間違えた問題を"付箋で分解"するだけ。勉強の伸び悩みが解消する東大生のノート術

付箋を使った「わからない分解ノート」の完成例

「また同じところで間違えた……」

勉強計画も立てたし、参考書も何度か読み返し、答えもチェックしている。まじめに勉強しているのに、模試の点数は伸び悩むだけ。仕事が忙しくても時間を割き、休日も勉強しているのになぜ? もっと勉強時間を増やすべきなのだろうか……?

――こんな悩みを抱えていませんか?

じつは、成果が伸び悩む原因は、勉強時間でも地頭のよさでもありません。

勉強しても成果が出ない人に共通しているのは、「わからない」の解像度が低いことです。理解が不十分なのに勉強を繰り返しても、同じところでつまずくだけでしょう。

今回の記事では、振り返りに使える東大生考案のノート術、「わからない分解ノート」を紹介します。科学的な根拠と筆者の実践例をもとに、「繰り返しても伸びない勉強」を「着実に積み上げる勉強」に変えるヒントをお伝えします。

勉強ができる人は「わからない」を放置しない

参考書を読んで理解したと思ったのに、テストでは点数が低かった……という経験はないでしょうか。じつは、勉強が苦手な人とできる人の差は「わかる」を疑う力なのです。

そもそも、私たちは自分の能力を客観視することが苦手です。心理学では自己評価と実際の能力のズレが生じる現象を「ダニング・クルーガー効果」と呼びます。

元明治大学教授で行動経済学・ミクロ経済学が専門の友野典男氏は、心理学者のデヴィッド・ダニング博士とジャスティン・クルーガー博士の実験内容を紹介し、能力の低い人には以下の認知の偏りがあるとまとめています。*1

(1)自分の能力を過大評価する。

(2)他者の能力を正確に評価できない。

(3)評価の不適切さをまったく認識できない。

一方で「知識や見識に優れた人の方が自分の能力を過小評価する」と友野氏は伝えています。

これを勉強に置き換えると――

  • 勉強が苦手な人 →「自分ならこれくらいは理解できる」と思いやすい
  • 勉強が得意な人 →「自分は理解できているのだろうか」と考えやすい

――このように、能力の自己評価に関して違いが見られます。だから勉強が得意な人は、「わからない」を放置せずに振り返りを行なうのです。

ただし、振り返る際にも注意が必要です。なぜなら私たちは、自分の能力を正確に見られないだけでなく、"理解した" という感覚もあやふやだからです。

アメリカの医師国家試験にトップ1%の成績で合格した米国内科専門医の安川康介氏は、私たちの脳は深く理解していないのに「自分の知識や習熟度を過大評価してしまうことがある」と注意を促します。この心理現象は「流暢性の錯覚(幻想)」と呼ばれているそうです。*2

たとえば問題の答えを読み「そういう解法だったんだ」と確認したあと、どんどん次に進む人もいるでしょう。しかし、振り返って「どこを間違えたの?」「間違えた理由は?」と原因を考えれば、具体的に言葉にできないこともあるはずです。

つまり、私たちは「わからない」を十分に理解していないのです。だからこそ、「わからない」を分解してみる価値があります。

分解すれば、「知識不足」や「単なる読み間違い」、「勘違いで覚えていた」などが明確になるはず。そこで東大生考案の「わからない分解ノート」が大いに役立ちます。

弱点を洗い出す「わからない分解ノート」とは?

「わからない分解ノート」とは、日本最難関の東京大学理科三類に働きながら合格した経験をもつ片山湧斗氏考案の、"わからない" を分析するノート術です。*3

このノート術は、片山氏が東大受験をする際に活用していたといいます。構造のイメージは以下のとおりです。

わからない分解ノートの構造例:「わからない」を3要素に分けロジックツリー状に展開した図

「わからない分解ノート例」(画像は筆者にて作成)

このノートはまず、「わからない」を3要素に分解します。そしてその要素をさらに分解し、また分解……と繰り返し分析していきます。そのかたちは原因追究や問題解決に使われるフレームワーク「ロジックツリー」に似ています。

