深く理解し、記憶に残す。読書の価値を高める「読書の技術」

机の上に置かれた本

「仕事や勉強に活かすための読書がしたい」と考えるビジネスパーソンは多いもの。せっかく時間を割いて読むなら、知識として身につくような意味のある読書をしたいですよね。

今回は、本当に意味のある読書をするためのポイントを、実践例とともに紹介します。最後までご一読ください。

【ライタープロフィール】
橋本麻理香
大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。

“5W1H” を意識して読む

「話題のビジネス本を買ってはみたものの、ただ文字を目で追うだけになってしまう。仕事に活かしたいのに、内容がまったく身につかない……」

このようにお悩みの人は、読み方を変えてみるのがおすすめです。

青山学院大学教授の木山泰嗣氏は「30代の10年間に毎年400冊を読破」した経験から、「5W1Hを意識する」のが「記憶力を高める読書をするためのコツ」だと語ります。(カッコ内引用元:東洋経済オンライン|本を「読んだ端から忘れる人」が知らない記憶術 多読の法律家が見出した「忘れないコツ」

作文や小論文を書くときに、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうした)を意識すると、読み手に伝わりやすくなる——と教わった人も多いのではないでしょうか。基本だからと軽視している人もいるかもしれませんが、じつは読書をする際にも重要なのです。

木山氏は、「5W1Hが明確にならない文章は具体性がなく、読み手に伝わりにくい」と指摘。ただし、主語などを省略しても意味が通る日本語は「5W1Hのすべてがそろう文章ばかりではない」と付け加えます。(カッコ内引用元:同上)

実際、そのような文章を読んだときでもわかった気にはなりますが、抽象的な理解に留まってしまうことも多いのではないでしょうか。そのような場合も、5W1Hを意識して読むことで理解が具体化され、本の内容を正確に読み取って記憶に残しやすくなるのです。

たとえば、以下の文章を見てみましょう。

些細なきっかけで、長年抱えていた課題に気づかされた。本質を見失わないため、ひとつずつ着実に、新たな視点で向き合うことから始める。

主語が省略され、抽象的な文章ですよね。ただ目で追っただけでは、頭に入りづらかったのではないでしょうか。

この文章を5W1Hに当てはめてみると、以下のような要素で構成されているのがわかります。

  • いつ(When):明示されていないけれど「現在」だろう
  • どこで(Where):場所は特定されていない
  • 誰が(Who):明示されていないけれど「私」だろう
  • 何を(What):長年抱えていた課題
  • なぜ(Why):本質を見失わないため
  • どのように(How):新たな視点で着実に向き合う

このように分解して状況を整理すると、より理解が深まるのです。

読書の際、ただ文字を目で追うのではなく、5W1Hを考えながら読み進めると頭に入りやすくなるはずですよ。

5Wを書いている様子

本の余白に “メモ” をする

「本には書き込みをせず、きれいに読みたい」と考える人は多いかもしれませんが、読書を記憶に残すには余白にメモをするのが効果的です。

超読書家の識者や著名人も、余白にメモをとって内容の理解を深めたり、自らの考えを書き込んだりと、能動的な読み方をしています。

マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏も1年間に50冊以上の本を読む読書家として知られますが、「本を読んでひらめいたり、気づいたりしたことを即座に本の余白に書き留める」習慣があるのだとか。(二重カッコ内及びカッコ内引用元:日経ビジネス電子版|天才ビル・ゲイツに学ぶ 読書を“血肉”にするための5つのルール

漫然と本を読んでも記憶に残らず、読み終えた途端に内容が思い出せなくなる状態に陥った経験のある人も少なくないかもしれません。しかし、感想などを手書きでメモをするだけで記憶への定着が促されるのだとか。

読書術に関する複数の著書をもつ明治大学客員研究員の尾藤克之氏も、「読みながら『手書き』で記録することで、『必要な情報』だけが蓄積されてい」くと述べています。(カギカッコ内引用元:アゴラ言論プラットフォーム|読書の新常識!本に書き込むだけで記憶力がアップする

尾藤氏は、以下のような方法をすすめています。

きれいに整理して書き込んではダメです。「平仮名で殴り書きにする」ことを徹底してください。

色は赤と黒の2色で十分です。(中略)1回目の読書は黒、2回目の読書は赤にしています。色を変える手間が省けますので、スムーズに読書ができます。

1回目、2回目の文字を比較すれば、自分の意識の遷移が確認できます

(引用元:同上 ※太字は編集部が施した)

本を読んでいるときに考えたことや出てきたアイデアを、忘れる前に書き込むのがポイントです。平仮名での殴り書きを推奨するのも、漢字を考える時間を省くため。徹底的に余計な手間を省き、汚い字でもとにかくすぐに書くことで記憶への定着が促進されるのです。

本が開いたまま置かれている様子

「5W1H読み」 ×「余白メモ」を実践してみた

じつは、筆者も本を読んでもなかなか内容を覚えられず悩んでいます。「あの本、どんな内容だった?」と聞かれて、説明できなかったこともしばしば。

そこで、本の余白に書き込んでみることにしました。今回選んだ本は、『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』(かんき出版)。何年も前に読んで本棚に保管していたものです。

開いてみると、書き込みは一切なくきれいな状態。「物事の優先順位を決め、時間を有効に使おうといった内容だったかな……」という程度しか思い出せず、それが合っている確信もありません。時間をかけて最後まで読んだはずなのに、これではもったいないですよね。

文中の5W1Hをとらえることを意識しつつ、本の余白にメモをしながら読んでみることに。まずは、黒字で感想やアイデアを書き込みました。

本の余白に黒字で書き込んだ様子

きれいに書いたり、色を分けたりする必要がないため、本を読むことに集中できました。

今度は赤字でメモしながら、2回目の読書です。慣れてきたのでしょうか、5W1Hで特に省略されやすい主語を意識すると、より深くイメージがわくことに気づいた筆者。また、1回目に書き込んだ疑問について自ら答えることもでき、理解が深まったのを感じました。

2回目の赤字での記述が1回目の黒字と重なっても、問題なく読み分けられるのも便利です。

本の余白に赤字で書き込んだ様子

「主語」を意識すると、読書がぐっと意味を増す

5W1Hを意識して本を読むと、かなり多くの主語が省略されていることに気づきます。“誰が” “何が” を意識することで、具体的なイメージが湧き、理解が容易になるでしょう。

さらに、本の内容に対する自分の意見や考えがよりクリアになりました。感情がゆさぶられ、メモを通じて著者と対話しているような感覚です。

また、殴り書きというルールは「なんでも書き込んでいい」という安心感を生み出します。ただし、平仮名で書くという点は、筆者にとってはかえってストレスでした。たとえば、「多い」「大きい」など普段から使いなじんだ漢字については、ルールに縛られる必要はないかもしれません。

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読み方によって、本は私たちを大きく成長させてくれます。せっかく読書するなら、仕事や勉強に活かせる意味あるものにしたいですよね。今回ご紹介した方法を、ぜひ試してみてください。

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