数学は公式ごとに、英単語は品詞ごとに――こんな勉強の仕方、していませんか?
勉強内容をなかなか覚えられない人は、まとまった単元を学ぶという従来の方法を変えてみる必要があるかもしれません。
様々な内容を「つまみ食い」するほうが、記憶の定着には有効である可能性があります。
そこで本記事では「インターリーブ学習法」をご提案します。
筆者の実践とともにやり方もご紹介するので、勉強に行き詰っている人はぜひご覧ください。
学習の常識を疑え
勉強はまとまった時間で、集中して行なう。
テキストの最初から、単元ごとの順番で勉強する。
このように「当たり前」とされている勉強方法は、じつは非効率な可能性があります。
つまり、ひとつの内容を長時間かけて覚えこもうとすると、集中力も記憶も損なってしまうのです。
勉強時間に関しては、東京大学教授の池谷裕二氏がベネッセコーポレーションの協力のもとに研究を実施しました。
- 中学1年生をグループにわけ、中2~中3レベルの英単語を覚えてもらった。
- 片方のグループは「60分×1回」、一方は「15分×3回」で勉強。
- 勉強直後のテストでは「60分×1回」のグループのほうが好成績。
- 翌日と1週間後のテストでは「15分×3回」のグループが好成績だった。
*1を参考に筆者がまとめた
この研究から、まとまった時間で勉強をするよりも、こまめに回数を重ねたほうが内容を定着させやすいことがわかります。
また、教育系事業を手がける実業家の粂原圭太郎氏は「同じことを長い時間学び続けるのは、学習内容を定着させるうえで非効率」だと主張。
これは、アメリカの心理学者ネイト・コーネル氏とロバート・ビョーク氏による実験で証明されています。
- 2つの大学生グループに、絵画とその作者を覚えてもらった。
- 片方のグループは画家ごとにまとめて作品を見せ、一方にはランダムに見せた。
- その後、学生たちに初見の絵画を見せ、その作風から作者を当ててもらった。
- 画家ごとに勉強したグループよりも、ランダムに覚えたグループのほうが好成績だった。
*2を参考に筆者がまとめた
ふたつの実験結果から、勉強は複数の内容を少しずつ学ぶと記憶しやすいということがわかります。
効率よく学ぶために必要なのは、順番やまとまった時間ではなく「切り替え」が大切なのです。
インターリーブ学習法とは?
切り替えを効果的に取り入れる方法としておすすめなのが、「インターリーブ学習法」です。
この学習法について、粂原氏は「『交互配置』という意味で、簡単に言うと『つまみ食い』の勉強法」だと説明しています。*2
たとえば数学の勉強では、図形の問題を3問、確率を3問、関数を3問、また図形を3問……といった具合で複数の内容を同時並行で進めるのです。
様々な内容を同時に学ぶことで「新鮮味が絶えることなく、脳が活性化したまま知識をインプット」できると粂原氏は言います。*2
また、インターリーブ学習法を提案したロバート・ビョーク氏は、複数の内容を行き来しながら勉強することで「思い出す」作業が増える点も記憶の定着に有効だとしています。
記憶から取り出した情報は、将来、さらに思い出しやすくなる。記憶の取り出しがうまくいけば、その取り出しが困難で厄介であるほど、得られる利益は大きい *3
つまり、記憶は何度も思い出すほど強化されるということです。
思い出すときは「この問題を前にやった」「ここは覚えにくいと思ったはず」など、様々な記憶や考えがめぐります。
何度も同じ内容に出会って思い出す作業ができるため、着実に覚えられるのです。
実践! インターリーブ学習法の取り入れ方
ここからは、筆者の実践とともにインターリーブ学習法のやり方をご紹介します。
今回、筆者は美術系の検定対策として、テキストと問題集の両方を使って勉強をしてみました。
テキスト学習
まずはテキストを使って勉強を進めます。
最初から順に読むのではなく、単元やテーマを混ぜながら読んでみましょう。
前出の粂原氏によると、集中力の観点から「切り替えの時間は30分がおすすめ」とのこと。
集中できない場合は15~20分、もう少しできそうと感じたら40~45分でも大丈夫。*2
先に述べたようにインターリーブ学習では「記憶の取り出し」、つまり単元を行き来して思い出すことによって記憶の定着をはかります。
そのため今回は、15分で勉強内容を変えて複数の単元を行き来することにしました。
15分のタイマーをセットし、重要な部分に付箋を貼りながらテキストを読み進めます。
合計で1時間勉強しました。
さらに記憶を定着させるために、ノートを使用します。
ポイントは「あとで」ノートをとること。
前出のビョーク氏は「混沌とした記憶の中から情報を取り出す作業が大変であればあるほど、2度目の学習における習得効果は強化される」として「授業の後でノートを取る」ことをすすめています。*3
つまり、あとから思い出すことで記憶を定着させるために、ノートはあとで書くのが有効というわけです。
勉強内容を思い出しながら単元ごとに重要だと感じた点をまとめ、思い出せなかった部分はもう一度テキストを読んで復習しました。
問題演習
問題集もテキストと同様に、15分ごとに単元を変えながら実践をしてみました。
「中世ヨーロッパ」「古代~中世日本」といったように、単元がわかるようにノートに見出しをつけています。
1時間問題を解いたあと、答え合わせを行ないました。
筆者が感じたメリット・デメリット
一週間ほどインターリーブ学習の実践を通じて筆者が実感したメリットは、集中力の維持と記憶の定着です。
一方で、デメリットとして進捗管理の難しさも感じました。
それぞれ詳しくお伝えします。
メリット:勉強に集中でき、内容も定着した
普段、テキストを読むだけだと集中力が長続きしない筆者。
インターリーブ学習で15分ごとに単元を変えることで、1時間では足りないと感じるくらい集中力と学習意欲が高まるのを実感しました。
また、もう一度同じ単元に戻ったり、テキストで読んだ範囲の問題を解いたりするたびに思い出す作業ができました。
筆者は人や美術品の名前を覚えるのが苦手ですが、何度も思い出すことによって記憶を呼び覚ます効果があったように感じました。
最初は1時間で20問ほどの問題を解いて、正解したのは6割ほど。
さらに1週間あいだを空けて同じように1時間勉強し同じ問題を解いてみると、40分で解き終わることができ、正解率が80%以上まで上がったのです。
デメリット:勉強の進捗を把握・管理しづらい
デメリットだと感じたのは、勉強の進捗管理です。
テキストや問題集を順番通りに進めるのではなく、様々な単元を進めるために進度がわかりづらいと感じました。
さらに複数の単元をまんべんなく勉強するので、苦手分野の対策がおろそかにならないかという懸念もあります。
改善策としては、勉強の記録をつける方法が考えられます。
いつ、どの単元を勉強したのか、ページ数や問題数を記録しておくのです。
勉強内容を可視化できれば、単元の偏りや抜け漏れを防げるでしょう。
***
勉強の「当たり前」をあえて崩してみることで、効率が大幅にアップするかもしれません。勉強に集中できない、一向に覚えられないと悩んでいる人は、インターリーブ学習を試してみてください。
■インターリーブ学習法については別記事でも詳しく紹介しています。
※引用の太字は編集部が施した
*1 朝日新聞デジタル|勉強時間は短い方が好成績?
*2 ダイヤモンド・オンライン|集中力がない人でも簡単に続けられる! 脳のパフォーマンスを最大限に考慮した勉強法「インターリーブ学習」
*3 WIRED|その常識は間違い?:効果的な学習法
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。