ゴンチャが証明した「ブームに乗りながら、ブームに飲み込まれない」カテゴリー戦略【新人さんのためのマーケティング講座 Season7 vol.14】

ゴンチャがタピオカブーム後も成長し続けた理由——「タピオカ屋」ではなく「ティーカフェ」というカテゴリー戦略

📘 新人さんのためのマーケティング講座 Season7

Season6では「なぜこのブランドは選ばれ続けるのか」を事例で深掘りしました。
Season7では、より深く「なぜこの構造(仕組み)は崩れないのか」を解き明かしていきます。

まだ過去のSeasonを読んでいない方は、そちらからどうぞ。
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2018〜2019年のタピオカブームを覚えているでしょうか。「タピる」という言葉が流行語大賞にノミネートされ、駅前にはタピオカ店が乱立しました。そして2020年代に入ると、多くのブランドが跡形もなく消えました。

ゴンチャは消えませんでした。それどころか成長し続け、2026年1月現在で220店舗・年間来店客数約4,000万人。2019年末の57店舗から4倍近くに拡大しています。*1

「一発屋」で終わるブランドと、日常の定番に昇華するブランドの違いは何か——ゴンチャの戦略がその答えを教えてくれます。

「タピオカ屋」ではなく「ティーカフェ」——ブームの最中に仕掛けた主役の入れ替え

ゴンチャがほかのタピオカブームの犠牲者と根本的に異なるのは、「ブームに乗ったのではなく、ブームに乗っかられた」という立ち位置を一貫して守ったことです。

ゴンチャのブランドコンセプトは「タピオカ屋」ではなく「ティーカフェ」です。*2 タピオカはあくまで数あるトッピングのひとつであり、烏龍茶・アールグレイ・ジャスミン茶といった「ベースのお茶のクオリティ」こそが主役でした。

タピオカブームに乗じて短期利益を狙った新規参入者たちは、タピオカが「珍しくなくなった瞬間」に売る理由を失いました。しかしゴンチャは「上質なお茶を楽しめる場所」という価値を提供し続けていたため、タピオカブームが去っても顧客の来店理由が残りました

さらに決定的だったのが、2020年6月の立川グランデュオへの大型店出店です。*1 90席を備え、コンセントが使えるデスクワーク向きのカウンター席・会話に適したテーブル席を設けた「カフェとして過ごせる空間」をつくったことで、ゴンチャはストリートフードの位置づけを完全に脱却しました。

項目 ブーム時のタピオカ店 現在のゴンチャ
購入目的 インスタ映え・お祭り感・消費 日常の癒やし・リフレッシュ・習慣
主役の価値 「タピオカ」という珍しさ 「上質なお茶」という味・空間
顧客の行動 一度体験すれば満足 週に何度も自分好みにカスタムしてリピート
2026年の立ち位置 過去のトレンド スターバックスに対抗する「第2のカフェ」

カスタマイズ・U22割・アプリが若年層の生活動線に食い込む——ゴンチャの三位一体の日常インフラ化設計

カスタマイズ・U22割・アプリ——顧客の「生活動線」への組み込み

ゴンチャが「日常のインフラ」になれたもうひとつの理由が、徹底的な「生活への組み込み設計」です。

ゴンチャの最大の特徴であるカスタマイズシステム——氷の量・甘さ・トッピングを細かく選べる仕組みは、単なる利便性の提供ではありません。「自分だけの一杯をデザインした」という当事者意識が生まれることで、「またあの自分の組み合わせを飲みたい」というリピート動機が生まれます。*2 行動経済学で言う「イケア効果」——自分が関与したものに高い価値を感じる心理——がここで機能しています。

さらに2025年6月に導入した「ENJOY U22割」(6歳以上22歳以下対象の割引)と、同年5月開始の公式アプリ「My Gong cha」が若年層の日常に食い込む設計を完成させました。*1 アプリは開始3ヶ月で150万人、2026年1月現在260万人の会員を獲得。会員の10〜20代が中心で、「通学・通勤のついでに寄るゴンチャ」という習慣が生まれています。

「おしゃべり歓迎」という空間設計も重要です。スターバックスが「静かに仕事・読書をする場所」という文脈で定着したとすれば、ゴンチャは「友人とおしゃべりしながら過ごす場所」という別の文脈を占有しています。*1 同じ「カフェ」でも目的が異なるため、競合ではなく補完関係になる——これが「第2のサードプレイス」としての市場創出です。

打ち上げ花火からストーブへ——ゴンチャがブームを日常に変えた出口戦略と2028年400店舗へのビジョン

「打ち上げ花火」から「ストーブ」へ——ブームを日常に変える出口戦略

ゴンチャが教えてくれるのは、「ブームはいつか終わる」という当然の事実をあらかじめ織り込んで設計することの重要性です。

いま、あなたが手掛けているサービスが急成長しているとしたら、問うべきことがあります——その成長は「一時のトレンド」に依存していないでしょうか。ブームの熱狂が去った後、顧客の生活の「どの時間帯」に自分の商品が残り続けられるか、あらかじめ「出口戦略(日常化)」を設計しておく必要があります

ゴンチャが2019年のタピオカブームの最中から「私たちはタピオカ屋ではなく、ティーカフェだ」と言い続けたのは、この出口戦略の実践です。*2 ブームに乗りながらも、ブームが去った後の「日常の場所」を先につくっておく——2028年の400店舗・来店客数6,000万人というビジョンは、この設計の先にあります。*1

