
面接で、商談で、プレゼンの場で——初対面の相手に「なぜか自分のよさが伝わらない」「緊張しすぎて本来のパフォーマンスが出せない」と悩んでいませんか?
第一印象をよくするコツは、何かを「足す」ことではありません。余計なものを「捨てる」ことです。
今回は、第一印象で損をしないために「捨ててみる価値がある3つのもの」を解説します。
1. 「完璧に話そうという執着」を捨てろ
完璧を目指すことは素晴らしい。しかし、面接や商談の場で「間違えてはいけない」「完璧に話さなければ」という思いが強すぎると、かえって印象を悪くします。
「完璧に話そう」という執着が強すぎると、こんな問題が生じます。
・早口になる
・目が合わなくなる
・声が小さくなる
・表情が硬くなる
アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが提唱した「メラビアンの法則」をご存じでしょうか。
この法則によれば、言葉と態度に矛盾がある時、視覚情報(表情や姿勢)が55%、聴覚情報(声のトーン)が38%、言語情報(話の内容)が7%の割合で印象に影響します*1。
つまり、内容の正確性よりも、堂々とした態度や明るい表情の方が、はるかに印象に影響するのです。
実際、完璧主義が初回面接での印象形成に悪影響を与えることが研究で示されています*2。完璧主義的なコミュニケーションは、攻撃的で正確すぎる話し方になりがちで、相手との関係構築を阻害してしまうのです*3。
【改善策】
多少詰まってもいい。一度言葉に詰まってから、ゆっくりと目を見て話し直す方が、誠実さと自信が伝わります。
完璧な流暢さより、堂々とした態度を意識しましょう。「完璧に話そう」というプレッシャーを手放すだけで、表情が柔らかくなり、声に余裕が生まれます。
完璧主義を捨てることで、自然体の自分が引き出され、相手に誠実で信頼できる印象を与えることができます。

2. 「謙遜」を捨てろ
「いえいえ、大したことはありません」「まだまだです」「たまたまです」
日本文化で大切にされてきた謙遜という美徳。しかし、ビジネスシーンでは逆効果になることがあります。
ほめられても否定する謙遜は、自己評価の低さや自信のなさと受け取られるリスクがあるのです。実際、異文化間コミュニケーション研究では、集団主義的な文化では謙遜が奨励される一方、個人主義的な文化では自己PRが評価されることが示されています*4。
・謙遜する瞬間、無意識に目を逸らす
・姿勢が縮こまる
・自己評価の低さと受け取られる
・自信のなさを印象づける
このような非言語のサインが、せっかくの実績を台無しにしてしまうのです。
【改善策】
ほめられたら素直に「ありがとうございます」と受け止めましょう。その上で、「○○の経験が活きました」「チームのおかげです」と具体的な背景を添えるのです。
感謝を素直に受け取ると、自然と胸を張り、相手の目を見て話せるようになります。
謙遜を捨てて素直に感謝を受け取ることで、自信をもった堂々とした姿勢が自然と身につきます。

3. 「抽象的な言葉」を捨てろ
「頑張ります」「やる気があります」「努力します」
これらの言葉は自分の気持ちばかりで、具体性がゼロ。面接官は、あなたの気持ちではなく、あなたが企業にもたらす価値を知りたいのです。
・抽象的な言葉を並べている時、声に説得力がなくなる
・表情も曖昧になりがち
・相手が具体的にイメージできない
・「何ができる人なのか」が伝わらない
逆に、具体的な数字や実績を語る時は、自然と声に自信が宿り、相手の目をしっかり見て話せるようになります。
【改善策】
数字と固有名詞を使って、相手にとっての価値を語りましょう。
× 悪い例:「営業で頑張って成果を出しました」
○ よい例:「新規顧客開拓で月間20社にアプローチし、3ヶ月で5社との契約を獲得。四半期売上を前年比120%に伸ばしました」
具体的な実績を語る時、自然と声に自信が出て、相手の目をしっかり見られるようになります。
抽象的な言葉を捨てて具体的な実績を語ることで、声に説得力が生まれ、自信に満ちた印象を与えられます。
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第一印象をよくしようと思うと、つい「何かを足そう」と考えがちです。しかし、じつは「余計なものを捨てる」方が効果的なのです。
① 「完璧に話そうという執着」を捨てる
→ ほんの少しのミスよりも、自然体の表情と声が印象を左右する。
② 「謙遜」を捨てる
→ 過度な謙遜よりも、誠実さと自信が信頼を生む。
③ 「抽象的な言葉」を捨てる
→ 気持ちではなく、具体的な価値を伝えることで相手の心に届く。
「何を足すか」ではなく、「何を捨てるか」で第一印象は変わります。完璧・謙遜・抽象という "心の荷物" を手放したとき、あなたの声・表情・言葉は、もっと自由で伝わるものになるのです。
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*1 PubMed|Mehrabian, A., & Ferris, S. R. (1967). Inference of attitudes from nonverbal communication in two channels. Journal of Consulting Psychology, 31(3), 248-252.
*2 PubMed|Patient perfectionism and clinician impression formation during an initial interview
*3 ScienceDirect|The perfectionism social disconnection model: The mediating role of communication styles
*4 ScienceDirect|State of the art themes in cross-cultural communication research: A systematic and meta-analytic review
STUDY HACKER 編集部
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