"褒めて伸ばす" の落とし穴。人を伸ばす「良い褒め方」と、成長を邪魔する「悪い褒め方」

ハイタッチする人たち「褒めて伸ばす」と、あちこちで言われます。だから、意識して褒めてきました。結果を出した部下には「さすが、優秀だ」と声を掛け、テストで良い点を取った子どもには「頭いいね!」と笑顔で返す。照れくさい日も、忙しい日も、褒める機会だけは逃さずにきたつもりです。

なのに最近、部下は失敗しそうな仕事を避け、子どもは難しい問題を嫌がるようになりました。あれだけ褒めてきたのに、まだ足りないのでしょうか。

いえ、足りないのではなく、褒める「場所」がずれているのかもしれません。何を褒めるかで、その後の挑戦意欲が正反対に変わることが、実験で確かめられています。この記事では、その結果をもとに、実際にどう褒めればいいのかを解説します。誰かを伸ばしたいという気持ちと、これまでの努力が、きちんと報われるように。

答えは、「能力」ではなく「過程」を褒めること

「頭いいね」「さすが優秀」のように結果や能力そのものを褒めるのをやめ、「その切り口で考えたのがよかった」「粘り強く試したね」と、そこに至るまでの工夫や努力を具体的に褒める。これだけで、その後の挑戦意欲は大きく変わります。

褒めること自体は悪くありません。頭ごなしに叱られるより、承認されたほうが人は安心して次の行動に移れます。積極的に褒めるべきなのですが、問題は、褒める中身のほうにあるのです。

なぜ褒める場所を変えるだけで、挑戦する人としない人に分かれるのか

子どもを対象に、褒め方の違いがその後の行動をどう変えるかを調べた実験があります。同じ課題を解いた子どもに「頭がいいね」と能力を褒めるか、「よく頑張ったね」と取り組み方を褒めるか、違いはその一言だけでした。それでも、能力を褒められたグループは難しい課題を避けるようになり、失敗を経験すると成績まで落ちました。一方、取り組み方を褒められたグループは、難しい課題を自分から選び、失敗しても粘り強く取り組み続けました。*1

同じ課題を解いたあと、掛けた言葉だけを変えると

能力を褒める

「頭がいいね」

→ 難しい課題を避けるようになった

→ 失敗を経験すると成績まで下がった

取り組み方を褒める

「よく頑張ったね」

→ 難しい課題を自分から選んだ

→ 失敗しても粘り強く取り組み続けた

努力する人

背景にあるのは、能力を「生まれつき決まっているもの」と見るか、「努力で伸びるもの」と見るかという考え方の違いです。

能力を褒められた人は、次も「優秀な自分」を証明しなければと感じます。だから、評価が崩れるかもしれない課題を、無意識のうちに避けるようになるのです。つまり、挑戦を避けているのは、期待値に対する反応であって、意欲や性格によるものではありません。むしろ素直だからこその反応なのです。

そして、この傾向は子どもに限った話ではなく、大学生を対象にした研究でも報告されています。*2

今日から使える「過程褒め」への言い換え

同じ場面でも、褒めるポイントを結果や能力から、プロセスや工夫に変えるだけで印象は大きく変わります。

 

「過程褒め」言い換えサンプル集

「頭いいね」

→ 「その切り口で考えたのがよかった」

「さすが優秀」

→ 「先に段取りを組んだのが効いたね」

「センスある」

→ 「何度も直した粘りが出てる」

「天才だね」(子どもに)

→ 「難しいのに最後までやったね」

結果が出なかったとき

→ 「結果は残念だったけど、あの準備のやり方は次も使える」

ここまでは、わかりやすくするために、いささか大げさな言葉で例を挙げてきました。日常的には「いいね」「いいと思う」「いいんじゃないか」といった平易な言葉で褒めていることが多いかと思います。そういうときも、過程のなかの「何が」良かったのかを言葉で明示したいところです。

拍手する人

ただし、注意点もあります。過程褒めは「努力していれば何でも褒める」という意味ではありません。成果につながった具体的な行動を指す、あるいは結果が出なくても伸ばすべきポイントを指して褒めることが大切です。

もうひとつ、褒め言葉を変えたつもりでも、能力型の見方が顔を出しやすい場面があります。失敗したときに何も言葉を掛けない、「あの人は地頭がいいから」と人を能力で説明する、といったときです。褒める瞬間だけでなく、こうした場面でも過程に目を向けられているかを、ときどき振り返ってみてください。

***

褒めることは、その人が次に何に挑むかを左右します。能力ではなく取り組み方を褒めるようにするだけで、難しい課題にも自分から向かっていける人が増えていきます。部下や子どもだけでなく、同僚にも実践してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 能力を褒めてはいけないのですか?
禁止ではありません。比率の問題です。日常の言葉かけでは、能力そのものより過程への言及を主にすることをおすすめします。
Q. 大人にもこの話は当てはまりますか?
はい。大学生を対象にした研究でも同様の傾向が報告されており、職場のフィードバックにも応用できます。
Q. 褒めるところが見つからないときはどうすればいいですか?
結果ではなく、前回からの変化や試したことに注目してみてください。褒める材料は見つかりやすくなります。
Q. 褒めすぎると図に乗りませんか?
心配なのは量より中身です。能力への称賛はプレッシャーや慢心につながりやすい一方、具体的な行動への称賛は、次も同じように工夫しようという意欲につながりやすいことが報告されています。
(参考)

*1: Mueller, C. M., & Dweck, C. S. (1998). Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 33-52.|Praise for intelligence can undermine children's motivation and performance
*2: Haimovitz, K., & Henderlong Corpus, J. (2011). Educational Psychology, 31(5), 595-609.|Effects of person versus process praise on student motivation: Stability and change in emerging adulthood

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STUDY HACKER 編集部

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