2026年のマーケティングは、打ち上げ花火を上げることではなく、その火を顧客の生活を温める「ストーブ」に変えることです。ゴンチャの赤のストローが2026年も街に立ち続けている理由は、まさにここにあります。

ゴンチャが証明したブームに飲み込まれないカテゴリー戦略——「ティーカフェ」という定義を守り続けた先の220店舗

 

【本記事のまとめ】

1. 「タピオカ屋」から「ティーカフェ」へ——ブームの最中に主役を入れ替えたリポジショニング
タピオカをトッピングひとつに格下げし、上質なお茶のクオリティを主役に据え続けた。2020年の立川大型店出店でストリートフードからカフェとしての滞在空間へと転換。ブームが去っても「また来る理由」が残る構造を先につくっておいた。

2. カスタマイズ・U22割・アプリ——三位一体の「生活動線への組み込み」設計
自分だけの一杯をデザインする当事者意識(イケア効果)がリピート動機を生む。ENJOY U22割とMy Gong chaアプリ(2026年1月現在260万人)で若年層の通学・通勤習慣に食い込む。「おしゃべり歓迎」という空間設計でスタバとは別の文脈を占有。

3. 「打ち上げ花火」から「ストーブ」へ——ブームを日常に変える出口戦略の設計
ブームの熱狂が去った後、顧客の生活のどの時間帯に残り続けられるかを先に設計すること。ゴンチャが「ティーカフェ」という定義を一貫して守り続けたことが、4倍の店舗拡大と2028年の400店舗・6,000万人というビジョンの土台になっている。

よくある質問(FAQ)

ゴンチャはスターバックスと競合しないのですか?

直接的な競合というより「補完」の関係に近いと言えます。スターバックスが「静かに仕事・読書・ひとり時間を過ごす場所」という文脈で定着しているのに対し、ゴンチャは「おしゃべり歓迎」という方針を明確に掲げ、友人や仲間との会話を楽しむ場所として差別化しています。コーヒーが苦手な層・お茶が好きな層・コーヒーチェーン以外の選択肢を求める層など、スタバとは異なる顧客層を取り込むことで、同じカフェ市場でも棲み分けが成立しています。

「ブームを日常に変える出口戦略」は、どんなビジネスにも使えますか?

使えます。重要なのは「ブームが去った後、顧客が使い続ける理由は何か」を先に定義することです。たとえばコロナ禍のオンライン習い事ブームの中で、「対面には戻れない忙しい人でも続けられる場所」という価値を先に定義したサービスは、ブーム終焉後も生き残りました。逆に「オンラインという珍しさ」だけを売りにしていたサービスは消えました。ゴンチャが「タピオカ」ではなく「ティーカフェ」を売りにしたように、「ブームが去った後も変わらない価値は何か」を先に言語化しておくことが出口戦略の核心です。

カスタマイズシステムは運営が複雑になりませんか?

なります。それがゴンチャのビジネスの難しさでもあります。甘さ・氷・トッピングの組み合わせが多いため、スタッフの教育コストと製造時間がかかります。しかしゴンチャはこれを「参入障壁」として逆手に取っています。複雑なカスタマイズシステムを維持できる品質管理・スタッフ教育・調達体制は、簡単には模倣できません。また2025年から推進しているオペレーションDXで効率化も進めており、顧客体験を維持しながら運営コストを下げる取り組みを続けています。

(参考)

*1|流通ニュース「ゴンチャ/顧客もスタッフもファン化、28年客数6000万人・400店舗体制へ」(2026年1月20日)。2026年1月末現在220店舗・年間来店客数2025年約4,000万人・2028年目標400店舗6,000万人・「My Gong cha」アプリ2026年1月現在260万人会員・ENJOY U22割2025年6月導入・「おしゃべり歓迎」の店舗スタイル・会員10〜20代中心・女性8割を確認
*2|宣伝会議アドタイ「タピオカを『ブーム』から『文化』へ!新章ゴンチャの戦略とは」(2025年9月22日)。2015年日本上陸・2025年7月末時点204店舗・2024年来店客数3,000万人突破・「お茶が楽しめるティーカフェ」というパーセプション確立・「幸せを淹れよう」というミッション・ゴンチャ2.0推進部長栗田栄一氏の発言・コーヒーチェーンとの差別化戦略を確認

▼ 新人さんのためのマーケティング講座 Season7

「なぜこの構造(仕組み)は崩れないのか」を事例で深掘りしていきます。

Season1(全14回)はこちら|マーケティングの基礎概念からWeb広告の実務知識まで

Season2(全15回)はこちら|PL翻訳術、弱者の戦略、広告評価、インタビュー技術まで
Season3(全20回)はこちら|現場で使える顧客心理・ブランド戦略・価格設計の本質
Season4(全20回)はこちら|「摩擦の除去」で読み解く世界的ブランドの設計思想
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【プロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)

株式会社新恵社代表取締役/スタディーハッカー(現(株)イングリッシュカンパニー) 創業者。
1977年生まれ、福岡出身。同志社大学卒業。2010年に創業。「Study Smart(合理的に学ぶ)」をコンセプトに、科学的知見に基づく英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」を設立し、人気ブランドへと成長させる。 事業拡大の要として、自らオウンドメディアとSNSの編集長を兼任。オウンドメディアは最大500万PV、Instagramでは月間700万PV、フォロワー27万人規模のメディアにするなど、広告費に依存しない集客モデルを確立する。現在はその知見を活かし、「企業の認知獲得の専門家」として、論理とデータに基づいた再現性の高いメディア戦略・ブランディング論を発信している。
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