前回『ノッティングヒルの恋人』ではイギリス・ロンドンで繰り広げられる身分違いの恋物語で英語をご紹介しました。
“女優”になった気分でジュリア・ロバーツのセリフをシャドーイングできましたか? 今回お届けするのは華やかなファッション業界の苛酷な裏側を描いた2006年のアメリカ映画。この作品を観てファッション業界に憧れた女子も少なくないのでは?

ここで今一度、本編に入る前に「映画で学ぶ英会話」勉強法を確認しましょう。

1. 日本語字幕をヒントになんと言っているのか “意識して聞き取る”
2. 英語字幕で答え合わせ
→ここでは記事内に掲載されているスクリプトを参考にしてみて
3. 音読
→自分のペースで!
4. オーバーラッピング
→“スクリプトを見ながら” 文字と音の結び付きを意識しましょう
5. シャドーイング
→“スクリプトを見ないで” 直前に耳から入ってきた音をそのまま口から出すイメージで
6. 暗唱
→実際に使う場面をイメージしながら暗唱してみましょう。

それでは、勉強方法の復習もできたところで、本日の映画を見ていきましょう。

『プラダを着た悪魔』(1)

ニューヨーク・マンハッタンを舞台にした、言わずと知れたオシャレ映画。ケイティ・タンストール歌うSuddenly I seeにのせた、大都会で働く女性たちの朝の風景に胸躍るのはわたしだけではないはず。
「恋に仕事に頑張るあなたの物語」と称されたこの作品は、世界中のワーキングガールの心を瞬く間につかみ、一時は社会現象にもなる人気を見せました。

アン・ハサウェイ演じる主人公アンディは、名門大学を卒業したのちジャーナリストになるという夢を追い求めてニューヨークへやってきます。ジャーナリスト志望の彼女がイライアス=クラーク出版で案内された面接先は、なんとファッション誌。エミリー・ブラント演じる、モードなファッションに全身を包んだ先輩秘書エミリー(どちらも同じ名前ですね)は不格好なアンディを目の当たりにし、しらっと嫌味を言ってのけます。

さて、今回シャドーイングに使いたいのは、そんな対照的なふたりが冒頭で繰り広げる編集室でのシーンです。(本編0:03:25~0:04:35)
まずは日本語字幕で観てみましょう。日本語をヒントに英語でなんと言っているのか“意識して”聞き取ってみてください。
前回に比べて長い上に早口ですが、頑張って!

Andy: I have an appointment with Emily Charlton?
Emily: Andrea Sachs?
Andy: Yes.
Emily: Great. Human Resources certainly has an odd sense of humor. Follow me.

Emily: Okay, so I was Miranda’s second assistant. But her first assistant recently got promoted, and so now I’m the first.
Andy: Oh, and you’re replacing yourself.
Emily: Well, I am trying. Miranda sacked the last two girls after only a few weeks. We need to find someone who can survive here. Do you understand?
Andy: Yeah. Of course. Who’s Miranda?
Emily: Oh, my God. I will pretend you did not just ask me that. She’s the editor in chief of Runway. Not to mention, a legend. You work a year for her, and you can get a job at any magazine you want. A million girls would kill for this job.
Andy: It sounds like a great opportunity. I’d love to be considered.
Emily: Andrea, Runway is a fashion magazine so an interest in fashion is crucial.
Andy: What makes you think I’m not interested in fashion?

この言葉を遮るように1本の着信が入り、編集部は戦場状態となってしまいます。
アンディは無事面接にたどり着けるのでしょうか?

