「東大生の勉強法」を真似しても伸びない人へ——「見る・聞く・読む」で、勉強効率は変わります

京大首席合格者が解説する認知特性と効率的な勉強法の基本

情報社会といわれる現代では、「成果を出した人のやり方」を再現しようとする学習法が一般化しています。しかし、いくら学習法が優れていても、前提となる個人の特性を無視していれば、努力が成果に結びつくことはありません。京都大学に首席合格し、現在はオンライン個別指導塾を運営する粂原圭太郎さんは、勉強の成果を左右する要因として「認知特性」を挙げます。なぜ同じ学習法でも、アウトプットに格差が生まれるのか。自分に合った学び方を見つけるための考え方を聞きました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

【プロフィール】
粂原圭太郎(くめはら・けいたろう)
1991年6月13日生まれ、群馬県出身。実業家、作家、教育家、競技かるた選手、群馬県安中市観光大使など多くの顔を持つ。2010年に京都大学経済学部経済経営学科に首席合格後、2014年から3年連続で『最強の頭脳 日本一決定戦 頭脳王』(日本テレビ)にファイナリストとして出場。競技かるたでは2019〜2021年に日本一・名人位を獲得。現在は講演活動を行うとともに、オンライン個別指導塾「となりにコーチ」で受講生95.7%の成績向上を実現。2022年、一人ひとりの記憶の特性を診断する「認知特性」の研究者として、「本田式認知特性研究所」の立ち上げメンバーとなる。『とまらなくなる勉強法』(SBクリエイティブ)、『ストレスフリー勉強法』(ダイヤモンド社)、『くめはら先生と学ぶ 中学国語のきほん 50レッスン』(文英堂)、『偏差値95の勉強法』(ダイヤモンド社)など著書多数。

「勉強しているのに伸びない」のは努力不足なのか

世の中には、「東大生の勉強法」など、「これで必ず成果が出る」とうたうさまざまな勉強法があふれています。ただ、それらを真似しても成果につながらず、「自分は努力が足りないのではないか」と悩んでしまう人も数多くいます。

しかし、単純にその勉強法との相性がよくなかっただけという可能性も否定できません。なぜなら、私自身が勉強法との相性によって成績が激変した経験をしているからです。高校時代の私には、成績が伸び悩んでいた時期がありました。その転機になったのが怪我です。首を骨折してしまい、1カ月ほど入院することになったのです。

大学受験が迫っている時期でしたが、首を固定されていたので、机に向かって勉強することができません。そこで、「耳で聞くしかない」と考え、音声を使った勉強を取り入れたのです。すると、それをきっかけに成績が大きく伸び、京大に首席合格することができました。

その経験から、当時の私は「耳で聞く勉強法は誰にでも効果がある」と考え、その勉強法を広めようと本を書いたり、塾で生徒に教えたりしていました。ところが、それでも伸びない生徒さんがたくさんいたのです。そして、どうしてなのかと思っていたときに出会ったのが、医師の本田真美先生が提唱する「認知特性」という考え方でした。

簡単にいえば、目で見て理解しやすいのか、音声で理解しやすいのか、言葉で理解しやすいのかという違いのことです。そこで初めて、「自分に合う方法が、全員に合うわけではない」ということに気づきました。私の場合は、音声によるインプットが得意な「聴覚優位」だったからこそ、「耳で聞く勉強」がハマっていたわけです。

つまり、「東大生の勉強法を真似しても伸びない」といった悩みは努力不足ではなく、自分に合っていない方法を選んでしまったに過ぎない可能性があるということです。

視覚優位・聴覚優位・言語優位の認知特性3タイプを図解

まずは自分の「認知特性」を知る

認知特性とは、「どのように情報を受け取り、理解し、記憶しやすいか」という、人それぞれの認知や記憶の傾向のことです。私の今回の共著『「認知特性」で見つける最適な学び方 わたしにぴったりの勉強法を教えてください!』(三笠書房)では、「視覚優位」「聴覚優位」「言語優位」の3タイプに整理しました。

