ストレスには柳のようにしなやかであれ、とはよく言われます。かたい木は強風に正面から張り合って折れる。でも柳は、枝をたわませて風を受け流す。
……と、ここまで読んで「はいはい、受け流せばいいんでしょ」と思いませんでしたか?
そのとおり。「受け流せばいい」なんて、誰でも聞いたことのある話です。柳のたとえにいたっては、AIでも出せるくらいありふれています。
でも、実際に受け流せていますか? こだわって、反発して、傷ついて、消耗していませんか。
「受け流せばいい」と知っていることと、受け流せることは、別の話です。
そこで今回は、心構えの話ではなく、具体的な「受け流しの技」を紹介します。
わかっているのに、受け流せない理由
仕事でミスをした。理不尽なクレームを受けた。順調だったプロジェクトが、急に方向転換した。
そんなとき、頭のどこかでは「受け流そう」と思っています。それでもできないのは、心が弱いからではありません。
受け流すには、じつは判断が要るからです。いまの自分はどれくらい参っているのか。休むのか、続けるのか。休むなら、何をするのか。
つまり私たちは、いちばん消耗している瞬間に、いちばん難しい判断をやらされているのです。難しくて当然です。

ここで、柳を思い出してください。柳は風が吹くたびに「どう受けようか」と考えているわけではありません。枝がしなるように、体のつくりで受け流しています。
人間も、風が来てから考えずにすむ仕組みなら、つくることができます。
なお、ここでいう「受け流す」とは、嫌な出来事を気にしないことではなく、そこで必要以上に消耗し続けないことです。気にするなと言われても、気になるものは気になる。でも、消耗を早めに止めることならできます。
ここからは、その仕組みを2つの技に分けて紹介します。
技1 いまの自分に、10秒で点をつける
ひとつめの技は、自分の状態に点をつけることです。
タスクの切り替えなど、仕事の区切りのタイミングで、10点満点(高いほど良好)の点数をつけます。かかる時間は10秒ほどです。
【採点の例】
- 快適さ 5点
- 集中力 4点

たったこれだけ? と思うかもしれません。でも、消耗は「まだ大丈夫」と思っているうちに進むものです。気づいたときには、受け流すどころではなくなっています。
その点、点をつければ、消耗が悪化する前に「いまの自分」に気づけます。
こうして自分の状態を観察して記録する方法は、心理学で「セルフモニタリング」と呼ばれます。記録するという行為そのものに、行動を変えやすくする働きがあることも知られています。*1
技2 「何点ならどう休むか」を先に決めておく
ふたつめの技は、点数ごとの回復行動を、先に表にしておくことです。たとえばこんな具合です。
- 4点以下なら→席でストレッチ
- 3点以下なら→手を洗いに行く
- 2点以下なら→5分間外を歩く
大事なのは、決めるタイミングです。
その場で決めると
「疲れた……。どうしよう。もう少し頑張るか」。結局なにもせず、消耗が続く。
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先に決めておくと
「3点か。決めたとおり、手を洗いに行こう」。考えずに、回復に移れる。
「○○になったら△△する」と先に決めておく形の計画は、心理学で「実行意図」と呼ばれます。このように具体的に決めておくことで、行動を実行しやすくできることが、研究で繰り返し示されてきました。*2
考えるのは、元気なとき。疲れたときは、決めたとおりに動くだけ。これが、その場の気合いに頼らない受け流し方です。
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柳がしなやかなのは、風が来てから考えないからです。受け流しやすさは、先に決めておく段取りでつくれます。まずは今日、仕事の区切りに10秒、点をつけるところから始めてみませんか。
よくある質問(FAQ)
Q. 「受け流そう」と心がけるだけでは、なぜうまくいかないのですか?
Q. 点をつける項目は、何を選べばいいですか?
Q. 対応表に入れる回復行動は、どんなものがいいですか?
*1: APA PsycNet|Korotitsch, W. J., & Nelson-Gray, R. O. (1999). An overview of self-monitoring research in assessment and treatment. Psychological Assessment, 11(4), 415–425.
*2: APA PsycNet|Gollwitzer, P. M. (1999). Implementation intentions: Strong effects of simple plans. American Psychologist, 54(7), 493–503.
STUDY HACKER 編集部
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