すべての経験を学びに変える。仕事で結果を残すための「経験学習モデル」を知っているか

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「さまざまな本を読んでインプットしているけれど、実践へ活かせない」
「仕事に一生懸命取り組んでいるのに、ミスがいっこうに減らない」
このように、努力しても仕事の成果へなかなかつながらないという悩みを抱えている方はいませんか?

仕事で成果を上げるためには、積み重ねてきた経験から学びを最大限に引き出さなければなりません。この記事では、すべての経験を学びに変換する「経験学習モデル」について解説していきます。

実践に重きを置く「経験学習モデル」

教育理論家であり組織心理学者のデイヴィッド・コルブ氏によって提唱された「経験学習モデル」とは、経験が知識に変換されるという学習モデルです。このモデルは、「具体的経験」「内省的観察」「抽象的概念化」「能動的実験」の4ステップからなる循環型サイクルで構成されています。

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「経験学習モデル」の大きな特徴は、日常の直接的な経験にフォーカスを当てた、より実践的な学習を重視していること。生活上の利益を重視するプラグマティズムの思想を根底にもち、「資料を読んで知識を覚える」といったインプットのみの学習は、実際の生活では役に立たないと解釈されています。

もちろん、インプット学習が悪いというわけではありません。しかし、内省をともなった経験がなければ、次へ活かせませんよね。「経験学習モデル」に則った学び方をすることで、「この場面ではどうすればよいか」という認知発達が促進され、仕事の成果へとつながりやすくなるのです。

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「経験学習モデル」の実践方法

「経験学習モデル」の具体的なプロセスと、ビジネスの場面における実践方法についてご紹介しましょう。

【ステップ1】具体的経験

前述のコルブ氏によって定義される「具体的経験」は、人が環境に働きかけることで起こる相互作用を意味しています。たとえば、「ビジネスパートナーを見つける」という行動が、さまざまな人を巻き込んでステークホルダー化していくといったような経験が挙げられるでしょう。

また、立教大学経営学部教授の中原淳氏によれば、「具体的経験」はビジネス志向・管理志向によらないそう。つまり、プライベートで友人と遊びに行った経験や、大学時代に取り組んだサークル活動の経験も、学習プロセスの一部として含まれます。「経験学習モデル」では、自ら選択して、何かを具体的に経験することがはじめの一歩となるのです。

【ステップ2】内省的観察

次の「内省的観察」のステップでは、自分の経験を俯瞰的な立場かつ幅広い観点から振り返り、意味づけを行ないます

中原氏によると、「内省」には2種類あるそう。ひとつは「個人の行動・ふるまい」に焦点を当てた内省で、具体的な作業や発言を振り返ります。「重要な仕事の引き継ぎがスムーズにできなかった」「作業の報告内容が具体的ではなかった」といった問題点を洗い出していくのです。

そしてふたつめは、「ある個人が存在している前提や状況、またその前提・状況に作動する権力や社会的関係」を対象とした内省。たとえば、「緊急の人員補充のため、上司の指示でチームに〇〇さんが参加している」など、ある状況が作り出された前提部分を振り返る作業です。

勉強と同じように「経験しっぱなし」の状態でいると、同じ失敗を繰り返しかねません。具体的経験のなかで「どこが悪かったのか」「どこが失敗の原因になったのか」を明確にすることで、次の機会に成果を出すための対策を考えられるようになるのです。

たとえば、「新商品開発プロジェクトで製造を請け負うA社との交渉を担当したが、相互利益の調整ができずに失敗してしまった」例を考えてみましょう。経験を客観的に振り返ってみると、「交渉を成功させることだけを意識してしまっていたため、相手の状況や提案に対して耳を傾けていなかった」のように振り返ることができるはず。

また、これらの経験から、「交渉は単に自分の希望を押し通す場ではなく、自分と相手との希望を擦り合わせて妥協点を探る場だ」という意味づけができるでしょう。

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【ステップ3】抽象的概念化

次の「抽象的概念化」というプロセスでは、経験を抽象化・一般化・概念化し、別の状況でも応用可能な知識やルール、体系をつくります

パーソルラーニング株式会社の研究室長を務める坂本雅明氏によれば、先のステップで振り返った内容は、今後へ活かせるようにするため「理論」という形でまとめておくとよいそう。理論とは言っても、自分に当てはまればそれで十分。経験から学んだことを「自分なりのルール」へ変換していくのです。

「次はどうすればもっとうまくいくか」という具体的な対策を考えなければ、同じ状況へ遭遇した場合にまた失敗する可能性が高くなってしまいますよね。前述のコルブ氏も、ほかに応用できる知識・ルールをつくり出すプロセスこそが「学習」であると伝えています。学びがなければ成功もないのです。

たとえば、前出の「交渉がうまくいかなかった」経験については、「交渉には双方向のコミュニケーションが欠かせない」と一般化できるでしょう。すると、「もし相手と意見が衝突したら、客観的な根拠をもとに両者の意見を調整する」「相手に共感の姿勢を見せ、柔らかな物腰で臨む」といった普遍的な策が浮かんできます。

【ステップ4】能動的実験

最後のステップ「能動的実験」では、「抽象的概念化」でステップでつくり出したルールや体系を実践します

中原氏によれば、経験学習モデルのサイクルを継続させるためには、経験により構築された知見がアクションされてこそ意味があるそう。前出の坂本氏も、学びのあとに検証のステップを入れることで、自分が導き出した知識やルールが実際に効果的かどうかを確認できると伝えています。

たとえば、「交渉がうまくいかなかった」という経験から学んだ「もし相手と意見が衝突したら、客観的な根拠をもとに両者の意見を調整する」という知見を、次の交渉の機会で実践してみてください。そうすれば、「前回と比較して相手方へ歩み寄ることができるようになり、交渉がスムーズに進んだ」などと仕事の成果を上げられるはず。たとえそこでまた失敗しても、これまでのステップを何度も繰り返し経験学習のサイクルを回すことで、着実に高い成果へと近づいていけるでしょう。

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仕事で成果を出すには、経験をただ積むだけでなく具体的な学びへと変換させ、検証するプロセスが必要不可欠。経験学習モデルのプロセスをふまえ、ビジネスでの経験を成長の機会へと有効活用していきましょう。

(参考)
日本労働研究雑誌|経験学習の理論的系譜と研究動向
STUDY HACKER|「論理的思考力」と「経営の基礎知識」を身につければ、これからの時代を生き残れる。
WIRED|2020年代の学び場:ビジネススクールの枠を越えた近未来の“ラーニング・コミュニティー”
PERSOL|経験から学ぶ ―経験を中心とした学習モデル―

【ライタープロフィール】
YOTA
現在、大学の法学部にて法律を専攻中。哲学や心理学にも興味があり、個人的にアドラー心理学を学習中。趣味は音楽を聴くことやお笑い鑑賞。

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