
「また今日も、目の前の仕事をこなすだけで終わってしまったな……」
深夜、オフィスの灯りがまばらになった頃、自席で一息ついたあなたは、ふと溜息をつきます。メールの返信、会議、トラブル対応——慌ただしい一日を思い返しても、「リーダーとしての成長」には何も手応えがない。
「マネージャーになったのに、チームを引っ張る自信がない……」
リーダーシップを鍛えるには、とにかく現場で経験を積むことが一番。そう考えて走ってきたけれど、本当にリーダーとして必要な力を身につけられているという実感はない……。このように漠然と不安を感じたことはありませんか?
じつは、真のリーダーシップを鍛えるためには、現場のみならず「ひとりの時間」の過ごし方も重要です。この記事では、「ひとりの時間」を使って、リーダーシップのベースになる3つの力を鍛える方法をご紹介します。
- なぜ現場ではなく「ひとりの時間」がリーダーシップを育てるのか?
- リーダーがひとりの時間に鍛えるべき力1:考える力
- リーダーがひとりの時間に鍛えるべき力2:自己認識力
- リーダーがひとりの時間に鍛えるべき力3:想像力
なぜ現場ではなく「ひとりの時間」がリーダーシップを育てるのか?
「リーダーとしての力を身につけたい」
そう考えたとき、「現場」や「チーム」のなかで経験を積むことが重要だと思う人が多いのではないでしょうか。たしかにそれも重要です。しかし、リーダーとしての力を高めるためには、あえて「ひとりの時間」をもつことも重要です。
リーダーシップとひとりの時間
ビジネスコーチの大野栄一氏によると……
- 「自分1人の時間」の使い方が、「リーダーシップの質と、リーダー自身の成長を左右する」
- リーダーに必要なひとりの時間とは「目の前の雑事や突発的なトラブルなど、本質的ではないにもかかわらず目や気を奪ってしまうものから距離をとり、自分を掘り下げていく時間」 *1
実際に現場では、目の前の業務に追われて、なんとかその場を切り抜けることで精一杯……ということも多いでしょう。それだけでは、リーダーとしての力を十分に育てることは難しいもの。
なぜなら、忙しさのなかでは「反応する」だけで「熟考する」時間がないから。常に次の問題へと対応を急がされる環境では、自分の決断や行動のパターンに気づく余裕がなく、同じ課題を繰り返してしまう可能性もあります。定期的に「ひとりの時間」をもち、自分の考え・感覚などを見つめ直すことが、リーダーの力を底上げすることにつながるのです。
次項では、「リーダーがひとりの時間に鍛えるべき力」についてご紹介します。

リーダーがひとりの時間に鍛えるべき力1:考える力
リーダーがまず「ひとりの時間」で鍛えるべきは、「考える力」です。
リーダーがまず「ひとりの時間」で鍛えるべきは、「考える力」です。考える力を伸ばすことで、短期的な目標にとどまらない、長期的で本質的なビジョンを導き出せるようになります。また、複雑な状況でも、俯瞰して次のアクションを選び取れるようにもなります。
たとえば、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏は、半年に1回、1週間完全に仕事から離れ、山奥の別荘で「Think Week(考える週間)」を過ごすことで知られています。この時間には会議もメールも一切なく、自らが選んだ数十冊のレポートや本を読み、今後の事業戦略や社会の動向について深く思索を巡らせるのです。*2
いますぐできる取り入れ方
「朝の15分」を予定に組み込む
出社前の15分、カフェや自宅の静かな場所でノートを開き、「最近仕事で気になったこと」や「解決策のアイデア」を自由に書き出します。
たった15分でも継続することで、考える力を着実に育むことができます。
例:
「気になったこと:新人の成長が遅い」→「解決策:週1回の1on1で本人の関心に合わせた小さな挑戦を提案する」
「週1回、1時間の内省タイム」を決める
土曜の朝など、毎週決まった時間に「振り返りと未来を考える」時間を確保します。上記の「朝の15分」よりも、より長いスパンを振り返り、思考します。
たとえば、「今週の成功・失敗は何か」「現状にどんな違和感があるか」「チームメンバーとの関係性」などをテーマにするといいでしょう。
例:
「会議での意見対立が多い」という違和感から、「各メンバーの強みと価値観の地図」を描き、人間関係の全体像を把握する。
「ひとり勉強会」を開く
気になるトピック(例:生成AI、心理的安全性、リモート時代のマネジメントなど)を週に1テーマ選び、記事や書籍から30分だけ深掘りする時間を設けます。
さらに「自分のチームでこれをどう活かすか?」を考えます。
例:
「リモート時代のマネジメント」について学び、「週1回の15分バーチャルコーヒータイム」を導入し、チーム間の自然な情報共有を増やす。

