?」「つらいからやめよう……」と行動にブレーキがかかるのだそうです。

努力できるかできないかが、脳の働きの違いとなって現れるなんて、興味深いですね。みなさんはどちらのタイプでしょうか。過程のつらさよりも最終的に得られる成果を思い描いてモチベーションをキープできるのであれば「努力が得意」な側、反対に最終的な成果よりも過程のつらさが先に頭をもたげてしまうのであれば「努力が苦手」な側、と言うことができるでしょう。

脳科学で見る、努力できる人とできない人の違い02

ここまでの話を聞いて、「努力できるかどうかは才能で決まっている……?」と感じる人もいるかもしれません。しかし、努力できない人は「島皮質」が活発になりやすいということであれば、この島皮質の活動をどうにか抑えられればよさそうですよね。以下に3つの方法をご紹介しましょう。

1. ゲームの要素を取り入れる

 脳科学者の中野信子氏は「努力をゲーム化する」ことをすすめています。島皮質は飽きが来ると活発化するため、ゲーム性を取り入れて作業の退屈さを紛らわせるのがいいそうですよ。

最も手軽で簡単な方法として中野氏が提案するのが「記録」すること。たとえば、勉強机に何時間向かっていたかを毎回計測して記録する、データ入力に何分かかったかを毎日計測して記録するなど。さらに、これらをデータに落とし込んでグラフ等で視覚化すれば、「先週より1時間多く勉強できた」「昨日より5分早くデータ入力が終わった」と、自分の頑張りがよりいっそうわかるようになりますね。

もうひとつ、同じ目標を持つ仲間と一緒に頑張るのもおすすめです。たとえば、TOEICで800点以上取ることを目標にする人どうしで集まり、「自分は今週テキストを50ページ進められた」などと報告し合います。ソーシャルゲーム感覚で仲間と競い合うことで、努力が継続しやすくなりますよ。

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2. ご褒美を用意する

退屈を嫌う島皮質の働きを抑えるうえで、ご褒美を用意するのも効果的です。「頑張っても無駄ではないか?」と行動にブレーキがかかる前に、明確なご褒美を用意して「努力は決して無駄にはならない」と脳に認識させましょう

中野氏によれば、ご褒美は頭の中で映像化できるほど具体的であるのがいいとのこと。「今度の資格試験に合格したら最新のパソコンに買い替える」「TOEIC800点を獲得したら1週間海外旅行に出かける」など、努力した結果得られるご褒美を決めてみましょう。

「1週間でテキストを20ページ進められたら買い物に行く」「今日2時間勉強できたら夜は飲みに行く」など、もっと短いスパンでご褒美を設定するのもよさそうですね。

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3. 努力せずにすむ方法を考えてみる

島皮質の働きが強い人は損得勘定が冷静にできるため、無駄と感じたものに対して「面倒くさい」と考えがちです。しかし中野氏は、この面倒くさいという感情を大切にすべきと言います。なぜならば、無駄なことをやり続けないための効率的な方法を編み出す力になるからです。

『マンガでわかる 東大勉強法』の著者・西岡壱誠氏も、「努力できない脳の持ち主は、効率的かつ合理的に最小限の努力で最大の結果を出す能力に長けている」と言います。現に、西岡氏が東大生30人程度を対象に取材したところ、約半数は努力できない脳の持ち主だったそうです。

今回取材した東大生の中には、1日の勉強時間が2時間程度で東大に合格したと語る人もいました。曰く、「自分は2時間以上勉強なんて頑張りたくなかったから、その2時間でどれだけ効率的にやるかを考えた」とのこと。

(引用元:東洋経済オンライン|漫画!「努力できなくても」東大に入る人の特徴

島皮質の働きが強い人は、無駄に敏感であると言えます。たとえば、数値を毎回手動で入力していることに面倒くささを感じたら「最新の数値が自動的に反映される仕組みをつくればいいのではないか……?」、資料をゼロからつくっていることに面倒くささを感じたら「テンプレートを作成して使い回せる部分は使い回せばいいのではないか……?」――こんなふうに、面倒くさいという感情は効率化のヒントを私たちに与えてくれます。

「努力を得意になろう!」と変に躍起になるのではなく、努力せずにすむ方法を考えるというのも、努力が苦手な人にとっては作戦のひとつかもしれませんね

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無駄な努力を避け、有意義な努力を継続させる――ご紹介した3つの方法を駆使して、成果につなげていきましょう!

(参考)
Michael T. Treadway, et al (2012), "Dopaminergic Mechanisms of Individual Differences in Human Effort-Based Decision-Making," Journal of Neuroscience, 32 (18), pp.6170-6176.
東洋経済オンライン|漫画!「努力できなくても」東大に入る人の特徴
中野信子(2015),『あなたの脳のしつけ方』, 青春出版社.
プレジデントオンライン|東大生の約半数は「努力できない脳」の持ち主だ

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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