「今日は疲れているから、明日にしよう」
「もう少し時間ができたら始めよう」
資格試験の勉強や読書、新しいスキルの習得。「やりたい」と思っていることほど、こんなふうに先延ばしして、結局できないまま一日を終えてしまう。そんな経験は、誰にでもあるものですよね。
そして厄介なのは、後悔していても、また同じことを繰り返してしまうこと。「決めたことを、いつもやりきれたらいいのに」と思いながら。
この繰り返しを解決する、シンプルで効果的な方法があります。それが「行動ブレーキメモ」です。
メモを使ったちょっとした分析で、行動は驚くほどしやすくなります。実際に筆者も試してみたので、その方法と効果をご紹介します。
行動を止める「ブレーキ」は、責めずに観察する
先延ばししてしまったとき、私たちはつい「自分の意志が弱いからだ」と考えがちです。でも、責めたところで、次に生きるものはあまりありません。
そこで、視点を変えてみます。止まってしまった場面を「責める対象」ではなく「観察する対象」として見てみるのです。仕事で問題が起きたら原因を分析して再発防止策を考えるように、自分の先延ばしも「どんなときに止まりやすいか」を観察してみるわけです。
やることはシンプルで、行動が止まった場面を、そのつど書き留めておくだけ。たとえば、こんな具合です。
- 残業した日は、勉強を始められない
- 金曜日は疲れて、読書が続かない
- スマホを手に取ると、そのまま動画を見てしまう
ここで大切なのは、理由を突き詰めないことです。「なぜ疲れていたのか」「本当は何が嫌だったのか」と掘り下げても、正直な答えにたどり着けるとはかぎりません。掘り下げるべきは理由ではなく、「どの場面で止まったか」という事実のほうです。
こうして記録が溜まっていくと、あることに気づきます。自分が止まりやすい場面は、じつはほとんど決まっているということです。この、行動を止めてしまう決まった場面を、ここでは「行動ブレーキ」と呼ぶことにします。
ブレーキの正体さえ見えてくれば、あとはそこに手を打てばいい。「行動ブレーキメモ」は、この止まりやすい場面を洗い出し、先回りして対策を用意しておくためのメモです。
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「行動ブレーキメモ」の2ステップ
では、実際にメモをつくってみましょう。A4用紙でも、スマホのメモアプリでも構いません。筆者の場合は、更新しながら続けていけるようノートに書きました。(ちなみに、攻撃性や怒りを抑え、ポジティブな感情を引き出すと言われる “ピンク色” の紙のノートです)
ステップ① 止まりやすい場面を書き出す
まずは、自分が止まりやすい場面、つまり「行動ブレーキ」を書き出します。より具体的に書くほど、ステップ②の対策も実用的なものになります。
たとえば、こんな内容です。
- 帰宅してソファに座ると、そのまま立ち上がれなくなる
- 勉強を始める前にメールだけ確認しようとして時間が過ぎる
- 教材を開くと「今日は何からやろう」と迷ってしまう
- 家族に話しかけられると、そのまま予定が流れてしまう
- SNSを5分だけ見るつもりが、30分以上経ってしまう

ここでは評価ではなく、観察に徹します。
ステップ②「そのとき何をするか」を決める
次に、それぞれのブレーキに対する対策を書きます。ポイントは、「もし○○なら、そのとき△△する」というかたちで、具体的に決めておくことです。
たとえば、こうです。
- 帰宅してソファに座りたくなったら → 教材を手に持ち、開いてから座る
- メールを確認したくなったら → タイマーを15分セットする
- 何から始めるか迷ったら → 一番上にある課題だけ手をつける
- 家族に話しかけられたら → 「〇個だけ問題を解いたら行くね」と伝える
- SNSを開きたくなったら → 立ち姿勢でしか見られない場所(玄関やキッチンの隅など)に移動して見る

じつはこのやり方は、行動科学でいう「実行意図(Implementation Intentions)」という考え方に沿ったものです。「もし○○なら△△する」と状況と行動をあらかじめ結びつけておくと、その場で「どうしよう」と考える負担が減り、行動に移しやすくなる。研究でもそうした効果が示されています。*1 *2
あとは行動するのみ
ここまで書けたら完成です。

何より大切なのは、完璧な計画をつくることではなく、ブレーキが来ても迷わず動けるようにしておくこと。無理のある対策だったり、状況が変わったりした場合には、すかさずメモの内容も更新しておきましょう。
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「ブレーキの地図」ができると、自分専用のルールが育つ
このメモを1〜2週間ほど続けてみたところ、はっきりしてきたことがあります。
- 自分が止まりやすい場面は、ほぼ決まっている
- 一度うまくいった対処法は、次も使いやすい
そして、「以前より行動に移りやすくなった」という手応えもありました。
「行動ブレーキメモ」は、いわば自分だけの「ブレーキの地図」をつくる作業です。どこで止まりやすいかがわかれば、そのぶん対策も立てやすくなります。
こうしたルールが少しずつ増えていくと、「今日はどうしよう」と迷う時間が減っていきます。つまずくことがゼロになるわけではありません。でも、つまずいても、迷わず動き直せるようになる。それが、このメモのいちばんの効果だと感じています。
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行動できなかった日があると、私たちは往々にして落ち込みます。でも、その落ち込む時間こそ、もったいない。
「どこで止まったのか」「次はどう動けばいいか」。そう考えて、自分専用のルールを少しずつ育てていく。今回ご紹介した「行動ブレーキメモ」は、そのための小さな仕組みです。
止まってしまう自分を責める前に、止まりやすい場面を予測して、先回りで手を打っておく。筆者も、続けてみます。

よくある質問(FAQ)
Q. 「行動ブレーキメモ」と、普通のToDoリストは何が違うのですか?
ToDoリストが「やること」を並べるのに対し、行動ブレーキメモは「自分が止まりやすい場面」と「そのときの対処法」をセットで決めておく点が異なります。行動を止める場面そのものに先回りして備えるため、いざその場面が来ても迷わず動きやすくなります。
Q. ベースになっている「実行意図」とは何ですか?
「もし○○という状況になったら、△△する」というかたちで、状況と行動をあらかじめ結びつけておく行動科学の考え方です。その場で判断する負担を減らし、行動に移りやすくする効果があると研究で示されています。
Q. どのくらい続ければ効果を感じられますか?
筆者の場合は1〜2週間ほど続けたところで、自分が止まりやすい場面がほぼ決まっていることや、一度うまくいった対処法が次も使いやすいことに気づきました。まずは短期間でも、止まった場面と対処をメモに残すことから始めてみてください。
Q. 止まりやすい場面をうまく書き出せないときは、どうすればいいですか?
「できなかった日」を思い出すのがおすすめです。理由を突き詰める必要はありません。「残業した日」「疲れていた金曜日」のように、どんな場面で止まったかをそのまま書き出してみましょう。評価ではなく観察のつもりで記録するのがコツです。
*1: Peter M. Gollwitzer. Implementation Intentions: Strong Effects of Simple Plans. American Psychologist, 54(7), 493–503 (1999).
*2: Peter M. Gollwitzer, Paschal Sheeran. Implementation Intentions and Goal Achievement: A Meta-analysis of Effects and Processes. Advances in Experimental Social Psychology, Vol. 38, 69–119 (2006).
STUDY HACKER 編集部
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