「毎日そつなく仕事はしているが、特に新しいアイデアは生まれてこない。意欲もだんだん低下してきている気がする」
――それはまさに、マンネリズム(手法が型にはまり、独創性や新鮮味がない)状態に突入しているのではないでしょうか。*1
このまま放置すれば、いずれ仕事に悪影響が及んでしまいます。なぜならば、それは脳が成長する機会を失っていることを意味するからです。
本記事では、なんでもルーティン化してしまう危険性について触れ、日々のルーティンに少しだけ変化を取り入れて、脳の活気を取り戻す3つの方法を紹介します。
ルーティン化は脳機能向上の敵!?
仕事でも日常でも、ルーティン化は大いに役立つ戦略です。たとえば毎回どうしよう、ああしようと考える必要がなく、意思決定の負担を減らせるからです。
また、決まった行動を繰り返すので助走の必要がなく、スムーズに集中できるのでとても効率的です。そのぶん緊張も減るので、ストレスの軽減にも役立つでしょう。
しかし、その一方で、ある専門家は次のように警鐘をならしています。
ドイツ発祥の脳活性化プログラム「ライフキネティック」を開発したホルスト・ルッツ氏によれば、「ルーティンは、脳機能の向上にとって最大の敵」。なぜならば、習慣化された手順で物事を進めてばかりいると、考える必要がほとんどなくなるからです。
脳の可塑性が発揮されるのは(単純に言えば脳の成長)、「慣れていない新しいことをするとき」だけだと同氏。「少なくとも週1回は脳に挑戦させる必要がある」と言います。*2
それなら日常に「小さな変化と新しさ」を取り入れ、脳を刺激する工夫をしてみてはいかがでしょう。このあと3つのヒントをご紹介します。
1. ワークスペースのカスタマイズ
「いつもの場所にアレがあって、コレがあるから、パッと取り出し使いやすい」――当然のことながら、いつものワークスペースには、そうした「いつものアレやコレ」が存在します。利便性においては大切なことです。
しかし、毎日同じワークスペースで仕事をしていると、新鮮な気持ちが生まれにくくなるという側面もあります。そんなときは、空間にちょっとした変化を加えるといいかもしれません。
たとえば環境心理学の研究では、観葉植物などの緑をワークスペースに取り入れると、リラックス効果が高まり、注意力も向上することが確認されています。*3
小さな鉢植えの植物なら、安価で手に入るはず。日によって置く場所を少しだけ変えてみると、先述の効果に加え、毎日脳が変化を感じてくれるかもしれません。
一方で、減らすこともワークスペースのカスタマイズになるのではないでしょうか。
たとえば、すでに処理済みの封書や書類、いまの作業とは関係のないものが視界に入ると、それまで目の前のタスクに集中していたのに、その案件のことが頭をよぎってしまいます。それだけでなく、作業スペースも奪っている可能性があります。
習慣形成コンサルタントの吉井雅之氏は、「過去の書類など今の仕事に関係ないものが目に入ると、仕事以外の雑念や情報に遮られてどうしても考えがまとまらなくなる」と言います。*4
それなら小さな植物をひとつ増やして、ひとつ不要なものを減らすだけでもだいぶ変わるはず。脳も小さな変化を察知してくれるでしょう。
2. あえて普段と違うツールを使う
仕事に使用するツールを変えるだけでも、マンネリ解消につながります。
たとえば普段はスマートフォンやパソコンのテキストエディターを使っているなら、視覚的にアイデアを整理できるホワイトボードアプリや、手書きメモを試してみるのも一案です。
手書きメモなら、図や絵、ロジックツリーといった視覚的な表現も自由に組み合わせられるので、アイデアを柔軟に展開しやすくなります。
たとえば以下は、手書きのロジックツリー(左)とマトリックス(右)の組み合わせです。
こちらは手書きの4M4E分析。罫線をまたいで矢印を書き込むのも自由自在です。
普段とは違うツールの活用が、脳を刺激して、新たな視点を生むきっかけになるかもしれません。
3. タスクの順番や方法を変えてみる
ルーティン化したタスクの進め方を意識的に変えるだけでも、マンネリ感を打破できます。
たとえば普段は午前中に行なっているタスクを、午後に移してみるのです。そのとき感じる体調や環境の違い(日の光や音など)に脳が反応し、新鮮さを感じて活気を取り戻してくれるかもしれません。それが合わなければまた戻せばいいだけ。いつもの進め方がむしろ新鮮に感じてしまうでしょう。
また、前項の内容にも通じますが、手書きでタスク管理をしていた人が、タスク管理アプリ(たとえば TickTick や Todoist など)を使うなどして、方法を変えてみるのもひとつです。
たとえ一種類でも、アプリの使い方を覚えるには、さまざまな動きを把握する必要があるので、脳にとってはいくつもの挑戦です。その成長に大きく貢献するでしょう。
逆に、アプリを駆使していた人が、手書きを取り入れても新鮮な感覚を味わえるはずです。アプリのような機能はないものの、独自のアイデアを自由自在に盛り込めるので、アイデア創出の助けになるかもしれません。
たとえば下の画像は、所要時間が一目で感覚的にわかる手書きの「スキマ時間用リスト」です。
タスクの順番、あるいはタスク管理のための方法を変えてみるだけで、普段とはガラリと違ってくるはず。脳も新たな挑戦を楽しんでくれるのでは?
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今回は、ホルスト・ルッツ氏が「ルーティンは、脳機能の向上にとって最大の敵」と述べた事実をふまえ、毎日の仕事にちょっとした「新しい体験」を取り入れるヒントを3つお伝えしました。ぜひ、ささやかながら新しい体験を始めてみてください。
*1: コトバンク|マンネリズム
*2: ダイヤモンド・オンライン|ルーティンは、脳機能の向上にとって最大の敵
*3:ScienceDirect|Benefits of indoor plants on attention capacity in an office setting
*4: 東洋経済オンライン|「デスクが汚い人」は仕事ができるか、できないか
Shinya
大学では経済学を専攻。集中力があり、長時間、長期間にわたって勉強し続けることが得意。現在は、資格試験に向けて効率的な勉強法の情報を収集中。心理学にも関心があり、コミュニケーション力の向上を目指してさまざまなメソッドを学び、実践している。