【認知特性の3タイプ】


◉視覚優位
ものごとを「見る」ことを通じて情報をもっとも効果的に覚えるタイプ。視覚的な情報を受け入れる力が強く、目で見たものを記憶するのが得意。

◉聴覚優位
話や説明を「聞く」ことによって、情報を覚えるのが得意なタイプ。音や声を使って情報を吸収する力が強く、耳で聞いたことを記憶するのが得意。

◉言語優位
文字や言葉を使って情報を覚えるのが得意なタイプ。文章を読むことが好きで、文字を目で追うだけでなく、その言葉や文章の細かな違いに敏感。

みなさんも自分自身の認知特性を知りたくなりますよね。そのためには、まず学習時の感覚を振り返ることが大切です。自分が「見る」「聞く」「読む」のどれにもっとも反応するかを観察するのです。たとえば、図やイラストを見て理解しやすいなら視覚優位、音声を聞くことで記憶が定着しやすいなら聴覚優位、文章を読むことで理解が深まるなら言語優位の可能性が高いといえます。

ただ、認知特性は実際にはもっとグラデーション的なものです。「視覚が10、聴覚が4、言語が6」といったように、人によって特性の強弱や組み合わせは異なります。ですから、本来はもっと複雑なのですが、まずは「人によって勉強しやすいやり方が違う」ということを知るのが重要だと思っています。

もしきちんと自分の認知特性を知りたいのであれば、本田先生が無料提供している「本田40式チェック」を試してみるのもいいでしょう。40問のアンケートに答えることで、自分の認知特性をより細かく把握することができます。

【本田40式チェック】
https://www.cogtem.com/services/service-h40/

認知特性別勉強法:視覚優位・聴覚優位・言語優位の学習方法

自分にとっての「正しいやり方」を見つける

では、それぞれの認知特性によってどのような勉強法が効果的なのか、いくつかポイントをお伝えしましょう。

視覚優位の人は、目から入る情報をイメージとして整理するのを得意とします。テストの際、「教科書の左上に書いてあった気がする」と思い出した経験がある人は、視覚情報の処理が強いタイプといえます。

ですから、教材選びの段階から、見やすいレイアウトのものを選ぶのがおすすめです。文字がぎっしり詰まっている教材よりも、どこになにが書いてあるかを把握しやすいもののほうが、情報が入りやすい傾向があります。また、色分けや図解も有効です。複数の色を使ってノートを整理し直したりイラストを使ったりすることで、情報を視覚的に記憶しやすくなります。

聴覚優位の人は、音声によるインプットとアウトプットを得意とします。音読したり、自分の声を録音して聞き返したりする勉強法が向いています。最近はAIも発達しているので、本を音声化したり、ポッドキャストのように聞いたりもしやすくなりました。

また、聴覚優位の人は、移動時間や家事の時間を使って勉強しやすいという特徴もあります。いわゆる、「ながら勉強」が機能しやすいタイプです。ただ、そのぶん雑音にも敏感なことがある点には注意が必要でしょう。私自身も周囲の音が気になりやすいタイプなので、ノイズキャンセリングイヤホンにはかなり助けられています。

そして最後に、言語優位の人は、自分の言葉で整理することを得意とします。ストーリーとして理解したり、自分の言葉で説明したりすることで、一気に理解が深まります。

また、勉強はテキスト中心で進むことが多いため、言語優位の人はそもそも有利ともいえます。そのうえでさらに効果的に勉強をしようと思うなら、自分が「視覚寄り」なのか「聴覚寄り」なのかによって勉強法をアレンジしてみましょう。図やイラストと組み合わせたほうが理解しやすい人もいれば、音読や会話を通じて理解が深まる人もいます。

勉強法というと、どうしても「正しいやり方」を探したくなりがちです。しかし、誰かにとって正しい方法が、自分にとっても正しいとは限りません。大切なのは、誰かの成功法則をそのまま真似することではなく、自分の認知特性に合った方法を見つけることなのです。

自分に合った勉強法の見つけ方:認知特性による学習スタイル診断

粂原圭太郎さん ほかのインタビュー記事はこちら】

  • 東大生や京大生に共通していた――"勉強ができる人" ほど、定期的に見直していること(※近日公開)
  • 教材を見直したら、一気に理解が進むかも。京大首席合格者に聞く、"認知特性" で見つける勉強法 (※近日公開)

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)

1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。