
「いいアイデアが出てこない……」 「数は出るけど、どれもしっくりこない……」
そんなふうに、考える前に手が止まってしまう経験、ありませんか? じつはこれ、発想力の問題ではなく「思考の整理」ができていないことが原因かもしれません。
頭のなかが整理ができないと、新しい発想も生まれにくく、せっかく出たアイデアもどこかピントがずれてしまいがちです。
そこでおすすめなのが、「マトリクス」を使ったシンプルな思考整理法です。 今回ご紹介する「マトリクス活用法」は、紙とペンだけで、頭のなかを整える最強の整理法。 縦線と横線を1本ずつ引くだけで、思考がスーッと整理され、アイデアの「量」だけでなく「質」もグッと上がる感覚が得られます。ぜひ最後までご一読ください。
マトリクスの効果
マトリクスとは、縦軸と横軸の2つの基準で情報を分類する図のこと。マトリクス活用の最大の魅力は、その手軽さにあります。もともとビジネスのフレームワークとして使われてきましたが、アイデア整理にも抜群の効果を発揮します。
まずはシンプルな使い方をご紹介しましょう。必要なのは、紙とペンだけです。
・紙に十字の線を引き、4つのマスをつくる
・縦軸と横軸に「自分が整理したい2つの基準」を書く
・頭のなかにあるアイディアやタスクを、当てはまるマスに書き込む
たとえば、以下のような軸を設定し、今日のタスク管理を「重要度」と「緊急度」で手書きのマトリクス表にします。

こうして表に整理したあとは、軸を設定したマトリクスに書き込んでいくだけで、情報が視覚的に整理されて、頭のなかが「地図」のようにクリアになっていきます。
次の章では、実際に筆者が書き込んだ体験をご覧ください。

簡単な例で効果実感~今日のタスクを整理する~
マトリクスが良さそうなのはわかったけど「なんだか難しそう」と感じている方もいるかもしれません。まずは、あなたの今日のタスクで試してみてはいかがでしょうか? ここでは試しに、筆者の本日のタスク管理で「緊急度」と「重要度」を軸に設定し、下記のようにどんどん書き込んでいきました。

(画像は筆者にて作成)
まずは縦軸を重要度、横軸を緊急度に分類します。
・縦軸 重要度(高・低)成果につながるか、目的達成に不可欠か
・横軸 緊急度(高・低)納期が近いか、いますぐ対応が必要か
次に4つのマスには、今日のタスクを分類します。
右上のマス | 重要度【高】 × 緊急度【高】 → いますぐやるべき最優先タスク
左上のマス | 重要度【高】 × 緊急度【低】 → 計画的にやるべきタスク
右下のマス | 重要度【低】 × 緊急度【高】 → 手放すか、別日にやるべきタスク
左下のマス | 重要度【低】 × 緊急度【低】 → やらないタスク
実際に筆者がこのマトリクスにタスクを書き込んでみると、「緊急だけど重要ではない」タスクに振り回されていたことに気づきました。タスクの優先順位が明確になり、作業がスムーズに進み、嬉しくなりました。 このようにマトリクスは、なんとなくの感覚ではなく、「この軸ではどう分類されるか」という論理的な基準で、瞬時に最善の選択を導き出してくれるのです。

応用例の紹介~企画整理とチーム活用~
「タスク整理はわかったけれど、アイデア出しや企画整理にも使えるの?」と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。 じつはマトリクス思考の真価は、その汎用性の高さにあります。アイデア出しや企画整理に非常に適しているのです。
1. 企画整理・意思決定への応用
アイデア出しで行き詰まるのは、評価の基準が曖昧だからです。企画アイデアをマトリクスに並べることで、抜け漏れのない整理と意思決定の根拠が得られます。
たとえば、新しい商品企画の場合は下記のような軸を設定します。
・縦軸 顧客ニーズ(高い・低い)→ 市場の反応や求められている度合い
・横軸 実現可能性(高い・低い)→ 技術やコスト、期間で実現できる度合い
このマトリクスにアイデアを配置すれば、「顧客ニーズが高く、実現可能性も高い」右上のマスにある企画から着手すべきだと一目瞭然になります。また、「ニーズは高いが実現が難しい」左上のマスを見ることで、技術開発の優先順位が見えてくるなど、新たな気づきも得られます。
2. チームでの活用と認識合わせ
マトリクスは、あなたひとりの思考整理だけでなく、チームの会議やブレストでも絶大な効果を発揮します。
口頭での議論は、メンバーごとに解釈がズレてしまうことがあるでしょう。しかし、マトリクスという客観視できる「図」を共有することで、全員が同じ前提でアイデアを見ることができます。
「あの企画は、実現性の軸ではこの位置だと思います」「このマスにあるアイデアは、もっと顧客ニーズが高まるようにブラッシュアップできますね」などと、具体的な図を指しながら話し合えるため、チーム内の認識のズレを解消し、よりスムーズに議論を進られるのです。
実際、組織コンサルタントでグロービス経営大学院の教授である嶋田毅氏も、マトリクス思考の有効性を提唱しています。*1

さらに思考を深めるためのステップ
紙とペンでマトリクスの効果を実感できたら、次は「使いこなす段階」に進みましょう。マトリクスは単なる整理術ではなく、比較・優先順位付け・仮説検証を繰り返すことで、思考力そのものを鍛えるフレームです。特別なスキルは不要。今日から始めても、得られる効用は大きいはずです。まずは小さなテーマで回し、徐々に難易度を上げていきましょう。
デジタルツール Figmaを活用するメリット
そのほかにも、手書きのマトリクスに慣れたら、次はFigmaのFigJamのようなオンラインホワイトボードツールを活用することで、さらにその効果を発揮します。
Figmaのメリット
・共同編集 | 離れた場所にいるメンバーとも、アイデアを出し合える
・整理・編集 | アイデアを書き込んだふせんをドラッグ&ドロップで簡単に移動させたり、軸の設定を変えたりすることが可能
・記録・共有 | 作成したマトリクスを画像として保存したり、リンクで共有したりすることが容易になり、議事録や資料作成の手間が減る
まずは紙とペンで思考整理の感覚をつかんだら、チームでの情報共有や遠隔での企画整理といった場面ではデジタルツールの活用もおすすめです。
***
もしあなたが、いまアイデア出しに行き詰まっていたり、出したアイデアに自信が持てなかったりするなら、まずは紙とペンで、線を2本引いてみるところから始めてみませんか? 「見える化」するだけで、思考が驚くほどクリアになると思います。
*1: 東洋経済オンライン| 「たった2本の線」で思考がクリアになる方法 マトリクスの活用で仕事の効率が劇的に上がる
橋本麻理香
大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。