スマホに戻ってしまうのは「抜け穴」のせい。通知オフも寝室追放も効かない理由

こめかみを押さえる男性

通知を切った。寝室にスマホを持ち込まないと決めた。つい見ちゃうアプリを消した。そこまでやったのに、気づけばまた同じようにスマホを触っている——ありますよね、そういうこと。

「意志が弱いのか」「もしかして病気?」と心配になるかもしれませんが、それは対策の作り方に、まだ改善の余地が残っているというだけのこと。

スマホがやめられないのは「意志が弱いからではなく、脳がハックされているから」という考え方はこれまでも紹介してきましたが、 この記事では、その先を考えます。「意志ではなく環境設計」を試したのに、私たちは、なぜまた同じことを繰り返してしまうのでしょうか。

対策が効かないのは意志の出番がまだ残っているから

意志に依存しない設計で対策すること自体は間違っていません。

その対策が機能していないのだとしたら、発動する瞬間に、まだ「その場の自分」が入れるようになっている可能性があります。

例えば

  • 通知をオフにしたが、その気になればいつでも自分でオンに戻せる
  • 「22時以降は見ない」と決めたが、スマホ自体はいつでも手に取れる

いい設計とは、判断の回数そのものを減らすこと、または行動に意志を介在させないということです。何をするかを決めておき、あとはその通りに、自動で動くだけにするのが、いい設計なのです。

【セルフチェック】その対策、まだ意志に頼っていませんか

これまでに「スマホをダラダラ見ないための仕組みや設計をした。でも、やっぱりうまくいかなかった」という方は、以下のうち、いくつ当てはまるかチェックしてみてください。

意志の介在する余地を残す4つの兆候

その対策は、今すぐ自分ひとりで解除できる

ルールに「ただし〜のときは例外」がある(それもあまり意識せずに)

発動するかどうかを、その場の自分の判断に委ねている

「今日だけは特別」と、これまでに一度でも例外を作ったことがある

当てはまるものがあったら、その対策には意志の介在する余地が残っていることになります。対策の方向性はおそらく間違っていないでしょう。足りないのは精度です。つまり、どこかに抜け穴があります。

デスクの文房具

対策の抜け穴のふさぎ方

じつはこれはヒューマンエラー対策と同じ発想です。

工程の中でミスが起きないよう、そもそも間違えようがない仕組みを作るといった工学的な取り組みは多く行われてきました。例えばトヨタの「ポカヨケ」という手法*1が有名ですが、人の注意力や意志力に頼るのではなく、仕組みの側でミスを防ぐという考え方です。スマホの誘惑も、同じように扱えばいいのです。

いくつか、工学的な観点から抜け穴のふさぎ方の例を挙げます。

解除の手間を増やす

スクリーンタイムの制限は「摩擦を増やす」というパターンですが、自分で決めたパスコードなら、自分ですぐ解除できてしまいます。つまり摩擦が弱いのです。

抜け穴

自分で決めたパスコードは、自分ですぐ解除できる

▼

ふさぎ方

家族にパスコードを預ける。制限時間を延長するボタンを、一段階多くタップしないと出てこない設定にする。「今すぐは無理」という一手間を挟む

誘惑の隙間を代わりの行動で埋めておく

「手持ち無沙汰になったら何をするか」をその場で選ぼうとすると、また意志力の勝負に戻ってしまいます。ポカヨケの発想でいえば、これは誤った行動が入り込みやすい隙間があるということ。あらかじめ別の行動で埋めておく「置き換え型」の対策が有効です。

抜け穴

手持ち無沙汰になったときに何をするかを、その場で選んでいる

▼

ふさぎ方

まだ誘惑がない今のうちに、何をするかを決めておく。「水を飲む」「メモに落書きする」など、考えずに手が動く単純な行動ほど隙間を埋める

これは、STUDY HACKER読者にはおなじみのif-thenプランニングを、望ましくない習慣を断つ方向に使う応用です。*2 こうした設定は、目標の達成率を高めることも分かっています。*3

(参考:なぜ人は誘惑に負けるのか? 「明日やればいいか」を防ぐ「if-then」形式の力)

ルールに例外を書き込まない

ルールに例外をあらかじめ設定してしまうと、その例外そのものが抜け穴になります。

抜け穴

「基本は22時以降見ない。ただし急ぎの連絡があれば別」のように、ルールに例外が書き込んである

▼

ふさぎ方

例外を用意しない。例外が必要な場面が本当にあるなら、抜け穴を足すのではなくルール自体を見直す

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スマホをダラダラ見ないために対策してもなお止められないというのであれば、単に抜け穴があるというだけのこと。自分の対策のどこかに、まだ抜け穴が残っていないか確かめてみてください。そして、その塞ぎ方を考えましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. スマホ依存は病気ですか?
医学的な診断名として確立したものではありません。「やめたいのにやめられない」という感覚自体は、多くの人が経験する自然な反応です。
Q. デジタルデトックスは何日必要ですか?
決まった日数はありません。数日間だけ距離を置くより、日々の環境設計を変えるほうが長続きしやすいと言われています。
Q. 仕事でスマホが必須の場合はどうすればいいですか?
アプリごとに通知を分けたり、業務用と娯楽用でホーム画面を分けたりするだけでも、無意識に開く回数は減らせます。
Q. 子どものスマホにも使えますか?
基本的な考え方は応用できますが、年齢や発達段階によって適切な関わり方は変わります。子ども本人と一緒にルールを決めるところから始めるのがおすすめです。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。