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趣味を学びに! 「洋楽×英語学習」3つのメリットと秘伝の勉強術

趣味を学びに! 洋楽×英語学習の3つのメリットと秘伝の勉強術

「洋楽が好きでよく聞いているけれど、英語学習に効果はある?」
「英語の歌を使った効果的な勉強法が知りたい」

そうお考えの方はいませんか。

音楽ファンで、洋楽もよく聞いている。せっかくだから英語の勉強につなげたいけれど、具体的に何をすればいいかわからない。そんな英語学習者は多いはず。どうすれば趣味の音楽を英語学習に活かせるのでしょうか? 

そんなお悩みを解消すべく、時短型英語ジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」でトレーナーとして活躍する “英語の専門家” 長束啓樹さんにお話をうかがいました。



洋楽は英語学習に効果があるか

みなさんは洋楽が好きですか? 

ポップス、ヒップ・ホップ、ロック、ラップ、R&B、ジャズ、パンク、ヘビーメタル、ブルース、ゴスペル、カントリー、ソウル、ファンク......。アメリカやイギリスをはじめ、英語圏の音楽に関心のある人は多いですよね。お気に入りのアーティストの作品でなくても、テレビや映画で使われていて、メロディーが耳に残っている。そんな歌もあるでしょう。

日常のなかに根づいている「洋楽」。せっかくなので英語学習にも活用したいところです。そもそも、洋楽は英語上達に効果があるのでしょうか。ケース・ウェスタン・リザーブ大学の白井恭弘教授は、第二言語習得研究の知見から「洋楽は英語学習に効果がある」と語ります。具体的にどんな学習効果があるのでしょう? 英語学習における洋楽のメリットはこちら。

  1. リスニング力の向上
  2. 語彙の増強
  3. 興味づけと習慣化のしやすさ

1つずつ説明しましょう。

趣味を学びに! 洋楽×英語学習の3つのメリットと秘伝の勉強術1

洋楽のメリット1「リスニング力が伸びる」

1つめのメリットは、リスニング力の向上。リスニングのプロセスは「音声知覚」(耳から入った音声を単語として認識)→「理解」(語彙や文法知識、背景知識などをもとに意味内容を理解) の2つ。まずは英語の音をキャッチできなければリスニングは始まりません。

音声知覚では、個々の単語の発音、さらには音声変化の知識が必要。たとえば「アッポー」は “apple” の音だとわかるだけでなく、「アナッポー」は “an apple” という2語からなる音だと気づく必要があります。

こうした音声変化のルールは、学校であまり学ばないので、日本人英語学習者に欠けている部分。意識して補う必要があると、白井教授は語ります。

日本人はだいたいにおいて、文字中心の学習をしてきているので、英語の音声がナチュラルスピードで話されたときには、文字とはかなり変わるということを、意識する必要がある

(引用先:白井恭弘(2013),『英語はもっと科学的に学習しよう SLA(第二言語習得論)からみた効果的学習法とは』, 中経出版. ※太字は筆者が施した)

白井教授は自身の過去を振り返り、子どもの頃に洋楽を聞いていたことが英語学習に大きく貢献したと述べていますが、それは洋楽のおかげで英語の音声変化が頭に入っていたから。”Did you”がディジューに、”better”がベラーになるような変化が、洋楽を聞くことで頭に入っていたので、生の英語の聞き取りにもすぐに慣れたのだそう。

みなさんも思い当たる節があるはず。たとえば「アナと雪の女王」の主題歌を思い出してください。”Let It Go”が「レリゴー」に聞こえませんか? さらにビートルズの代表曲のひとつ、”Let It Be”も「レリビー」に聞こえますよね。

これは「ら行化」(音声学での呼称は「弾き音化」)の法則によるもの。/t/や/d/の音が母音に挟まれると日本語の「らりるれろ」の発音に近い音になる、というルールです。

英語では、スペル通りに発音されない音がたくさんあります。洋楽は、このような音声変化を学ぶ格好の素材。ぜひ活用して、英語の音の変化に慣れていきましょう。

リスニング学習効果を高める洋楽の勉強法

洋楽でさらにリスニング力を高めるコツはあるのでしょうか。白井教授は、学習効果を高めるために、音声変化の知識を一度体系的に勉強してから洋楽を聞いたり歌ったりすることをすすめています。