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Vocabulary check

・Human Resources「人事部」
・sense of humor「ユーモアのセンス」
・get promoted「昇進する」
・sack「クビにする」
・not to mention「言うまでもなく」
・would love to V「Vしたいと思う」(would like to Vの強意)

<訳>
アンディ:面接に来ました エミリー・チャールトンは?
エミリー:アンドレア・サックス? 人事部の悪い冗談かしら ついてきて

エミリー:ミランダの第1アシスタントが昇進し 私が第2から第1に
アンディ:それで後任を?
エミリー:そう ミランダは2人ともクビにしたの 生き残れる人が必要よ
アンディ:はい ミランダって?
エミリー:ウソでしょ 本気で聞いてるの? 彼女は“ランウェイ”の編集長で伝説的存在よ ここで1年働けばどこでも通用する 何百万人もの憧れの仕事
アンディ:すごい ぜひ採用されたいわ
エミリー:アンドレア “ランウェイ”は ファッション誌よ ファッションに興味がなくては
アンディ:私が興味ないと思う?

Phrases check

第1回目でご紹介したように、英会話(=output)に挑む前に、まずは様々な表現や言い回しを覚える必要があります。心ときめく素敵なフレーズに出会ったら、片っ端から覚えていきましょう。

・I will pretend (that) you did not just ask me that. 「聞かなかったことにするわ」
-that(ここでは省略)以下のように振る舞う

・A million girls would kill for this job. 「この仕事のためなら100万人の女の子たちはなんでもするでしょうね。」
-kill for A 「Aのために殺す=Aのためならなんでもする」
この映画を通して聞かれる、キーワードとも言えるこのフレーズは(実際に使うかどうかは別としても)ぜひ覚えたいところ。

・What makes you think I’m not interested in fashion? 「なぜ私がファッションに興味がないと思ったの?」
-make O V 「OにVさせる」
→What makes you think -? 「なぜ -と思ったの?」
こちらは普段から頻繁に使われるフレーズではないでしょうか。Whyを使わず「なぜ?」を表す語法のひとつとして覚えておきましょう。

Sound Changes

日本人が英語の音を聞き取れないという大半の理由は、文字から想定される音と実際に発話される音にギャップがあるためです。
例えば、大人気ディズニー映画『アナと雪の女王』のテーマソング。観ていない方でも、あの有名なサビは歌えるのではないでしょうか? “Let it go.” はその文字だけ見れば「レットイットゴー」と読めますが、実際には「レリゴー」と歌われていますよね。ここで何が起こっているのでしょうか? 母音に挟まれた[t]や[d]の音は日本語のら行に近い音になります。(言語学的には“弾き音化”)

そのような音声変化はネイティブの気まぐれで起こっているわけではなく、一定のルールに基づいて起こっています。ルールを学び、正しく発音できる音を増やしていけば、聞き取れる音も格段に増えていきます。一石二鳥ですね。

では、単語とフレーズを確認したところで、ふたりのセリフを聞きながらスクリプトを見てみましょう。

Andy: I have an appointment with Emily Charlton?
Emily: Andrea Sachs?
Andy: Yes.
Emily: Great. Human Resources certainly has an odd sense of humor. Follow me.

Emily: Okay, so I was Miranda’s second assistant. But her first assistant recently got promoted, and so now I’m the first.
Andy: Oh, and you’re replacing yourself.
Emily: Well, I am trying. Miranda sacked the last two girls after only a few weeks. We need to find someone who can survive here. Do you understand?
Andy: Yeah. Of course. Who’s Miranda?
Emily: Oh, my God. I will pretend you did not just ask me that. She’s the editor in chief of Runway. Not to mention, a legend. You work a year for her, and you can get a job at any magazine you want. A million girls would kill for this job.
Andy: It sounds like a great opportunity. I’d love to be considered.
Emily: Andrea, Runway is a fashion magazine, so an interest in fashion is crucial.
Andy: What makes you think I’m not interested in fashion?

さて、文字を読んであなたが想定した音と、彼女たちが発した音は同じでしたか?
実はこの文章の中で、こんな音声変化が起こっていたのです。

Andy: I have an appointment with Emily Charlton?
Emily: Andrea Sachs?
Andy: Yes.
Emily: Great. Human Resources certainly has an odd sense of humor. Follow me.

