
デスクに積まれた書類、未読のメール、チャットの通知、手帳に書きなぐったToDoリスト――。やるべきことは山積みなのに、1日が終わってみると「結局何をやっていたんだろう」という感覚に襲われることはありませんか?
そこで今回は、効率的なタスク管理術を、根拠とやり方を添えてご紹介します。忙しくて時間がない人にピッタリな方法もありますよ。自分に合った方法を見つけて、生産性を飛躍的に向上させましょう。
GTD(Getting Things Done)
「やるべきことが多すぎて、何から手をつければいいかわからない……」そんな人におすすめなのが、GTD(Getting Things Done)です。
GTDとは、生産性向上コンサルタントのデビッド・アレン氏が開発した「個人と組織の生産性の向上を助けるメソッド」。気になっているタスクをすべて書き出し、やるべきことを明確にして、ひとつのことに集中できるようにする方法です。
一般社団法人タスクシュート協会理事の佐々木正悟氏は、「自分が置かれている状況、いま、そして次にやるべきことを明白にし、それに集中できてこそ、仕事における成果も上がっていく」と話します。
GTDを実践すれば、たとえば以下のような状況を回避できるでしょう。
- 突発的に発生したタスクが多すぎて、抱えているタスクを把握しきれなくなってしまった
- なにをどのようにやるかイメージできず、いつも初動が遅れがち
抱えているタスクを明確にして細分化することが、タスク管理のポイントなのです。GTDの詳しい実践方法は「やるべきことが一瞬で決まり、100%集中できる!生産性爆上げ「GTD」というテクニック」で詳しく紹介しています。

ポモドーロ・テクニック
「集中力が続かない」「作業時間を短縮したい」という人に試してほしいのが、ポモドーロ・テクニック。これは、25分の作業時間と5分の休憩時間を1セットとした、生産性を上げるための時間管理術です。
イタリア人起業家のフランチェスコ・シリロ氏が1980年代に考案したこの方法は、現在ではビジネスパーソンのタスク管理手法として幅広く用いられています。「ポモドーロ」とは、イタリア語で「トマト」を意味し、シリロ氏が学生時代に使用していたトマト型のキッチンタイマーに由来します。
ポモドーロ・テクニックの実践方法
① タイマーを25分に設定し、作業を始める
② その25分間は、ほかのことは一切せず、目の前の課題に集中する
③ タイマーが鳴ったら、作業が途中でもストップする
④ タイマーを5分に設定して休憩をとる
⑤ 4セット(2時間)ごとに15分~30分の長い休憩をとる
⑥ このサイクルを1日に数回繰り返す
実際に試したライターによると、通常3時間かかる1,200字のレポートを、なんと50分で完成させることができたそうです。ポモドーロ・テクニックの最も重要なポイントは、タイマーが鳴ったら、どんなに中途半端な状態でも必ず作業を中断すること。これがツァイガルニク効果を引き出し、次の作業への集中力を高めます。
詳しい実践方法は「時短にも効果あり!25分間の超集中法『ポモドーロ・テクニック』を実際にやってみた」や「実は〇〇を守らないと効果がない!正しい"ポモドーロテクニック"の使い方」をご覧ください。

アイゼンハワーマトリクス
「重要な仕事は早めに手をつけているのに、毎日残業してばかり……」そんな悩みを抱えているなら、アイゼンハワーマトリクスを試してみましょう。
このフレームワークは、元アメリカ大統領ドワイト・アイゼンハワーの経営スタイルにもとづくもの。アイゼンハワーは、次の言葉を残しています。
重要なことが緊急であることはめったになく、緊急なことが重要であることもめったにない。
アイゼンハワーマトリクスでは、タスクを「重要度」と「緊急度」の2軸で4象限に分類します。
4象限の分類と対応
第1象限:緊急で重要 → 最優先で取り組む
第2象限:重要だが緊急でない → スケジュールに組み込む
第3象限:緊急だが重要でない → 委任を検討する
第4象限:緊急でも重要でもない → 削除する
ジョンズ・ホプキンス大学など世界のさまざまな大学で行なわれた実験によれば、人は「重要な仕事」よりも「緊急の仕事」に手を付けてしまうそう。アイゼンハワーマトリクスを使う最も大きなメリットは、「重要だが緊急でない仕事」を予定に組み入れられるところにあります。
仕事が速い人は、優先順位をつけ、「しなくてもいい仕事」を決めているのです。詳しくは「仕事が速い人は『しない仕事』を決めている — アイゼンハワーマトリクスで仕事を捨ててみた」をご覧ください。