ある程度予測できる音声変化の法則を、さっと学習してから、聞き取りや発音練習をするとよいでしょう。(中略)英語の歌を歌うことも有効です。カラオケでは英語の歌を歌うようにしましょう。

(引用先:同上 ※太字は筆者が施した)

お気に入りの英語の歌を聞きながら、歌詞カード片手にどんな音声変化があるか探してみる。見つけた音声変化を声に出し、自分でも歌ってみる。好きな曲なら、きっと楽しく進められるはずです。

さらに効果的なのが「ディクテーション」。英語音声を聞いて書き取る学習法で、スクリプトのある音声教材さえあれば手軽にできます。簡単に歌詞が手に入り、音声変化も顕著な洋楽は、ディクテーションの素材にぴったり。

ディクテーションで書けないところは、音が聞き取れていないところ。自分が認識していた発音と実際のネイティブの発音の違いに気づけるので、音声変化に慣れるのに最適です。負担にならない範囲で、歌詞の書き取りにも挑戦できるといいですね

音声変化の法則を学び、歌詞のなかで探し、英語の音の変化を再現して歌う。ただ聞くだけでなく音声変化に着目することで、洋楽の学習効果が高まり、大幅なリスニング力アップが期待できます。

趣味を学びに! 洋楽×英語学習の3つのメリットと秘伝の勉強術3

洋楽のメリット2「語彙が増え、定着する」

2つめのメリットは、語彙の増強。洋楽を楽しむうえで、歌詞の理解は欠かせません。歌にどんな気持ちが込められているのか、どんなシーンを描いた曲なのか......きちんと理解することで音楽がより楽しめるのは、みなさんも実感があるはず。好きな英語の歌の歌詞を調べたことがある方も多いのでは?

洋楽は、単語を学ぶのにぴったり。歌詞カードやWebの検索サービスで歌詞のなかの単語を簡単に調べられますし、音楽は耳から楽しむものなので、普段の学習ではないがしろにしがちな正確な音とともに単語を学べます。さらに曲調と重ね合わせて語のイメージを想起しやすい、前後の歌詞を見るだけで語の実際の使い方がわかる、というよさも。そのため新出単語だけでなく、既出単語の強化にも効果的です。

小樽商科大学の小林敏彦教授は、洋楽は英語表現の内在化に効果があると語ります。

誰でも歌の一節を口ずさむことがあるように、歌詞は記憶の中に留まり、何かの機会に想起されることがある。Brown&Helgensen(1986,p.8)は、洋楽が長く学習者の記憶に保持される利点を紹介している

(引用先:小林敏彦(2003),『洋楽を活用したリスニング活動』, 小樽商科大学人文研究. ※太字は筆者が施した)

耳に残るメロディーとともに語やフレーズに触れられるため、表現の内在化が進み、定着しやすいのです。特に、好きな曲は何度も聞くものですし、サビには同じ単語が繰り返し登場するので、反復学習にも。意味を思い浮かべながら自分でも歌えるようになれば、単語をより自分のものにすることができますね。

一般的な英単語帳やテキストではカバーしていない語彙を学べるのもポイント。恋愛や友情について歌った曲には、仲間内で使うカジュアルなスラングが多く見られます。また、ある特定のコミュニティから生まれた音楽には、シンガーが属する社会集団のなかで独自に発達したスラングがたくさん登場します。

たとえば、アフリカン・アメリカンのあいだで発展を遂げたブラック・ミュージック。ヒップ・ホップにR&B、ソウルやジャズなどを生み、ポップスやロックなどの多くのポピュラー音楽の源泉となった音楽だとされていますが、その歌詞にはアフリカン・アメリカン特有の表現がたくさん使われています。

日本で版を重ねている「アフリカン・アメリカン スラング辞典」の著者がヒップ・ホップやR&Bの訳詞家であるように、洋楽の歌詞とスラングは切っても切れない関係にあります。

