
「○○さんって本当に仕事ができるよね。でも、要領よすぎるから嫌う人もいるかもね」。同僚に褒められてうれしくなった次の瞬間のひとこと。褒めてもらえたはずなのに、なぜかもやもやする。
あるいは、「何でも相談してね」と言ってくれた同僚に打ち明けた悩みが、数日後には職場中に広まっていたり。露骨に意地悪をされるわけではないため、「気のせいかな」と自分を納得させようとします。
それでも会話が終わるたびに少しだけ気持ちが沈み、なぜか相手と会う日は身構えてしまう。仲のいい同僚だと思っていたのに、なぜこんなに疲れるのでしょうか。
こうした存在を指す「フレネミー(Frenemy)」という言葉を、最近SNSなどで見かける機会が増えました。友だち(Friend)と敵(Enemy)を組み合わせた言葉で、表面上は味方の顔をしながら、時に足を引っ張ってくる相手のことです。心当たりのある人にとって、この言葉の広まりは「あの疲れに名前があった」という発見でもあるはずです。
この記事では、職場に潜むフレネミーの見分け方と、精神をすり減らさずに付き合うための距離の取り方を紹介します。
職場のフレネミーはこれで見抜いて。共通する5つの特徴
この章でわかること 職場におけるフレネミーに共通する5つの特徴と、フレネミーを見極める実践的な方法です。
米ブリガム・ヤング大学が夫婦関係を対象に行なった研究では、良い面と悪い面が混在する「アンビバレント(両価的)」な関係が、心身のストレス反応を強める可能性が報告されています。*1
完全な味方でも完全な敵でもない、その中途半端さが、心身の負担につながりやすいと考えられているのです。*2
1. 情報のリーク(噂話)が習慣になっている
親密さをアピールするために秘密を打ち明けてくる一方で、こちらが話した内容も別の誰かに漏らしています。「あなたにだけ話すね」という前置きが多い相手ほど、情報を右から左へ流している可能性があるのです。
秘密の共有は親密さの証ではありません。その人にとっての情報のやり取りの一形態にすぎないのです。
2. 求めていない「アドバイス」でマウントをとる
善意の助言を装いながら、上下関係をつくって相手をコントロールしようとする行為です。頼んでもいないのに指摘やアドバイスが続く場合、それは支援ではなく優位性の誇示であることが多いでしょう。
「それ、こうした方がいいよ」が常態化し、自身の実績や立場を暗に誇示する言い回しを伴う場合は注意が必要です。

3. 距離の詰め方が異常に早い
知り合って間もないうちから、家庭の事情や悩みなど深いプライベートを聞き出そうとしてきます。
異動直後など、警戒心が薄れやすいタイミングを狙って急接近してくるケースも少なくありません。本来であれば時間をかけて築かれるはずの信頼関係が、不自然なスピードで進んでいると感じたら、一度立ち止まって様子を見てもよいでしょう。
4. 成功したときに過剰な反応を見せる
心理学の「自己評価維持モデル」(エイブラハム・テッサー氏、1988年提唱)は、心理的に近い相手ほど、その相手の成功が自分の評価を脅かすものとして感じられやすいという考え方です。*3
表面上は「おめでとう」と言いながら、その後の態度がよそよそしくなったり、成果をさりげなく小さく扱う発言が増えたりする場合、この心理が働いている可能性があります。
5. 態度の振れ幅が大きい
先週は快く仕事を手伝ってくれたのに、今週は同じような頼み事を素っ気なく断られる。そんな振れ幅の大きさに心当たりはありませんか。
「次に何が返ってくるかわからない」という不確実性こそが、フレネミーとの関係を最も疲れさせる正体です。
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精神をすり減らさないための意外な5つの対処法
この章でわかること フレネミーとの関わりで消耗しないための、心理学や対人支援の知見を参考にした5つの対処法です。
感情的に反応すればするほど、相手にとってはあなたが「反応しやすい標的」になってしまう恐れもあります。ここでは、より現実的な5つの戦略を紹介します。
1. グレー・ロック(灰色の石)戦法をとる
グレー・ロックとは、道端に転がる灰色の石のように、あえて反応を示さない「無害で退屈な存在」に徹して、相手の関心や攻撃の対象から外れる心理的な対処法です。
単調で反応の薄い態度を保つと、刺激的な反応を求めるフレネミーにとって面白みのない相手になり、関わりによる消耗を抑えやすくなります。
噂話を振られても「そうなんですね」と短く返すにとどめ、反応の材料を与えないことが効果的な防御になります。

2. 関係性を脳内でダウングレードする
相手を「友人」から「業務上の連絡相手」へ、意識的にラベルを貼り替えてみましょう。友人だからこそ抱いてしまう期待値を下げることで、裏切られたと感じる場面そのものを減らすことができます。
3. やりとりの確実性を自分でルール化する
重要なやりとりはできるだけメールやチャットの文面に残し、口頭でのあいまいな約束を減らしておくと、あとから振り回される場面そのものが減っていきます。
4. 心の拠り所を、別の場所に分散させる
本音を打ち明ける相手は、信頼できる同僚や社外の友人など、意図的に分散させておくことが心の安定につながります。
5. 自分の名前で語りかける「セルフ・ディスタンシング」
腹立たしい出来事を振り返るときに「私は」ではなく、自分の名前や「あなたは」といった三人称的な言葉で語りかけると、感情に飲み込まれにくくなることがミシガン大学の研究でわかっています。*4
動揺した直後に「私はムカついている」と考える代わりに、「〇〇(自分の名前)はまたイライラさせられているな」と捉えてみましょう。
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フレネミーは、特殊な悪人ではなく、誰の身近にも存在しうる相手です。大切なのは、相手を嫌いになることではなく、その性質を理解したうえで影響が及ぶ範囲を自分でコントロールすることです。
職場は仕事を進めるための場所であり、すべての人と深い友情を築かなければならない場所ではありません。今回紹介した視点を手がかりに、自分の心を守る距離感を無理なく見つけていってください。

よくある質問(FAQ)
Q. フレネミーと縁を切るべきですか?
Q. 自分がフレネミーになっていないか、どう確認すればよいですか?
Q. すべての両価的な同僚がフレネミーなのですか?
Q. グレー・ロック戦法を使うと、職場の人間関係が悪化しませんか?
*1: Birmingham, W. C., Uchino, B. N., Smith, T. W., Light, K. C., & Butner, J. (2015). It's Complicated: Marital Ambivalence on Ambulatory Blood Pressure and Daily Interpersonal Functioning. Annals of Behavioral Medicine, 49(5), 743–753. https://doi.org/10.1007/s12160-015-9709-0
*2: BYU News|Frenemies: not just for high school anymore
*3: Tesser, A. (1988). Toward a Self-Evaluation Maintenance Model of Social Behavior. In L. Berkowitz (Ed.), Advances in Experimental Social Psychology, 21, 181–227.
*4: Kross, E., Bruehlman-Senecal, E., Park, J., Burson, A., Dougherty, A., Shablack, H., Bremner, R., Moser, J., & Ayduk, O. (2014). Self-talk as a regulatory mechanism: How you do it matters. Journal of Personality and Social Psychology, 106(2), 304–324.
STUDY HACKER 編集部
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