Emily: Okay, so I was Miranda’s second assistant. But her first assistant recently got promoted, and so now I’m the first.
Andy: Oh, and you’re replacing yourself.
Emily: Well, I am trying. Miranda sacked the last two girls after only a few weeks. We need to find someone who can survive here. Do you understand?
Andy: Yeah. Of course. Who’s Miranda?
Emily: Oh, my God. I will pretend you did not just ask me that. She’s the editor in chief of Runway. Not to mention, a legend. You work a year for her, and you can get a job at any magazine you want. A million girls would kill for this job.
Andy: It sounds like a great opportunity. I’d love to be considered.
Emily: Andrea, Runway is a fashion magazine so an interest in fashion is crucial.
Andy: What makes you think I‘m not interested in fashion?

 赤 :脱落
 緑 :連結
 黄 :弱形
  :同化
 水 :ら行化
 青 :発音注意

【脱落】あるべき音が発音されないこと
・appointment, certainly, recently
→【声門閉鎖音】喉の奥で「ン」と鳴らす、飲み込むような音。少し上級者向けの発音です。
・second ※nの後の[d]は脱落
・assistant, appointment ※語末の[t]は脱落
・and so, what makes ※次の単語の頭が子音のとき、[t][d]は脱落
・sacked the, need to ※似ている子音[t][d]が続くとき前の子音が脱落
here ※文中の[h]は脱落しやすい

【連結】音が繋がって発音されること
※単語の最後の子音と、次の単語の最初の母音がつなげて発音される
・have an appointment「ハヴァナポインメン」
・has an odd「ハザノッ」
・sense of「センソヴ」
・second assistant 「セカナスィsタン」※[t]が脱落するためnとoがつながり、このように発音される
・Well, I「ウェライ」
・girls after「gəːrlザフタ」※【発音tips】参照
・work a「ワーカ」
・like a「ライカ」
・is a「イザ」
・interest in「インチョラsティン」
・think I’m「ティンカイm」

【同化】
※連結が起こったうえで、その音が別の音に変化すること
・makes you「メイクシュー」

【ら行化】
※母音に挟まれた[t]や[d]の音は日本語のら行に近い音になる
・get a 「ゲラ」
・at any 「ァレニ」
・not interested in「ナリンチョラスティディン」

【弱形】
※文中の助動詞、代名詞、前置詞は弱形で発音される
・will:「ウィル」→「ウォ」
・to:「トゥー」→「トゥ」

【発音 tips】
・with:発音記号は[ð] 上下の歯に舌を挟んで、舌を震わせるように「ズー」と発音。日本語の「ズ」とならないよう注意 →「ウィð」
・Andrea:[dr]の音は思い切って「ヂョ」と発音。「ドレ」とはならないよう注意 → 「ァンヂョェァ」
・trying:↑の[dr]と同じように[tr]は「チョ」と発音。「トライン」ではなく → 「チョウァイン」
・girl:[ə]:『千と千尋の神隠し』に登場するカオナシが発する「ア、ア」という音がまさにこの発音です。短く「ァ」と言ってみましょう。

ここまで音声変化を確認できたら、もう一度二人のセリフを聞いてみましょう。
苦手な音声変化は、ぜひスクリプトを見ながらの“オーバーラッピング”にトライしてみて。

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Listening Hacker

Tips

今回ご紹介したシーンでは、いざシャドーイングをやろうにも、とにかく早口なエミリー・ブラントに泣かされているのではないでしょうか?そんなときはシャドーイングに取りかかる前に、音声変化を確認しながら、あなたのペースで“音読”を行いましょう。口が馴染んで来たらスクリプトを見ながら“オーバーラッピング” そして最後に“シャドーイング”がおすすめです。

まだまだ物語は始まったばかりです。「むずかしー!」なんて言わないで、一息付いたら次のシーンに挑戦してみましょう。全編通せる頃には、あなたも立派なニューヨーカーです。

次回はいよいよアンディと“悪魔”が出会います。
お楽しみに!