やらないことリスト
「ToDoリストが一向に減らない……」という悩みを抱えているなら、逆転の発想を試してみましょう。それが「やらないことリスト」です。
真面目で責任感の強いビジネスパーソンほど、「ToDoリストが終わらない」ジレンマに陥りがちです。「時間管理が下手なのかも」「自分の能力が足りないのかも」と自分を責めてしまう人も少なくありません。
しかし、ToDoリストが片付かないのには、じつは脳のクセが関係しています。やるべきことを増やすのではなく、あえて「やらないこと」を明確にすることで、本当に重要なタスクに集中できるようになるのです。
「やらないことリスト」の作り方は簡単です。
「やらないことリスト」の作り方
① 現在のToDoリストを見直す
② 「本当に自分がやる必要があるか」を問いかける
③ 他人に任せられること、省略できることを洗い出す
④ 「やらないこと」として明確にリスト化する
⑤ 定期的に見直し、本当に重要なタスクに集中する
この方法を実践することで、タスクの取捨選択が明確になり、本当に重要な仕事に集中できるようになります。詳しくは「タスクが終わらないのは"これ"が原因。仕事の速い人がつくっている「やらないことリスト」を試してみた」をご覧ください。

デジタルタスク管理法
「紙のノートだと見失ってしまう」「複数のデバイスで同期したい」という人におすすめなのが、デジタルタスク管理法です。
デジタルタスク管理法とは、専用のアプリやツールを活用して、タスクの追加・編集・完了を一元管理する手法。クラウド同期により、スマートフォン・パソコン・タブレットなど複数のデバイスから同じタスクリストにアクセスでき、いつでもどこでもタスクを確認・更新できるのが最大の利点です。
近年では、AI機能を搭載したツールも登場しており、タスクの自動分類や優先順位の提案など、より高度なサポートを受けられるようになっています。
デジタルタスク管理法の実践方法
① 自分の業務スタイルに合ったツールを選ぶ
② タスクを入力する際は、期限・優先度・カテゴリーを明確にする
③ 毎日決まった時間にツールを開き、進捗を確認・更新する習慣をつける
④ 完了したタスクは即座にチェックし、達成感を得る
⑤ 週に一度、未完了タスクを見直し、不要なものは削除する
2025年最新版として、特におすすめのツールを3つご紹介します。
Todoist:シンプルさを極めたタスク管理
Todoistは、無駄を省いたシンプルなタスク管理ツール。タスクの追加、期限設定、優先度設定、ラベル付け、プロジェクトごとの管理など、タスク管理ツールとして欲しい機能はおおむね網羅しています。
こんな人におすすめ:
- 自分個人のタスクをシンプルに管理したい
- 余計な機能は不要で、タスク管理だけしたい
- すぐ導入したいので、直感的に操作できることを重視している
TickTick:タスク管理と習慣化を両立
TickTickは、タスク管理と習慣化を両立できるツール。特に「毎日●●をする」「週に●回実施」などの習慣を記録できるのが特徴です。
主な機能:
- リスト・カンバン・ガントチャートでタスクを表示可能
- ポモドーロタイマーがついており、実際の作業時間を簡単に記録できる
- タスクをアイゼンハワーマトリクスで重要度・緊急度別に管理できる
Notion:オールインワンの情報整理
Notionは、タスク管理だけでなく、メモ・データベース・ドキュメント管理も統合したオールインワンの情報整理ツール。リスト・カレンダー・カンバン・データベースなど、自由な形式でタスクを管理できるのが最大の強みです。
ただし、多機能で自由度が高いゆえに、自分に最適な使い方を見つけるには少し時間がかかるかもしれません。
どのツールが自分に合うか診断したい方は、「【2025年最新版】仕事の効率化に最適なタスク管理ツールおすすめ3選」をご覧ください。診断ツールも用意されています。
また、直感的な操作が可能な「Trello」も初心者におすすめです。カードをドラッグ&ドロップで操作する手法を採用しており、ふせんをボードに貼り付けるようなイメージで、誰でも直感的に操作できます。

