明日、書店で使える。独学に“ちょうどいい” 教材の選び方

勉強をする人

「やっぱり、これじゃダメかな……」

机の上に広げた参考書を見つめる目が、またしても曇ります。

TOEICの模試で思うような点数が取れず購入した上級者向けの単語帳。プログラミングの基礎も怪しいのに買ってしまった「アルゴリズムとデータ構造」の分厚い専門書。

確かに、最初は意気込んで始めました。しかし、実際は1ページ進むのにも一苦労。理解できない部分が多すぎて、いつの間にか勉強すること自体が嫌になってしまった……。

このように挫折してしまうのは、あなたの意志が弱いからでも、努力が足りないからでもありません。単に「自分に合っていない教材」を選んでしまっているだけかもしれないのです。

では、モチベーションを維持しながら、確実に力をつけていくには、どのように教材を選べばよいのでしょうか? この記事では、脳科学的な研究結果をもとに、独学でも挫折しない「自分に合った教材の選び方」をご紹介します。

明日の書店で、あなたの確実な一歩を支える教材に出会えるはずです。

合うレベルの教材を使わないと挫折しやすい理由

教材を選ぶ際、以下のような選び方をしていないでしょうか?

  • 現在TOEICは400点台だが、最終的には800点台を目指しているので、思い切って800点レベルの単語帳を購入
  • プログラミング未経験だが、いきなり「高度なアルゴリズムとデータ構造」の専門書を購入
  • プロジェクト管理の経験がないのに、いきなり「PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)」のテキストを購入

これらはすべて、現在の自分よりはるかに高いレベルの教材を選んでいる例です。

「どうせやるなら、高いレベルを目指したい!」と考える人ほど、このような教材選びをしてしまいがちです。しかし、いきなりハイレベルな内容に取り組むと、高確率で挫折につながってしまうことが、脳科学的にわかっているのです。

精神科医の樺沢紫苑氏は、人間の脳は「ちょっとだけ難しい」レベルを好み、この状態のときにもっともドーパミン(意欲や集中力、記憶力が向上する)を分泌すると述べています。逆に、無茶な目標設定をすると、脳は拒絶反応を起こす、と言います。*1

つまり、「もう少し頑張れば、達成できる」というレベル設定が、もっとも学習のパフォーマンスを引き出せるというわけです。

にもかかわらず、いきなりハイレベルな教材を選んでしまうと、学習意欲が落ち、挫折につながってしまいます。このような理由から、教材を選ぶ際には、「自分のレベルに合っているか」という点を重視していただきたいのです。

勉強をする人

自分に合う教材とは「正解率が〇%」の教材

では、具体的に自分に合う教材——つまり「ちょっとだけ難しく、ドーパミンが分泌されやすい」レベルの教材は、どのように見つければいいのでしょうか。それは、「正解率が50%であること」がひとつの目安になります。

九州大学教育学部の山口裕幸氏が、J. W. Atkinsonの心理実験を紹介しています。*3

<実験内容>

アトキンソンは、小学生に距離の異なる輪投げをさせる実験を行ないまし他。輪投げの前に小学生たちに、それぞれの距離について成功する確率はどれくらいか予想してもらいました。

その後、自由に輪投げを楽しんでもらい、その様子を観察しました。その結果、小学生たちが一番多く選んだのは、成功の確率が50%と感じている距離からの輪投げでした。

つまり、成功確率が低いと自分自身が感じるものや、逆に高いと感じるものよりも、「成功確率が半々である」と感じるものを進んで行なうことがわかりました。

この実験は、まさに「ちょっとだけ難しい」と感じるレベルがやる気を引き出すことを示しています。そして、その具体的な目安が、「成功確率が50%程度」と感じるレベルだったのです。自ら進んで勉強したくなる教材とは、いまの自分が解いてみて、正解率が50%程度のものを選べばいいということ。この目安を知っておけば、ぐっと教材選びがしやすくなるでしょう。

具体的な教材の選び方

「正解率50%の教材がいい」ということがわかっていても、実際に書店に行くと多くの教材が販売されていて、なかなかうまく選べない……という方も多いのではないでしょうか。

そこで、書店での教材の選び方や、買いに行く前にしておくといいことを紹介します

書店で買い物をする人

事前に行なうこと

サンプル問題でレベルチェックをする

現段階で、どの程度の実力があるかを知るために、実際に問題を解いてみましょう

資格試験の場合、その資格の公式サイトで級別の過去問をダウンロードできることが多いです。また、レベルチェックのために数分でできるミニテストが用意されていることもあります。それらを実際に解いて、自分が現在どのレベルなのかを客観的に判断します。

自分のレベルがわかったら、そのレベルを対象にしている問題集をざっと検索し、目星をつけましょう。問題集によっては、公式サイトでサンプル問題を公開している場合があります。それを実際に解いてみて、自分のレベルに合いそうかを見ておきましょう。資格専用のアプリを活用するのもいいでしょう。

ネットで見られるサンプルには限界があるため、最終的なチェックは書店で行なうのがおすすめです。これについては後述します。

口コミをチェックする

あくまで参考程度ですが、オンラインサイトやブログなどで口コミをチェックしておくと便利です。

このとき、自分と似たレベルの学習者の意見を参考にすることがポイントです。「難しい」「簡単すぎる」など、どちらかにレビューが偏っていないか確認しましょう。

同じレベルの人が多く使っているというのは、選択するうえでひとつの指標になります。レベルチェックと口コミを通して、合いそうな教材を3~5冊リストアップしておきましょう。

書店で確認するポイント

  1. 実際に手に取ってみて、頭のなかでいくつか問題を解いてみましょう。ざっくりで大丈夫です。このとき体感として50%程度解けるようであれば、その問題集は合っているといえます。
  2. 解説を読み、自分にとってわかりやすいかをチェックしましょう。

デザインも重要です。行間が狭い、イラストや図が多すぎると感じるなど、自分にとって使いにくさを感じる要素はないでしょうか。できるだけストレスなく学習を進めるため、使いにくい教材は避けるようにしましょう。

このように準備をしておけば、自分のレベルに合う使いやすい教材を選ぶことができます。

***
自分に合う教材を選択することが、学習を継続するコツです。

いきなり難しい教材を使うのではなく、自分にとってちょうどいい難しさの教材を選ぶように心がけましょう。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。

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