「内向型がリーダーに向いてない」はウソ。"控えめなのに部下がついてくる人” の会話術とは

顔を手で覆っている女性

「また今日も会議で発言できなかった……」「内向的な自分は仕事で成功できないのでは?」

そんな悩みを抱えていませんか? コミュニケーションが苦手だからキャリアアップは諦めるしかない——その考えは間違いです。

世界の名だたる成功者のなかには、意外にも「内向型」の人物が少なくありません。「内向型」の強みを理解し、適切に発揮することができれば、自分らしく成功を収めることは可能なのです。

本記事では、内向型の人が仕事で強みを発揮するための方法を、すぐ実践できるアクション例を交えて紹介します。

内向型人間のもつ「静かな強み」とは

「内向型=引っ込み思案、評価されにくい」

このような先入観が、長年ビジネス界の常識とされてきました。しかし近年、この価値観は根底から覆されつつあります。現代の複雑で変化の激しい社会において、内向的な性格がむしろ競争優位をもたらす場面が増えているのです。

まず理解しておきたいのは「内向型」と「恥ずかしがり」は全く別物だということ。『「ひとりが好きな人」の上手な生き方』の著者でライフコーチのティボ・ムリス氏によると、内向型・外向型の本質的な違いは「精神的エネルギーの生産と消費の方法」にあるとのこと。*1

内向型
  • 外界の刺激をそれほど必要とせず、むしろ刺激過多は疲労の原因となる
  • 社交の場で過ごす時間はエネルギーの消耗につながりやすい
  • ひとりの時間で心身を回復させる
外向型
  • 外界からの刺激を多く求める
  • 刺激が不足するとエネルギーが枯渇する
  • 人との交流でエネルギーを得る

「ひとりになる時間をしっかりとらないと、心身が疲れ切ってしまう」という人は、おそらく内向型。決して「恥ずかしがり屋だから内向型」というわけではありません。実際、内向型でもプレゼンテーションが得意な人もいれば、外向型でも人前に出るのが苦手な人も存在します。

では、内向型の人が持つ具体的な強みとは何でしょうか。公認心理師の大美賀直子氏は、以下を挙げています。*2

内向型の強み

1. 卓越した傾聴力

内向的な人は、自分の意見を押し出すより、人の話をしっかり傾聴する傾向がある。そのため、部下の気持ちに寄り添い、意見を引き出すタイプのリーダーになれる。
例:部下との1on1面談で相手の本音を引き出したり、顧客の潜在的なニーズを発見したりする場面で威力を発揮する

2. 慎重な判断によるリスク回避能力

内向的な人は、行動を起こす前によく考えるため、リスクのあることには安易に手を出さない。
例:特に投資判断や新規事業の検討など、失敗が大きな損失につながる場面では、この慎重さが組織の命運を左右することもある

3. 複雑な問題に対する洞察力

内向的な人は、ひとつの物事をじっくり考えるため、多角的な視点で複雑な課題を解決できる。
例:売上低迷の原因を「営業努力不足」で片づけるのではなく、市場環境の変化、顧客ニーズの推移、競合他社の動向など、多角的な視点から真の課題を特定できる

これらの能力は、AI時代のビジネス環境においてますます重要性を増しています。単純な作業が自動化される中、人間に求められるのは「深く考える力」「相手の心に寄り添う力」「本質を見抜く力」——まさに内向型が得意とする分野なのです。

あなた自身の強みを改めて見つめ直し、これらの能力を意識的に活用できているかチェックしてみてください。

「内向型はリーダーに向かない」は間違い

「とはいえ、リーダーに向いているのはやはり外向型の人だろう」

多くの人がこう考えているかもしれません。しかし、これは間違いです。研究により、内向型リーダーが外向型と同等、時にはそれ以上の成果を上げることが科学的に証明されています。

鍵となるのは、「どんな部下を率いるか」。ハーバード・ビジネス・スクール教授で行動心理学者のフランチェスカ・ジーノ氏の研究が、この事実を示しています。*3

部下のタイプ別・最適なリーダーシップスタイル

👥上からの指導を求める従順な部下

→外向型のリーダーが最適

🚀変化をもたらすために率先して動く部下

→内向型のリーダーが最適

つまり...

自主性の高いメンバーが多い場合は
内向型リーダーが力を発揮しやすい!

現代の職場では、創造性と自主性を持った人材がますます求められています。そうした環境において、内向型リーダーの「聞く力」「支える力」は、チームのポテンシャルを最大限に引き出す武器となるのです。

この理論を裏付けるように、世界を変えた経営者の多くが内向型であることも注目すべき事実です。たとえば、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、フェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)の創業者マーク・ザッカーバーグ氏、投資家のウォーレン・バフェット氏などは、その典型例。*4

彼らに共通するのは、派手なパフォーマンスや圧倒的なカリスマ性ではありません。むしろ、静かに市場を観察し、本質を見極め、長期的な視点で戦略を練り上げる能力です。

これらの事例が示すのは、リーダーシップには多様な形があるということ。声高に演説するカリスマ型だけが「理想のリーダー」ではありません。メンバーの声に耳を傾け、一人ひとりの強みを引き出し、じっくりと組織を育てていく——そんなリーダーシップスタイルも求められているのです。

複数人の人物が歯車を抱えている

内向型が成功するための会話術

「リーダーの強みは理解できたけれど、そもそも会話自体が苦手で……」

そんな悩みを抱えている方も多いでしょう。そんなときは第一歩として、「リフレクティブ・リスニング」を取り入れてみませんか。

脳科学者の西剛志氏によると、「リフレクティブ・リスニング」とは「相手が言ったことをそのまま反射して返す」ことを指します。「コミュニケーション相手との心理的距離を縮めることができる」有効な手法です。*5

💬

リフレクティブ・リスニング実践法

基本テクニック

「相手が言ったことをそのまま反射して返す」

→ 相手は「理解してもらえている」と感じ、信頼関係が深まる

💡 1on1の場面での実践例

👤 部下

最近ちょっと仕事に集中しにくくて……特に新しいプロジェクトにあまりやりがいを感じられなくて。前の案件のほうが自分には合ってた気がします

👔 上司

前の案件は自分に合っていたし、やりがいも感じていた。いまのプロジェクトはちょっと温度差がある、という感じかな

👤 部下

はい。もちろん与えられた仕事はやるつもりなんですけど、ちょっと燃えないというか……

👔 上司

ちゃんと責任感を持って取り組んでいるけど、内心ではちょっと物足りなさや違和感を感じているんだね。

✨ ポイント:相手の言葉を繰り返すことで、「理解してもらえている」という安心感を与えている

一見すると単純に相手の言葉を繰り返しているだけのように見えますが、話し手は「自分の話を丁寧に聞いてもらえている」「理解してもらえている」という実感を得られ、自然と信頼関係が深まります。

内向型の人は、「話して引っ張る」よりも「聞いて引き出す」リーダータイプです。メンバーの話にじっくり耳を傾け、そのなかから本音や課題の本質をすくい上げる力を自覚し、育てることができれば、内向的ならではのリーダーシップを発揮できます。

***
重要なのは、外向型の真似をして無理にコミュニケーション能力を高めようとしないこと。もともと持っている強みを活用することで、自然体のまま職場で活躍できるようになります。

内向型の特性を「弱み」ではなく「強み」として捉え直す。それこそが、成功への第一歩なのです。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。

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