「〇〇さんしか頼める人がいなくてさぁ……」
そう言いながら、みんなが面倒な仕事を自分に押し付けてくる。「たまにはほかの人に頼んでくれよ」と喉元まで出かかるものの、空気が悪くなるのが嫌で、苦笑いを浮かべながら引き受けてしまう。そんな場面に心当たりがあるかもしれません。
じつは、よかれと思って断らずにいることが、かえって相手からの扱いを悪くすると研究で指摘されています。むしろ「ハッキリ断る」ほうが、お互いの関係を良好に保てるのです。
とはいえ、断ったせいで気まずくなるのは嫌ですよね。そこで今回は、断らないと「都合のいい人」になってしまう理由とあわせて、関係を良好に保ったまま上手に断る技術を紹介します。
「断らない人」は「都合のいい人」になっていく
「相手のお願いを快く受け入れる」。これは一見、関係を良好に保つために必要な行動に思えますよね。
しかし、もしあなたが職場で「都合のいい人」扱いを受けているなら、「受け入れすぎ」なのかもしれません。ある研究では、他者への配慮が強すぎる人は、職場で都合よく利用されやすく、生産性と幸福感を損なうことが指摘されています。*1
受け入れるばかりではなく、ときには断ることが、都合のいい人から抜け出す秘訣なのです。

「そうは言っても、断るほうが負担だし、多少は仕方ないか……」と思うのは危険。というのも、「都合のいい人」扱いはエスカレートすることが科学的にわかっているからです。
「小さな依頼に応じた相手には、より大きな依頼が通りやすくなる」という「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」が知られていますよね。*2
あれはまさに、この状況の一端を表している現象です。いつも受け入れていると、相手の要求はどんどん大きくなっていくのです。
だからこそ、相手との関係を損なわない「上手な断り方」を身につける必要があるのです。
相手を受け入れられることは、間違いなくあなたの強み!
「相手のお願いを快く受け入れることは悪いことなのか?」と落ち込んでしまった人もいるかもしれません。結論から言うと、まったくそんなことはありません。
周囲に配慮してサッと手を差し伸べられるのは、誰にでもできることではない立派な才能です。その優しさがあるからこそ信頼が生まれ、素敵な仲間が集まってきます。
だからこそ、その才能を粗末に扱われるのはあまりにももったいないこと。あなたの優しさを守り、正しく評価してもらうために、必要な場面で「上手に断る技術」を身につけていきましょう。
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関係を壊さない「上手な断り方」
気まずくならずにハッキリ断る技術として「アサーティブ・コミュニケーション」があります。
これは、相手の言い分も自分の事情も、どちらも否定せずに伝えるコミュニケーションのこと。やり方を学んでおくと、どんな場面でも応用でき、とても役立ちます。
ここでは、アサーティブ・コミュニケーションを難易度別に分けました。相手との関係性や依頼の重さに応じて、自分ができそうなレベルから試してみてください。

Lv.1 保留する(難易度 ★☆☆☆)
反射的に「いいですよ」と言うのをストップ。代わりに、いったん保留するようにします。保留中に、落ち着いて断り方を考えることができます。
おすすめセリフ
「予定を見て、午後に返事します」
「いったん持ち帰って、確認してからお伝えしますね」
Lv.2 条件をつける(難易度 ★★☆☆)
もし引き受けるのであれば、条件を伝えましょう。「無条件でいくらでも引き受けるわけではない」と線引きするのです。
おすすめセリフ
「本日中は難しいのですが、来週の水曜日までなら可能です」
「全部は難しいですが、この部分だけなら対応できます」
Lv.3 代替案を伝える(難易度 ★★★☆)
引き受けないけれど、代わりに相手のためになる情報を渡すのも効果的。協力の姿勢は保ちつつ、相手を不快にさせずに断れます。
おすすめセリフ
「私がやるのは難しいですが、共有フォルダのあの資料が参考になりますよ」
「〇〇さんに聞いてみると、詳しく教えてもらえるかもしれません」
Lv.4 仕事の理由で断る(難易度 ★★★★)
ハッキリ断る場合、仕事の都合を理由にすれば、角が立ちません。
おすすめセリフ
「いま〇〇の締切が迫っていて、お引き受けする余裕がありません」
「別件の対応で手一杯なので、今回は難しいです」
断り慣れていなくても、Lv.1なら無理なく始められます。やってみると、意外と周囲との関係も変わらないとわかるかもしれません。そうやって少しずつ段階を踏むことで、断ることが怖くなくなっていきます。
***
「上手な断り方」を身につければ、周囲との関係を良好に保ったまま、「都合のいい人」を卒業できます。ぜひ、自分にできるレベルから試してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 断ったら評価が下がりませんか
Q. 「断ったら嫌われる」というのは思い込みですか
Q. 上司からの依頼も断っていいのですか
Q. どのレベルから始めればいいですか
*1: MDPI Encyclopedia|The Workplace Dynamic of People-Pleasing: Understanding Its Effects on Productivity and Well-Being
*2: APA PsycNet|Compliance without pressure: The foot-in-the-door technique
*3: American Psychological Association|Saying No: The Negative Ramifications From Invitation Declines Are Less Severe Than We Think
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。