「あの人、話しかけづらい……」がラクになる。心理学でわかった報連相の3つのコツ

不機嫌な男性

「あの人、なんだか話しかけづらいな」。職場に、そう感じる相手のひとりやふたり、いるものです。いつも忙しそうだったり、どこか不機嫌そうだったり。ちょっとした用でも、つい後回しにしたくなります。

とはいえ、仕事をしている以上、報告・連絡・相談は避けて通れません。話しかけづらいからといって、放っておくわけにもいかないものです。

そこで頼りになるのが、心理学の知見です。ほんの少し工夫するだけで、話しかけづらい相手とのやりとりは、思ったより楽になります。

相手そのものを変えることはできません。忙しさも、その日の機嫌も、こちらではどうにもならないものです。けれど、自分の話しかけ方や受け止め方なら、変えられます。ここで紹介するのは、その「こちら側で動かせる部分」に手をつけて、やりとりの気の重さを軽くする工夫です。

コツ1 フラットに話しかける

つい委縮して、小さな声やおどおどした態度で近づいていませんか? 話しかけるときは、姿勢を正し、声のトーンをフラットか、むしろ少し明るいくらいにして切り出してみましょう。あくまで自然体で、堂々と話しかけることを意識します。

たとえば「〇〇さん、いまお時間よろしいですか?」と、いつも通りの落ち着いたトーンで切り出せば十分です。

というのも、こちらが委縮して不安げに近づくと、その緊張や怯えは相手にも伝わり、警戒心や苛立ちをかえって強めてしまいかねません。反対に、あなたが落ち着いて接すれば、その落ち着きもまた相手に伝わり、態度や対応がやわらぐことが期待できます。

💡 心理学的には

人は、相手の表情や声のトーン、姿勢を無意識に取り込み、自分の感情に映してしまうところがあります。この現象は「感情伝染」と呼ばれ、ハットフィールドらの研究によって心理学のさまざまな領域で確認されてきました。*1

作業中に部下が話しかける

コツ2 クローズド・クエスチョンで聞く

いきなり要件から切り出したり、「〜の件、どうしましょう?」とオープンに問いかけたりしていませんか? 話しかけるときは、まず相手の名前を呼び、「はい」か「いいえ」で答えられる聞き方で切り出しましょう。あわせて、話しかける前に要件をひとつに絞り、要点をまとめておくと万全です。

たとえば、こう切り出します。「〇〇さん、先方から来ていた見積もりの件で確認です。想定より20万円ほど高くなっているのですが、このまま一度持ち帰って再検討してもらうよう伝えてもよろしいですか?

こうしておけば、相手はゼロから考えずに済み、その場ですぐに判断できます。先に名前を呼んでおくことで、相手の注意がこちらへ向きやすくなる効果も期待できます。

💡 心理学的には

心理学者ジョン・スウェラー氏が1988年に提唱した認知負荷理論では、人間の作業記憶(ワーキングメモリ)には限界があり、一度に処理できる情報量を超えると、思考の負担が急激に増すことが示されています。*2 特に、余裕のない状態にある人ほど、ゼロから考えなければならない質問に強いストレスを感じ、対応が素っ気なくなりがちです。

yes or no

コツ3 「相手の事情」ととらえ直す

話しかけて素っ気ない対応や嫌味を返されると、つい「自分は嫌われている」「この人はそういう性格だ」と思ってしまいます。そんなときは「いま何か事情があるのかも」と、いったんとらえ直してみましょう

心のなかで「何か別の事情を抱えていて機嫌が悪いのかもしれない。それは私のせいではないのだから、気にしないでおこう」とつぶやいてみるのです。

もちろん、相手が本当に不機嫌なこともあります。それでも、その態度を必要以上に重く受け止めてしまうと、次の報連相がますます億劫になってしまう。「自分のせいだ」と抱え込まないことが、話しかけ続けるための支えになります。

💡 心理学的には

心理学者のリー・ロス氏が1977年に発表した論文では、人が他者の行動を説明するとき、その人の性格や人柄といった内的な要因を過大評価し、置かれた状況などの外的な要因を軽く見がちだと指摘されています。*3 相手の態度も、じつは業務の負荷やその日の体調など、あなたとは関係のない要因によることが少なくないのです。

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話しかけづらい相手を、こちらの都合よく変えることはできません。でも、自分の出し方、伝え方、受け止め方なら変えられます。避けて通れない報連相だからこそ、その3つに手をつけるだけで、話しかける前の気の重さは確実に軽くなります。

相手との関係に線引きをする

よくある質問

Q. 何度話しかけても毎回不機嫌な反応をされます。それでも「相手の事情」ととらえ続けるべきですか?
一時的な状況要因としてとらえ直すことは有効ですが、あまりに頻繁で改善が見られない場合は、上司や人事など第三者に相談することも選択肢のひとつです。
Q. クローズド・クエスチョンだけで済まない、複雑な相談のときはどうすればいいですか?
まずはクローズド・クエスチョンで「いま少し複雑な相談があるのですが、5分ほどお時間よろしいですか?」と時間の確保だけを取り付け、詳しい内容はそのあとで伝えるとスムーズです。
Q. フラットに話しかけようとしても、つい声が小さくなったり早口になったりします。
話しかける直前に一呼吸置くだけでも変わります。無理に明るく振る舞う必要はなく、いつも通りの自然な話し方を意識することから始めてみてください。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。