単語や文法がわかっても英文をスラスラ理解できない原因。◯◯も吸収すべし!

スキーマの活用法01

英文を読んだり聞いたりするときに「語彙や文法は難しくないはずなのに、文全体の意味が理解しづらい」と思ったことはありませんか?

じつは、背景知識の差が理解度に大きく関わっているのです。今回は、背景知識が英文理解を有利にする根拠と、背景知識を活かすための重要なポイントをご紹介しましょう。

背景知識の仕組み

「自分がよく知っている話題だったから、語彙が難しくてもなんとか理解できた」という経験をおもちの方も多いのではないでしょうか。

たとえば、ファーストフード店で注文する場面を想像してみてください。「注文を言う」→「『持ち帰り』か『店内で食べるか』を答える」→「お金を払う」→「商品を受け取る」という決まった会話の流れがありますよね。この流れを知っていたら、多少知らない表現が出てきても、相手が何を尋ねているか予測しやすいはず。それは、ファーストフード店で注文する流れを背景知識としてもっているからです。

逆に、なじみの薄い話題だと、簡単な語彙が使われているにもかかわらず要旨が理解しにくいこともあります。たとえばジョーク。英語にはさまざまなジョークがありますが、文化的背景を知らないと、どこがおもしろいのかわかりにくいもの。以下のジョークを見てみましょう。

Why does Britain like tea so much? Because tea leaves.

直訳すると、「どうしてイギリスは紅茶が大好きなのか。なぜなら紅茶が去るからだ」――じつはこれ、イギリスを「紅茶」に見立てて、“leaves” に「去る、離脱する」と「お茶の葉っぱ」の両方の意味をかけた、イギリスのEU離脱を皮肉ったジョークなのです。単語 “leaves” の知識に加えて、「イギリスで代表的な飲み物は紅茶である」「イギリスがEUを離脱する」という2つの背景知識を知らないと、おもしろさはなかなかわからないでしょう。

背景知識が、なぜ英文理解の助けになるのか――それは、私たちが過去の経験の積み重ねで形成された知識の集まりをもとに物事を認識しているためです。その知識の集まりを「スキーマ」と呼びます。私たちが読んだり聞いたりするときには、関連するスキーマを自然と利用しているのです。

スキーマには以下の2種類があります。

コンテンツスキーマ:テキストの表題や、述べられた内容に基づくスキーマ
(例)アメリカの文化、在宅勤務の利点欠点など
フォーマルスキーマ:テキストの構造、形式に基づくスキーマ
(例)物語文、新聞記事、レシピ、マニュアル、ビジネスメールなど

コンテンツスキーマがあることで、言葉の知識だけでは理解できない内容もスムーズに理解することができます。たとえば、アメリカに興味のある人のほうが、そうでない人に比べて、アメリカの文化に関する文章は理解しやすいでしょう。

一方、フォーマルスキーマがあると、次にどんな展開が来るかの予測がしやすくなります。なぜなら、論理的な文章の場合、書式によって一般的に決まった文章構成がなされるから。

英文を理解する際は、この2種類のスキーマをもつことを意識しましょう。

スキーマの活用法02

背景知識を活かすために重要なこと

背景知識を活かしてさらに英語を理解していくには、重要なポイントがあります。それは、「同じ分野の英文を大量にインプットすること」です。

自分が興味をもてる分野があれば、その分野に関連する英文を活用してみるのもひとつの手段。ケース・ウェスタン・リザーブ大学の白井恭弘教授は、「動機づけにつながる」「内容理解につながりやすい」「単語の習得が進む」の3つの理由から、興味のある分野の英文に徹底的に触れることをすすめています。

たしかに、つまらないものよりも、おもしろいと思う分野のほうが、英文に触れるハードルが下がりますよね。また、わからない語彙や表現があっても、すでにある知識とひもづけることで、推測しながら理解することができるでしょう。さらに、特定の分野の単語に繰り返し触れることで、自然とその意味や用法を身につけることができます。

仮に、TOEICなどの試験対策でなじみの薄い英文に触れなければならないとしても、考え方は同じ。ビジネスで使われるような書式に多く触れてみたり、知識として欠けている分野の英文をウェブで読んだり聞いたりすることもできますね

前出の白井教授は、「英語をすべて日本語に訳せなければならない」という固定観念を捨てて、7、8割程度理解できる英文を選び、繰り返しインプットすることをすすめています。そうすることで、その分野の言葉の知識だけでなく、文章をすばやく正確に理解するスキルや、背景知識からわからない表現を推測する力も身につけることができるのだそうです。

背景知識を活かすための学習例

2020年現在は「新型コロナウイルス」関連のニュースが世界的に連日報道されています。ある意味、みなさんがすでに多くの背景知識をもったトピックだと言えるでしょう。その背景知識を使って、海外メディアの日本のウイルス対策に対する報じ方、海外の感染症対策の現状なども英語で理解できると、英語力の向上や視野拡大にもつながっていきそうですね。

以下の約10分の動画では、時短型英語ジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」でトレーナーとして活躍する “英語の専門家” 中馬剛さんが、新型コロナウイルス関連のニュースの必須単語を8つ紹介しています。これらを知ると、海外で報道されている新型コロナウイルスのニュースをより深く理解しやすくなりますよ。ぜひ動画で意味と使い方を確認してみてくださいね。

  • 特定の話題の必須単語を知るメリット
  • self-quarantine
  • test positive/ negative
  • close contact (person)
  • case(s)
  • infection
  • contagious
  • state-of-emergency declaration
  • work from home

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英文を効率よく理解するためには、背景知識が強力な武器になります。言葉の知識と背景知識をうまく統合させることで、文全体の趣旨をすばやく正確につかめるようになるでしょう!

監修:StudyHacker ENGLISH COMPANY

(参考)
及川賢(2014),「文章理解における背景知識の重要性」, 教科研究, Vol.123, pp.2-4.
清水研明(1994),「スキーマ理論と英語教育」, 川崎医療福祉学会誌, Vol.4, No.2, pp.15-20.
JACET教育問題研究会(2017), 『行動志向の英語科教育の基礎と実践: 教師は成長する』, 三修社.
白井恭弘(2013),『英語はもっと科学的に学習しよう SLA(第二言語習得論)からみた効果的学習法とは』, 中経出版.
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