「仕事中にどうしてもほかの考え事をしてしまう」「家で勉強をしようとしても何だか身が入らない」といった経験はありませんか? 思い当たる人は、不要な思考を手放せないでいるのかもしれません。
そんなときは「五感」をうまく使いましょう。五感の使い方次第で、高い集中力を発揮することができるのです。
今回ご紹介する対処法を知っていれば、きっとライバルに大きく差をつけることができるはず。すぐに実践できる方法ばかりなので、ぜひお試しください。
体と頭、集中力の関係
最初におすすめしたいのは、マインドフルネスです。日本マインドフルネス学会は、マインドフルネスを「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」と定義しています。マインドフルネスを通じて、過去の後悔や未来への不安のような集中力を削いでしまう思考を止めて、今この瞬間に集中することができるのです。
マインドフルネスのメソッドのひとつに、「レーズン・エクササイズ」というものがあります。簡単に説明すると、一粒のレーズンを、じっくり目で形をよく見て、鼻で臭いを感じて、舌や歯で触感を感じて、味に神経を集中させて、喉に流れていく感覚を感じるエクササイズです。
一粒のレーズンを通じて、感覚に意識を集中することで、今この瞬間に意識を集中するのです。これによって、不要な思考を止める効果が期待できます。
続いて、「視覚・嗅覚・聴覚・触覚・味覚」のそれぞれの観点から考えていきましょう。
“視覚” から集中するためには「かわいいものを1分間眺める」
大阪大学大学院で教授を務める入戸野宏氏によると、「かわいい」と感じるものを1分〜1分半ほど見つめたあとは集中力が高い状態になっているそうです。
「かわいい」と感じることは細部に注目する状態をつくり出す、つまり「集中力を高める要因になっている」と言えるのです。
(引用元:新R25|眺めていいのは1分半まで。「かわいいもの」を見て集中力をアップさせる方法があった)
たしかに、動物やキャラクターなどのかわいいものを見ていると、「もっとしっかり見たい」という気持ちになりますよね。この状態のまま作業に移ることが、集中して作業に取り組むことにつながるのです。
しかし、かわいいものをずっと見続けるのは逆効果。「SNS上の動物動画などを見ていたら、あっという間に時間が過ぎてしまった」という経験がある人も多いはず。いい状態のまま仕事に移るためには、あくまで1分〜1分半くらいで見るのをやめるのが効果的なのです。ペットや好きなキャラクターの画像を、あまり長時間見続けることのない待ち受け画面やロック画面に設定してみるのもよいかもしれませんね。
“嗅覚” から集中するためには「コーヒーの香りを楽しむ」
香りで集中力を上げるためには、コーヒーの香りをかぐのがおすすめです。コーヒーを眠気覚ましとして活用している人は多いと思いますが、これからはぜひ香りも楽しんでみてください。
杏林大学の名誉教授である古賀良彦氏は、コーヒーの香りには集中力の向上効果があると述べています。その効果の程度はコーヒー豆の種類によって異なり、集中力を高めるためにはマンデリンやサントスなどが特に有効なのだとか。
香りをより楽しむためには、インスタントコーヒーよりもドリップコーヒーがベターです。コーヒーショップでテイクアウトしたり、休憩時間にオフィスでコーヒーをいれたりして、ぜひコーヒーの香りを存分に楽しんでみてください。
“触覚” と “味覚” から集中するためには「ガムを噛む」
「集中力が切れてきた」と感じたら、ガムを噛んでみてください。
「噛む」という行為には、集中力に関係する前頭前野を活性化させる働きがあります。ほかの食べ物と比べて「咀嚼回数が圧倒的に多いガム」は、集中力を上げるためにはうってつけのお菓子なのです。また、アロマテラピーインストラクターの平川知子さんによると、ガムに含まれるメントールの成分には集中力を向上させる効果があるそうです。
つまり、ミント味のガムを噛むと、「噛むこと」と「メントール」のダブル効果によって、集中力を向上させることができます。コンビニに立ち寄った際、ぜひ一度試してみてください。
“聴覚” から集中するためには「カフェに移動してみる」
完全に無音の環境よりも、カフェのように少し騒がしい環境のほうが集中して作業に取り組めたという経験はありませんか? じつはこれ、科学的にも実証されているのです。
イリノイ大学アーバナシャンペーン校のラビ・メータ氏らは、騒音が創造的思考に及ぼす影響について実験を行ないました。被験者は、「完全な無音」「50デシベル(静かなオフィスに相当)」「70デシベル(カフェに相当)」「85デシベル(電車の中に相当)」の騒音レベルの部屋に無作為に分けられ、それぞれ創造的思考に関するテストを解きました。その成績を比較したところ、70デシベルの騒音レベルの下でテストを解いた被験者の成績が突出して高かったのです。
オーラル・ロバーツ大学で准教授を務めるデイビッド・バーカス氏は、これを「気が散った集中」と表現しています。静かすぎず、うるさすぎない環境が、通常の思考パターンにとらわれない状態を作り出したため、結果として集中力を高めたと分析しています。
また、バーカス氏によると、適度な騒音下で集中力を高める条件は、騒音そのものに気を取られないことだそう。周りの人が何を話しているかということを気にしてしまったり、周りから話しかけられたりすると、集中力は削がれてしまいます。自分に関係する仕事の話を周りでしているオフィスや無音の自宅よりも、カフェのほうが集中しやすい印象を受けるのは、騒音の大きさはもちろん、その内容が気になったり、話しかけられたりすることのない「優れた騒音」である点も関係しているのかもしれませんね。
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今回は、五感を使った集中力の上げ方をご紹介しました。どれもすぐに実践できる方法なので、ぜひ毎日の生活に取り入れてみてくださいね。
(参考)
日本マインドフルネス学会
東洋経済ONLINE|「仕事に集中できない人」が陥りがちな思考
AERA dot.|レーズンエクササイズって何? うつ病の心理療法「マインドフルネス」
新R25|眺めていいのは1分半まで。「かわいいもの」を見て集中力をアップさせる方法があった
全日本コーヒー協会|香りから生まれる、「癒し」と「集中力」。
NIKKEI STYLE|疲労回復、集中力UP 有効成分たっぷりハーブティー
東洋経済ONLINE|集中力が変わる!ミントの効力生かす具体策
ハーバード・ビジネス・レビュー|コーヒーショップでは集中できるのに、オフィスではなぜ気が散ってしまうのか
【ライタープロフィール】
梅野凌矢
東京大学工学部所属。鹿児島県立鶴丸高等学校出身。大学では人間の認知システムを中心に勉強中。大学の吹奏楽団体に所属していて、担当はホルン。趣味は音楽ゲーム、読書など。Perfumeがとても好き。