リーダーがひとりの時間に鍛えるべき力2:自己認識力
感情知能(EQ)の提唱者であるダニエル・ゴールマン氏は、リーダーにとってもっとも重要な資質のひとつとして「自己認識」を挙げています。*3
自己認識とは
自分の感情や思考パターン、価値観、強みや弱みを的確に理解する力のことです。*4
リーダーという立場になると、他者に与える影響はますます大きくなります。自分自身の状態を正確に把握していなければ、組織に不要な混乱をもたらしてしまうリスクもあるでしょう。
自分の感情や思考パターンを知ることは、自分の行動がチームに与える影響を予測し、コントロールする第一歩なのです。
いますぐできる取り入れ方
1日5分の「感情ログ」
その日感じたことを短く書き出します。嬉しかったこと、モヤっとしたことなど、自分の感情に名前をつけるだけで、思考のクセや反応パターンに気づけます。
例:
「チーム会議で意見が割れたとき、焦りを感じた→結論を急ぎすぎる傾向があるのかもしれない。多様な視点を聞く忍耐力を持とう」
「なぜ?」を3回繰り返すセルフ対話
何か行動や反応をしたときに、「なぜそうしたのか?」を3回問うことで、表面的な理由の奥にある本当の価値観や思考の軸が見えてきます。
例:
「なぜ部下の仕事ぶりにイライラした?→期待通りじゃなかった→なぜ期待してた?→完璧であるべきという思いがあるから」
「理想のリーダー像」とのギャップを観察
自分が憧れるリーダー像や、理想とする姿を定期的に書き出し、今の自分とのギャップを観察する。
「まだできてない」ではなく、「成長の途中」としてとらえることがポイント。
例:
理想像:メンバー一人ひとりの強みを引き出すリーダー
現状:まだメンバーの強みを明確に言語化できていない→来月までに各メンバーの強みを本人と一緒に探る時間を作ろう
【自己認識力を高めるポイント】
このように自分の行動や思考、感情を文字にして言語化することで、自己認識がはっきりとしてきます。目の前の仕事と直接関係がないように感じますが、このような深堀りが仕事における自分の価値観の軸をつくることにつながります。

リーダーがひとりの時間に鍛えるべき力3:想像力
3つ目に鍛えるべきは「想像力」——「他者の視点を想像する力」です。「パースペクティブ・テイキング」とよばれることもあります。*5
リーダーの役割とは、ただ答えを出すことではありません。チームメンバーひとりひとりの考えを尊重し、多様な意見を引き出し、よりよい方向へ導く力が求められます。
そのために必要なのが、「自分ではない誰かの視点を想像する力」です。
「なぜこのメンバーはその行動をとったのか?」
「この部下は何に不安を感じ、何に価値を置いているのか?」
「いま、自分の言動は相手にどう受け取られているのか?」
こうした問いをもち、静かな時間のなかで相手の視点に立って思考を巡らせることは、共感力や対話力の土台となります。
表面的なテクニックではなく、「本当にこの人の気持ちや立場に立って考えてみる」ことができるかどうかが、信頼されるリーダーをつくる鍵になるのです。
いますぐできる取り入れ方
「想像のワーク」
この力を鍛えるための方法としておすすめなのが、「想像のワーク」です。たとえば、次のような問いをもとに、自由に思考を広げてみてください。
- 「チームで最近起こった問題について、部下のAさん、Bさんの立場から見たらどう感じるか?」
- 「もし自分が新入社員だったら、いまの職場環境をどう感じるか?」
- 「いまの自分のリーダーシップを、他人が客観的に見たらどう評価するか?」
ひとりの静かな時間は、こうした「思いやりの想像力」を育てる最高のトレーニングの場になります。
📌 リーダーシップを磨く3つの力のまとめ
- 考える力 — 自分だけの静かな時間で、長期的なビジョンや複雑な状況を俯瞰する力を育てる
- 自己認識力 — 自分の感情や思考パターン、価値観を理解することで、より意識的な行動ができるようになる
- 想像力 — 他者の視点に立って考え、多様な意見を引き出し、チームを導く土台となる
***
忙しさのなかで埋もれがちな「ひとりの時間」こそ、リーダーとしての土台を育む貴重な瞬間です。自分を知り、人と向き合い、未来を描く。そのための3つの力を、今日から少しずつ育てていきましょう。
*1 日経BOOKプラス|スキルに頼るから人が動かない リーダーこそ「1人の時間」が重要
*2 プレジデントオンライン|「ビル・ゲイツも30年以上やっている」一流経営者がこっそり続けている"情報断食"の効能
*3 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|組織のリーダーとして成功を収めるにはEQ(こころの知能指数)が不可欠である
*4 Asana|EQ (心の知能指数) とは何か?効果と高める方法を解説
*5 日本の人事部|パースペクティブ・テイキング
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。