普段目にする機会の少ないスラングを学べ、英語表現の定着が図れる。洋楽にはそんなメリットも期待できるのです。

洋楽のメリット3「楽しめ、続けやすい」

3つめのメリットは「興味づけ」と「習慣化のしやすさ」。前出の白井教授は、最大限の効果を引き出す教材の4条件のなかで「おもしろく、興味をもてる」「続けることが容易」という2点を挙げています。

まず、好きな楽曲を聞いたり歌ったりすることは、動機づけにつながります。

自分の興味分野だと、動機づけにつながります。つまらないことを聞くよりも、面白いことを聞いたほうがいいに決まっています。

(引用先:同上 ※太字は筆者が施した)

語学学習はつらいものだから仕方ない。そう我慢してつまらない内容の音源ばかりを聞き続けるより、時には好きな英語の歌を取り入れて楽しく学習を進めたほうがはるかに効果的です。

しかし、モチベーションだけでは学習は長続きしないもの。長期的に学習を続けるには、習慣化が大切になります。行動科学マネジメントの日本での第一人者・石田淳氏によると、私たちが物事を続けられない理由はこの2つ。

  1. やり方がわからない
  2. やり方はわかっているが、継続の仕方がわからない

しかし、洋楽なら2つともOK。音楽を聞くだけなら普段当たり前のようにやっていることなので、やり方は体に染みついています。継続の仕方も、無理して学ぶ必要はありません。もともと好きなアーティストの曲は、日々繰り返し聴いていますよね。

いままで挑戦したことのない洋楽の「歌詞チェック」や「音声変化チェック」、「ディクテーション」を習慣化するときも、既存の習慣が助けになります。学習の習慣化において一番難しいのが、一から新たに始めること。そのため既存の習慣に紐づけて、新習慣をつくると成功しやすいのです。

たとえば、普段、通勤電車のなかで洋楽を聴いている人の場合。「電車のなかで音楽を聴く」という既存の習慣に、「スマートフォンを使って歌詞を調べる」という新たな習慣を足せばいいだけ。一から新たに習慣をつくるより、続けやすいのは明らかですよね。

すでに日常の一部になっている音楽の時間に英語学習の要素を加えることで、無理なく楽しみながら勉強を継続することができるのです。

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洋楽を使った無料英語学習ツール「リリックストレーニング」

英語学習に効果的な洋楽。より学習効果を高めるために、最適な学習法はあるのでしょうか。第二言語習得に詳しい長束さんがすすめるのは、Webツール「LyricsTraining(リリックストレーニング)」を使って学ぶこと。

聞こえてきた英語音声を書き取る学習法「ディクテーション」が効果的だとは知りながらも、毎回ノートとペンを用意して歌詞を書き取るのはハードルが高いですよね。一方、「LyricsTraining」は、アーティストの楽曲とミュージックビデオを楽しみながら、ディクテーションや穴埋めクイズができるという優れもの。無料で使え、さまざまな英語学習者のレベルに対応しています。

そんな洋楽を使った英語学習にぴったりな「LyricsTraining」を解説した約5分間の動画がありますので、ぜひご覧ください!



英語のプロトレーナー・長束さんによる解説で、「大好きな洋楽を英語学習に活用したい」という願いが叶うはず。

YouTube「時吉秀弥のイングリッシュカンパニーch」では、ほかにも英語学習中のみなさんを応援するためのお役立ちコンテンツをたくさんご用意しています。ぜひチャンネル登録をお願いします!

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洋楽ファンのみなさん! 趣味の時間を英語の学習につなげることで、さまざまな効果が期待できますよ。大好きな音楽とともに、楽しみながら英語を学んでみませんか?



参考資料
白井恭弘(2013),『英語はもっと科学的に学習しよう SLA(第二言語習得論)からみた効果的学習法とは』, 中経出版.
石田淳(2013),『人生を変える行動科学セルフマネジメント―自分を変化させるたったひとつの方法』, 大和書房.
小林敏彦(2003),『洋楽を活用したリスニング活動』, 小樽商科大学人文研究.
泉山真奈美(2007),『アフリカン・アメリカン スラング辞典』, 研究社.
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