日々の仕事に追われる多忙なビジネスパーソンにとって、効率的に勉強を進めることは大きな課題です。東大出身で主に高校生や教員を対象に勉強法を提案している西岡壱誠さんは、「高速回転数勉強法」「さかさ勉強法」というふたつのアプローチをすすめます。これらの方法を活用し、速く確実に成果をあげるポイントを紹介します。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人
【プロフィール】
西岡壱誠(にしおか・いっせい)
1996年3月13日生まれ、北海道出身。偏差値35から東大を目指すも、2年連続で不合格。3年目に勉強法を見直し、偏差値70、東大模試で全国4位になり、2浪の末に東大(文科二類)合格を果たす。入学後、人気漫画『ドラゴン桜2』(講談社)に情報提供を行なう「ドラゴン桜2 東大生プロジェクトチーム『東龍門』」のプロジェクトリーダーを務め、ドラマ日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS)の脚本監修を担当。2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立し代表に就任。高校生に思考法・勉強法を教えるほか、教員には指導法のコンサルティングを行なっている。『「数字のセンス」と「地頭力」がいっきに身につく 東大算数』(東洋経済新報社)、『高学歴のトリセツ』『東大生と読む 源氏物語』『教えない技術』(いずれも講談社)など著書多数。
本を頭から順にしっかり読むことは非効率
日々の仕事をこなしながら勉強をしなければならない社会人にとって、勉強の効率を上げるのは最重要課題とも言えるテーマではないでしょうか。その課題解決のためにまずおすすめしたいのは、「高速回転数勉強法」という方法です。
この勉強法は、ある分野について理解するためにビジネス書や資格試験の参考書などを読むような場合に有効です。やることは難しくなく、まずはとにかく速く1周目を読みきり、そのあとで2周、3周と繰り返し読んでいくだけです。そうすることで、理解が深まり、内容の記憶も定着しやすくなるのです。
ビジネス書や参考書を読むとき、多くの人がある幻想にとりつかれています。「頭から順にしっかり理解・記憶して、1回で終わらせなければならない」という幻想です。
それを前提にすると、読むスピードが必然的に遅くなりますから、ある程度読み進めると最初のほうに読んだ部分は忘れてしまいます。そのことに気づくと「きちんと理解して覚えなければ」と考え、また頭から読み始めることになるのです。そんなことをしていては、時間がかかって仕方ありません。
ざっくりと大雑把に1周目を読みきる
そうではなく、ざっくりと大雑把でいいのでまずは1周目を読みきってしまいましょう。理解できないところや記憶できないところがあっても、まったく気にする必要はありません。その1周目を読んだことで、「こういうことが書いてある」と、なんとなく全体の枠組みを把握すれば十分です。
また、その際には「理解できなかったところ」「気になるところ」「重要だと思うところ」なども認識できるでしょう。それらが見えればしめたもので、2周目以降はそれらのポイントを意識しながら読みましょう。1周目に把握した枠組みの隙間を埋めていくこととなり、理解が深まり、記憶が強化されます。
つまり、2周目以降は1周目の復習をしているということ。内容理解や記憶定着のためには、予習も大切な要素であるのは間違いありません。しかし、それ以上に復習こそが圧倒的に重要だと多くの研究で示されています。
でも、「頭から順にしっかり理解・記憶して、1回で終わらせなければならない」と考えると、そもそも復習できませんよね? 一方、高速回転数勉強法の場合、2周、3周と繰り返し同じ本を読むことのすべてが復習になり、結果的に多くの復習時間を確保できます。そのために、高い学習効果が生まれるわけです。
実際、私が個人的に東大生にヒアリングしたところ、「大雑把に流れを教えてくれる『中高6年間の〇〇が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)というシリーズの本を何度も読んだ」など、高速回転数勉強法で参考書や教科書を読んでいた人は数多くいました。
結末から学びの質を高める「さかさ勉強法」
効率的に勉強をするためにもうひとつおすすめしたいのは、「さかさ勉強法」というものです。本や参考書を結末から読んだり、答えを見てから問題を解いたりする勉強法で、これもまた高速回転数勉強法と同様に、「頭から順にしっかり理解・記憶して1回で終わらせなければならない」という幻想を打破するための方法と言えます。
たとえば、「戦国時代に織田信長という人物がいた」という情報に触れたとして、その後に「織田信長が天下統一に大きく近づく」というのを知らなければ、織田信長について「戦国武将のひとり」という認識でスルーしてしまいます。対して、「織田信長が天下統一に大きく近づく」ことを事前に知っていれば、「なぜ織田信長は天下統一に近づくことができたのか」という目線で教科書や参考書を読めるため、理解が深まり記憶が強化されるのです。
これは日本史の例ですが、社会人がビジネス書などを読む場合にも、結論や「おわりに」、あるいは目次から読むのはとても有効です。「著者はこういうことを主張したいのだな」というのを事前情報としてインプットできるために、「どのような流れでその結論に至るのか」という目線をもつことができ、理解や記憶が促進されます。
ほかにも、たとえばプロジェクトマネジメントの研修を受けるようなときに、事前に成功事例について研究するようなこともさかさ勉強法に該当するでしょう。過去の成功事例について知ることで、「なぜこの手法が有効だったのか」「なぜこのプロセスが重要だったのか」という目線をもてるため、研修の効果も高まるはずです。
【西岡壱誠さん ほかのインタビュー記事はこちら】
成果を確実にする「勉強の基本」。社会人こそ、正答率や点数で目標設定しよう
自分のミス、徹底的に分析してる? 「ミス集め勉強法」で弱点克服!
偏差値35から “読書で” 東大合格! 最強の『東大読書』の真髄を探る。
「身にならない読書」してませんか? 『“東大式” 選書法&読書法』で読書の質は劇的に上がる。
「自分で考えられない人」に足りない2つのこと。超効率的に『考える力』を身につける習慣とは?
勉強効率の黄金比「3:7」が示すアウトプットの重要性。“インプットして満足” は圧倒的に時間のムダ
ふせんを活用「“東大式” 学習計画」がすごい。やるべきことがどんどん具体化される!
現役東大生が「友だちが多いヤツが東大に合格する」と言う根拠。やっぱり “性格がいい人” が伸びていく
全東大志望者のうち年間36,000人が “貫けない” こと。勉強で重要なのはやっぱり〇〇だった
名門進学高出身者が当たり前のように東大合格できる理由。彼らには “これ” が見えている
元偏差値35の東大生が語る「勉強をやり抜ける人」の思考法、「やり抜けない人」の思考法
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。