「また通知が…」メールを開けば未読10件、チャットの通知は止まらず、本来の仕事はいつできるのか—この焦りと疲労感、あなたも日々感じていませんか?
衝撃の事実があります。一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事の平野友朗氏の調査(2024年)によれば、「8時間労働のうち実に3割近くの時間をメール業務だけに費やしている」のです(STUDY HACKER平野友朗氏インタビューより)。
さらに、チャットツールの「既読」の重圧から、即レスを強いられる状況も加わり、1日の終わりに「今日は何をしたんだろう…」と虚しさを感じる日々 *4。
この記事では、あなたの貴重な時間を奪うメールやチャットの呪縛から解放されるための具体的な戦略を紹介します。
効率を劇的に高める言い回しの使い分けも含め、失われていた仕事時間を取り戻す方法をお伝えします。今この記事を読むことが、明日からのあなたの働き方を変える第一歩になるでしょう。
仕事の効率化【メール編】
1. 文面に悩んだら「生成AI」に草稿を作ってもらう
上司や取引先、初めて連絡する相手へのメールで、気をつかうあまり文章作成に時間をかけてしまった経験はありませんか? 適切な文面をスピーディーに書きたいなら、「ChatGPT」や「Claude」といった生成AIを活用してみましょう。
株式会社ビジネスウォリアーズ代表取締役で業務改革コンサルタントの相原秀哉氏も、ChatGPTを活用したメール作成をすすめるひとり。生成AIに以下を伝え文章を作成してもらうことで、「メール作成の負担を軽減し、業務効率を大幅に向上させることが可能」だとしています。*1
- 概要を入力してメールの目的を伝える
┗(例:「プロジェクトの進捗報告」や「新製品の提案」など) - 文面のスタイルを指定
┗(例:「フォーマルな文体」か「カジュアルな文体」かなど) - メールに必要な情報や要点を列挙
┗(例:「プロジェクトの進捗状況、達成目標、課題点、今後のアクションプラン」など) - 必要に応じて修正および再度生成
┗生成AIの文章をチェックして必要なら手直し。自分の言葉に言い換えるなど。
┗同じキーワードでも再度生成すれば、異なるバリエーションが見られる。
上記を参考に、筆者が実際に試してみた様子がこちらです。新規の取引先に送るお礼メールを想定し、ChatGPTに文面作成を依頼しました(修正前まで実施)。
【生成AIへの指示=プロンプト】
取引先に送るメールの文面を考えて。概要は「保険契約成約のお礼」。フォーマルな文体で。取引先はこれまで付き合いがなかった新規のお客様。今回、初めて団体の自動車保険にご加入いただいた経緯。
【生成AIが作成した文章】
拝啓 初春の候、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
このたびは、○○保険株式会社の団体自動車保険にご加入いただき、誠にありがとうございます。初めてのご契約となりますが、貴社のご信頼にお応えできるよう、今後とも一層の努力をしてまいります。
貴社の大切なお車をしっかりとお守りするため、万全のサポートをさせていただきますので、ご安心いただければと存じます。保険内容や契約に関してご不明点がございましたら、どんな些細なことでもお気軽にお申し付けください。
これからの長いお付き合いとなりますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
まずは取り急ぎ、書中にてお礼申し上げます。
敬具
上記のようなアイデアをもらえれば、いちから文面を考えるよりも大幅に時短できるはず。さらに修正やバリエーションの試行を重ねることで、より適切な文面になるでしょう。メールの文面に悩みがちな人は、ぜひ試してみてください。
※ただし、生成AIの学習に活用されるリスクを考慮し、機密情報は決して伝えないようご注意を!