同じく東大合格経験者の西岡壱誠氏(株式会社カルペ・ディエム代表)は、東大生に共通する思考習慣について次のようにコメントしています。*3

東大生には、一つの課題に対して、複数の原因を挙げて分解するという思考習慣を持つ人が多くいます。

つまり東大生は、「できなかった理由」を曖昧なままで終わらせません。テストで間違えたときも「理解不足」なのか、「計算ミス」か、それとも「問題文の読み取り」なのかと原因を分解して整理します。よって改善すべき点が、徐々にはっきりと見えてくるのです。

語学の勉強に「わからない」を分解してみた

そこで筆者も語学の勉強における「わからない」を分解してみました。

ずっと同じ勉強法を続けていますが、最近は成果が伸び悩み、モチベーションも低下していると感じます。その原因を、「分解ノート」で細かく探ってみることにしたのです。

まずは筆者の勉強の悩みを付箋に書き、左端に貼り付けました。

分解ノートの第1ステップ:悩みを付箋に書いて左端に貼り付けた状態

そして次は、「勉強の成果が伸び悩む」原因をおおまかに分解します。

分解ノートの第2ステップ:「勉強量」「苦手な部分」「集中力の問題」の3要素を洗い出した状態

「勉強量」「苦手な部分」「集中力の問題」など、3要素を洗い出しました。さらにそれを分解して――

分解ノートの第3ステップ:各要素をさらに細かく分解した状態

最後はそれぞれの解決方法を、黄色い付箋に書いてみます。個々の原因を細分化したので、改善策も具体的に考えることができました。

分解ノートの完成形:各原因に対応する解決策を黄色い付箋に書き加えた状態

"分解ノート" を使えば「分析がよりクリア」になる

最後に、「分解ノート」の実践で得られた効果を紹介します。

原因分析がスムーズ

まずは、原因分析が思ったよりスムーズにできました。

このノート術では、ロジックツリーで要素を段階的に洗い出せるため、必然的に思考が整理されていきます。そのため、いつもの振り返りより効率よく原因を特定することができます。

視覚化で具体性が増す

また、視覚化によって改善策が具体的になるのも大きな利点です。

視覚化しながら分解(付箋でマッピング)していくと、その奥にある個々の要因が思い浮かびやすくなります。そうすると、個別の対策を具体的に考えることができるのです。

漠然としたことにも気づける

そして、もうひとつは「なんとなくの原因」にも気づけるようになることです。

以前は「疲れている」「やる気が出ない」とまとめていましたが、分解してみると、実際には複数の要因が絡んでいることが見えてきます。"何につまずいている" のかを視覚化することで、「能力や体力だけの問題ではない」と気づくことができました。

ぜひみなさまも、ご自身の「わからない」を分解してみてください。

***

勉強ができる・できないの差は、能力ではなく、「わからない」の解像度を上げるか・下げたままにしているかの差でした。

  • 「本当にわかったのかな?」
  • 「どれくらいの理解度なのかな?」

――と、自分の不透明な部分に向き合えば、勉強の成果を最短で上げることができるでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 「わからない分解ノート」はどんな勉強に使えますか?

A. 資格試験、語学学習、受験勉強など、あらゆる分野に活用できます。「なぜ間違えたのか」を段階的に分解していくため、苦手分野の特定や弱点克服に特に効果的です。

Q. ロジックツリーと「わからない分解ノート」の違いは何ですか?

A. ロジックツリーはビジネスの問題解決などに広く使われるフレームワークです。「わからない分解ノート」は、このロジックツリーの構造を勉強の「わからない」の分析に特化させたノート術です。

Q. ダニング・クルーガー効果を勉強で防ぐにはどうすればよいですか?

A. 「本当に理解できているか」を定期的にセルフチェックすることが大切です。問題を解いたあとに「なぜその答えになるのか」を自分の言葉で説明してみると、理解の浅い部分に気づきやすくなります。

Q. 「流暢性の錯覚」とは何ですか?

A. 参考書や解説をスラスラ読めたことで「もう理解できた」と錯覚してしまう心理現象です。読んだ直後は理解できたように感じても、実際にはまだ定着していないことが多いため、アウトプットによる確認が重要です。

Q. 忙しい社会人でも「分解ノート」は実践できますか?

A. はい、実践できます。付箋を使えば、短い時間でも少しずつ要素を書き出していけます。通勤時間や休憩中に1要素だけ書き足すなど、スキマ時間での活用も可能です。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。