成功するプレゼンと失敗するプレゼンにはどんなちがいがある?——“世界ナンバーワン・プレゼンター” 澤円さんインタビュー【第2回】

社内、社外を問わず、プレゼンテーションを行う機会が多いビジネスパーソン。そして、プレゼンテーションが大の苦手だというビジネスパーソンも少なくないでしょう。

その上達法についてお話を伺ったのは、マイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長・澤円(さわ・まどか)さん。年間250回ものプレゼンをこなす、プレゼンのスペシャリストです。そのプレゼン力が評価され、2006年にはマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman’s Award」を受賞しました。そんな澤さんが明かす、プレゼンの極意とは?

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構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/玉井美世子

聞き手のアクションを引き出してハッピーになってもらう

そもそも、人類とはプレゼンテーションによって変わってきました。もっと言うと、災害を除けばプレゼン以外で変わったことがないんじゃないかな? と思うほどです。近年なら、iPhoneのプレゼンもその一例。スティーブ・ジョブズは「わたしは電話を再発明した」と語りました。それからあっという間に、スマートフォンが完全に生活の中心になりましたよね。これはもう、人類の歴史が変わったということです。

プレゼンは、人を動かす原動力であり、勇気づけるものでもあり、また、ときには人を狂わせてしまうものでもある。ものすごくいい面もあれば、ものすごく恐ろしい面もあって、人の人生を大きく左右する。それくらい、効果絶大な手段というわけです。

……ちょっと大きな話になりましたね(笑)。では、みなさんがイメージするプレゼンテーションについてお話しましょう。プレゼンの最終目的はなんだと思いますか? それは、「聞き手のアクションを引き出して、ハッピーになってもらう」こと。

深夜の通販番組の目的は、確かに紹介する商品を視聴者に買ってもらうことかもしれません。でも、ただ「買ってください」と訴えるだけでは誰も買ってくれませんよね。であれば、その商品を買った後の生活が豊かになったり、ハッピーになることをイメージさせなければなりません。その部分をきちんとストーリーにして伝える。そうして聞き手にアクションを取らせる。それがプレゼンテーションです。

成功の鍵は小手先のテクニックではなくコンテンツにあり

どうすれば聞き手はアクションを取ってくれるのでしょうか? それは、「聞き手に自分事だと思わせる」ことに尽きます。本当にそれだけです。自分事になればアクションを取るし、自分事にならなければアクションを取らない。「自分には関係ないや」と思われたら、どんなにしゃべりがうまくても、そのプレゼンは失敗なのです。だって、アクションにつながらないですからね。

そうなると、プレゼンのスキルを向上させたいという人は、どうすれば聞き手に自分事だと思わせられるのかという、そのテクニックを知りたいことでしょう。でも、テクニックというものを僕は基本的に否定します。もちろん、僕はプロなので、立ち方、話し方、笑顔の作り方、手の動かし方などにもすごく気を付けています。でも、本来、大切なのはそういう部分ではないのです。大事なところをすっ飛ばしてテクニックに走っても、そのプレゼンの評価は100点中20点というところでしょう。

残りの80点は別のもので決まる。それはズバリ、コンテンツです。コンテンツというと、「じゃ、スライドをきれいにつくればいいんだな」と思うかもしれませんが、残念ながら、それも20点のほう。コンテンツとは、「オーディエンスが求めていること、あるいは求めていることに気付いていないことを言語化するプロセス」です。求めていることに気付かせ、しかも自発的にアクションを取りたくなるようなストーリーを描くことが重要なのです。

その大前提として、言葉は絶対に簡単でなければなりません。中高生がばっちりわかるレベルの言葉でないと、間違いなく失敗します。専門用語を使うのは楽なんです。専門用語には、こまかい意味合いが全部詰まっていますからね。でも、その言葉を知らない人にとっては、その言葉が使われた時点でいきなり他人事になってしまいます。「もっと簡単な表現ができないか」と何度も磨き上げ、ものすごく本質的な話にすることがコンテンツ作成のキモです。

「これだけは絶対に伝える」ことを繰り返し練習する

あがり症や口下手を自覚していて、プレゼンが苦手だという人もいるでしょう。でも、緊張することはまったく悪いことではありません。緊張しているからと誰かに危害を加えられるわけでもないじゃないですか? アメリカのとある調査では、人前で話すことは高所恐怖症を抑えて「怖いこと」のナンバーワンランキングを獲得しているそうです。緊張することは悲劇でもなんでもなく、自然な状態ですから、まずはそれを受け入れましょう。

とはいえ、頭が真っ白になってまったく話せないというのでは、責任を果たしてないことになります。聞き手の時間を無駄にしてしまいますからね。ではどうするか。これだけは伝えて聞き手に覚えて帰ってもらうべきことだけをまとめておきましょう。3つくらいのポイントにまとめて、そのことだけは絶対に伝えられるよう、繰り返し繰り返し練習する。一番重要なことなのですから、頭が真っ白になったとしたら、それだけを100回言ってもいいんですよ。逆にどんなに流暢に話せても、そのポイントを聞き手に伝えられなければ失敗です。

プレゼン力を上げたいのなら、まずは自分をビデオ撮影してみてください。いまならスマートフォンで簡単にできることです。最初はすごく嫌だと思いますよ。でも、これをやらないとまずうまくならない。自分がプレゼンしている姿を客観視して、自分の欠点、その改善策を見つけるわけです。場所はカラオケボックスがおすすめですね。最近のカラオケ店にはビジネス利用の格安プランもあるんですよ。マイクも電源もあるし、大きい声を出してもいいし、飲み物も頼める。気分転換に歌ってもいいですしね(笑)。

レゼンを成功させるには、「プレゼンはファンをつくるためにやる」という考え方も有効です。「印税が欲しいのでCDを買ってください」なんて言う歌手がいたら、まず売れないでしょう。ファンのために本当にいい歌を歌おう、いい小説を書こう、いい演技をしようという人たちが、結果的には大きく成功して、多くのファンに愛されるようになる。ファンができるとなにが強いかというと、アクションが自動化するんです。新曲をリリースすれば、ファンは自動的に自分から購入する。なぜかというと、ファンだから。だからこそ、プレゼンを行う際は、聞き手をファンだと考える。プレゼンを成功に導くために重要な思考だと思いますよ。

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マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術

澤円

ダイヤモンド社 (2017)

【プロフィール】 澤円(さわ・まどか) 1969年5月10日生まれ、千葉県出身。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現日本マイクロソフト)に入社。2011年、マイクロソフトテクノロジーセンターセンター長に就任。2018年より業務執行役員。2006年には十数万人もの世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman’s Award」を受賞した経歴も持つ。また、年間250回以上のプレゼンをこなす、プレゼンのスペシャリストでもある。著書に『マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術』(ダイヤモンド社)など。

【ライタープロフィール】 清家茂樹(せいけ・しげき) 1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。野球好きが高じてニコニコ生放送『愛甲猛の激ヤバトーク 野良犬の穴』にも出演中。

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