2. 自動振り分けをやめ受信トレイを「TODOリスト」に
メールの自動振り分け機能は便利なツールです。受信メールを指定フォルダに自動的に仕分けてくれるため、大量のメールをやり取りする人は重要な取引先からのメールを素早く確認できます。
しかし、この機能が逆効果になることもあります。分類しにくいメールが多い場合や、内容を確認しないと優先度がわからない場合は特にそうです。
『アウトルック最速仕事術』(ダイヤモンド社, 2019)の著者で、ショートカット・Outlook研究家の森新氏は、すべてのメールをまず受信トレイで確認し、読んだメールや対応済みのメールを手動で別フォルダに移動する方法を提案しています。
この方法なら、受信トレイには未処理のメールだけが残り、自然とTODOリストの役割を果たします。*2
Outlookユーザーの筆者も早速この方法を試してみました。以下が実践してみた感想です。
- 未確認メールが複数のフォルダに散らばるよりもわかりやすい。
- 受信トレイが空になると、確実に処理できている安心感がある。
- メール対応に追われる感覚が和らぐ。
メールの自動振り分けが合わない人、単純にメールの整理方法を探している人は、ぜひ一度、このシンプルな方法を試してみてください。もちろん一部のみメールの自動振り分け活用、そのほかは受信トレイというやり方もアリです。
ちなみに――仕分けで悩むことがないよう、格納フォルダの数は絞り込むことをおすすめします。
仕事の効率化【チャット編】
1.「ステータスメッセージ」でチャット回数をコントロール
手軽でコミュニケーションがしやすいチャットツールですが、通知が来るたびに目の前の業務を中断しなければならず、非効率だと感じることもあるでしょう。
組織変革の支援などを行うあまねキャリア株式会社CEOの沢渡あまね氏は、ステータスメッセージを活用して通知量をコントロールする方法を推奨しています。*3
具体的には、現在の状況を絵文字で表示する(例:📑会議中、🍔休憩中、🌴休暇中)方法に加えて、「緊急の場合のみメンションしてください」といった詳細な情報も記載します。
これは複数の打ち合わせが続いてデスクで落ち着ける時間がない日や、どうしても集中して作業したい時間帯に特に効果的です。このようにステータスを明確にすることで、不要な中断を減らすことができます。
それを見た人は、いったん他の人に質問するなどの対応ができるでしょう。逆に、ステータスメッセージがなければ「とりあえず連絡しておこう」と、緊急ではない件でもメンションしてしまう可能性があります。
この方法で必ずしも通知の総量が減るわけではありませんが、頻繁な通知に悩んでいるなら試す価値はあります。また、これにより返信が遅れる理由を事前に明示しておけば、相手に悪い印象を与えることも避けられるでしょう。
状況に応じたステータスメッセージを上手に活用してみてください。
2. 緊急時のみ即返信⇒あとは「まとめて返信」
チャット対応に時間をとられているなら、メッセージが来るたびに返信せず、まとめて返信するのもひとつの方法です。
業務効率化やITツール活用支援で経営のアドバイスを行なう、株式会社ワクフリ代表取締役社長の髙島卓也氏も、「すぐに返信するのは、緊急性のあるものだけでOK」だとして、「まとめて返信する時間を1日のどこかで1時間程度とる」ことをすすめています。*4
その際には、いったん絵文字やスタンプなどを使って「確認します」「お待ちください」など、何かしら「反応」を示しておくとお互いに安心です。
「了解」「よろしく」といった簡単な反応で、終結できる場合もあるでしょう。
そうして、あとから必要なものだけ決めた時間にまとめて返信すれば、多少なりともチャットの対応に追われる状況からは抜け出せるはずです。
仕事の効率化【メール・チャット共通】
状況で「言葉の強さ」を使い分ける
また、メールでもチャットでも、表現を変えることで効率化できるかもしれません。
前出の平野氏は、何かを依頼しても、言い方によっては相手に「対応は任意」と誤解され、目的を達成できない場合があると指摘。そして、以下のように述べています。*5
仕事ができる人は、相手に動いてほしいときは、場面に応じて言葉を変えます。それによってこちらの真剣さが伝わったり、切迫感を演出したりすることができるのです。
たとえば下の表の「左・中央・右」の言い回しでは、相手が受け取る印象がだいぶ違うといいます。*5
強い意志を込める | 丁寧に急を要する | 相手に委ねる |
---|---|---|
すぐに~ | 早めに~ | お時間あるときに~ |
至急~ | できるだけ早く~ | ご都合がいいときに~ |
緊急~ | 恐縮ですが早急に~ | お手すきの際に~ |
迅速な対応を~ | 可能なかぎり早く~ | 余裕があるときに~ |
(*5 内の表を参考に、簡略化して組み合わせて作成)
「お手すきで」や「ご都合のいいときに」といった表現は柔らかい印象を与えますが、その分、相手を動かす力は弱くなります。こうした表現を使って相手が行動しなければ、結局は督促のメッセージを再度送ることになってしまいます。
そのような手間を省くためにも、例えば「大変恐縮ですが、いますぐにご対応くださいますようお願い申し上げます」など、状況の緊急度に合った言い回しを選び、相手を確実に行動させることを意識しましょう。
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今回ご紹介した5つのテクニックは、いずれも即実践できるものばかりです。あなたもメール・チャットへの対応時間を減らし、業務時間を確保しましょう!
*1: マイナビニュース|成果を上げながら定時で帰る仕事術(198) ChatGPTでメールの文面作成を効率化しよう
*2: ダイヤモンド・オンライン|最も効率がいい「Outlookのメール整理術」はコレだ!
*3: リクナビNEXTジャーナル|在宅勤務推奨でやり取り急増!「ビジネスチャット」の基本マナー、NGマナー
*4: マネー現代|大量のチャット、どう対応する?「テレワーク」超効率コミュニケーション法
*5: THE21オンライン|メールに時間がかかる社員に必要な、やり取りを「1往復半」で終わらせる意識
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。