時間軸分類法
「やるべきことは管理しているのに、なぜか抜け漏れが発生する……」そんな悩みを抱えているなら、時間軸分類法を試してみましょう。
時間軸分類法とは、「予定」と「タスク」を明確に区別して管理する手法です。心理学ジャーナリストの佐々木正悟氏が提唱するこの方法では、時間の性質によって仕事を2つに分類します。
多くの人がしてしまっている誤解が、「『予定』と『タスク』はほぼ同じもの」という考え方。しかし佐々木氏によると、予定とタスクはまったくの別物なのです。
- 予定:開始時刻が決まっているもの(例:●月▲日■時よりA社と打ち合わせ)
- タスク:開始時刻が決まっていない仕事や実務(例:資料作成、メール返信)
タスクは、締め切りに間に合うのであればいつ始めてもかまいません。この違いを理解することが、タスク管理の第一歩です。
時間軸分類法の実践方法
① 手帳やカレンダーに「予定」(開始時刻が決まっているもの)を記入する
② 別のリストに「タスク」(開始時刻が決まっていないもの)を書き出す
③ 予定とタスクを明確に区別しつつ、一括して扱う
※実際には「■時の打ち合わせまでにどのタスクをやるべきか」と考えて行動するため
④ 「他人との約束」(会議、打ち合わせ、納期のある仕事)は最優先で厳守する
⑤ 「自分との約束」(筋トレ、英語の勉強など)は、時間があるときに柔軟に対応する
予定とタスクをきっちりと区別することが、タスク管理の基本。ただし、私たちは実際には「■時の打ち合わせまでにどのタスクをやるべきか」ということを考えて行動を決めています。ですから、予定とタスクを別々に扱うことは現実には難しい。
そう考えると、「予定とタスクは異なるものだ」と認識しつつ、一括して扱うことがタスク管理においては重要になってきます。
また、佐々木氏が特に重視するのが「他人との約束」を厳守すること。「自分との約束」(筋トレ、英語の勉強など)については、わざわざ管理をする必要はありません。自分に時間があるなら、いつやってもかまわないからです。
一方の「他人との約束」については、きちんと管理し、なによりも厳守すべきです。というのも、「『他人との約束』を厳守する」ことこそが、社会人としてなすべきことであり、かつ自分の信用を高めてくれるからです。もっと言うと、「仕事とは『他人との約束』を厳守することにほかならない」とまで言っていいかもしれません。
詳しくは「あなたもきっとしている「タスク管理の誤解」2つ。「予定」と「タスク」はまったくの別物だった」と「信用を高めるための「タスク管理3つの基本」」をご覧ください。

スモールスタート法
「今日も結局、予定していたタスクが終わらなかった...」そんな経験を繰り返している人におすすめなのが、スモールスタート法です。
スモールスタート法とは、所要時間が短いタスクから順番に着手していく手法。『時間最短化、成果最大化の法則』著者の木下勝寿氏が推奨するこの方法は、「重要なタスクから始めるべき」という一般的な常識とは逆の発想です。
タスク管理に関する情報は巷にあふれており、「優先順位を決める」「マルチタスクは避ける」「時間に制限を設ける」といった対策は、多くのビジネスパーソンが一度は耳にしたことがあるはずです。けれど、頭では理解していても実践できない。それが一番の悩みですよね。
木下氏は、仕事をあと回しにする問題点について、「後でやろうとすると記憶が薄れ、アイドルタイムが発生し、精度も下がる」と指摘します。
たとえば、メール返信(所要時間5分)、ミーティング議事録の作成(所要時間15分)、資料作成(所要時間2時間)という3つのタスクを抱えているとします。重要度&緊急度が高い資料作成から始めると、少なくとも2時間は、ほかのタスクのことをいったん忘れる必要があります。
しかし、所要時間の短いタスクから片付ければ、わずか20分でふたつのタスクを完了でき、残りの時間を資料作成に集中できるのです。
スモールスタート法の実践方法
① 今日やるべきタスクをすべて書き出す
② 各タスクの所要時間を見積もる
③ 所要時間が短い順に並べ替える
④ 上から順番にタスクを処理していく
⑤ 短時間で複数のタスクを完了させることで、達成感を得ながら勢いをつける
この方法の最大のメリットは、「タスクが完了した」という達成感を早い段階で得られること。心理的なハードルが下がり、次のタスクにも取りかかりやすくなります。
また、タスク管理の方法は人によって相性が異なります。「どのツールが人気か」ではなく、「自分の業務にフィットするか」という視点で選ぶのがコツです。
「【診断ツールつき】あなたの仕事を"爆速化"する理想の「タスク管理法」はこれだ!」では、あなたに合ったタイプを診断し、それに基づいて最適な管理方法を紹介しています。
あなたに合った方法を見つけることで、タスク管理の時間は減り、実際の作業時間は増えていきます。
より詳しい実践のコツは「『知ってるけどできない』タスク管理を『実行できる』に変える3つのコツ」と「「タスクが山積みで終わらない人」におすすめ。本当に効率よく仕事を進める方法はこれ!」をご覧ください。
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今回ご紹介したタスク管理術は、どれも多くの実践者によって効果が実証されてきたものばかり。ただし、すべての人に同じ方法が合うわけではありません。
まずはひとつ選んで試してみて、自分に合うかどうかを確かめてみてください。合わなければ別の方法を試す。そうやって、自分に最適なタスク管理スタイルを見つけていくことが、長期的な生産性向上につながります。
効率的なタスク管理術を実践しながら、着実に目標に近づいていきましょう。
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STUDY HACKER 編集部
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