机がなくても、時間がなくても。忙しい社会人が勉強を続けられる3つの思考法

勉強そっちのけでスマートフォンをダラダラ見ている人

仕事から帰り、机に向かったのは夜10時。「今日こそは……」と問題集を開いたものの、難解な用語ばかり。気がついたらスマートフォンをダラダラ見て、現実逃避してしまっている——。

みなさまにも、そんな経験はないでしょうか?

「この資格があれば、上司からも評価される」と始めた勉強。しかし、仕事はどんどん忙しくなる。結果、最初の1週間は順調だったけれど、難しい単元にぶつかると意気消沈してしまい、いつの間にか "勉強をしない日" が増えていった……。

そんな自分に対し「なんで頑張れないの?」と責め立て、自己嫌悪に陥ることがあるかもしれません。でも、本当に、

努力が足りないのでしょうか?
情熱が足りないのでしょうか?

——いいえ、それは違います。ビジネスパーソンの勉強で大切なのは、「考え方」の見直しです。

今回の記事では、「勉強が続く人になれる3つの思考習慣」をご紹介します。みなさまの学びが長く続く一助となれば幸いです。

1. 習慣は "トリガーで起こる" と考え直す

私たちは行動が遅れると、つい「やる気が出なくて……」と言ってしまうことがあります。しかし、言うべきは「あ、トリガーを忘れた!」かもしれません。

じつは、トリガー(プロンプト)こそが行動の起点。悪い習慣もよい習慣もトリガーの調整が必要なのです。

勉強を始めた当初、誰もがやる気をもっていたはずです。でも、そのやる気はどこから生まれたのでしょうか。

もしかしたら——

 
 
  • SNSやブログで知的好奇心を刺激された
  • 職場で知識不足を痛感し、勉強の必要性を感じた

——こうした出来事が引き金かもしれません。

「やる気が起きない」「行動できない」と思っているのなら、それは行動を起こしていた「大きなトリガー」が消えてしまったからなのです。だからこそ、トリガーの設計をし直すことが必要となります。

『習慣超大全』(ダイヤモンド社,2021)の著者で、スタンフォード大学行動デザイン研究所創設者兼所長の行動科学者、BJフォッグ博士は、行動には「能力(ability)」と「動機( motivation)」、そして「きっかけ(prompt)」の3要素が揃ってこそ、習慣化は成功すると述べています。

ちなみに、「きっかけ」は「よい習慣」に使えるだけではありません。フォッグ博士は、「もし行動をやめたい、減らしたいのなら、きっかけを最小限にするか減らす必要がある」と述べています。*1

つまり、勉強習慣を定着させるには「勉強習慣のきっかけ」と「誘惑となるきっかけを減らす」両方を見直すことが重要なのです。

たとえば、「帰宅後、すぐベッドに入りスマホをダラダラ見る」習慣があるのなら、以下のような "きっかけの調整" が効果的かもしれません。

  • 不要な行動:ベッドでスマホをダラダラ
    💡ダラダラするきっかけをなくす
    →ベッドに洗濯物を置いておき、すぐ横になれない配置にする

  • 必要な行動:資格試験の問題集を解く
    💡問題集を解くきっかけをつくる
    →夕飯を食べるテーブルに問題集を開いた状態に置いておく

まずはこの「小さなきっかけ」に頼ってみましょう。

慣れてくれば次第に脳が学習し、自動的にできる状態になることも期待できるはずです。

食卓に開いた状態で置かれた問題集

2. いつどこでも勉強できると考え直す

「決められた時間」「整った机」「問題集を揃える」——たしかにこれらは、勉強に最適な条件です。しかし、残業続きで忙しい日々。プライベートでの急なトラブル……。現実的には「時間」や「環境」を整えられない日がたくさんあるでしょう。

一度「勉強とは何か」を見直してみる必要があります。

そこで視点を変えてみると――

勉強は必ずしも、ペンと教材、机がなければ成立しないわけではありません。「何も揃っていない」状態でも、勉強はできるのです。なぜならば、「ただ学習内容を思い出す」だけでも "立派な勉強" と言えるからです。

ロード・アイランド大学の認知心理学教授で、The Learning Scientistsの共同創設者のミーガン・A・スメラッキ博士は、ワシントン大学など研究チームの報告を紹介し、以下のとおりに述べています。

主な研究結果として、教科書を何度も繰り返し読んだり勉強したりするよりも、学んだことをリトリーバル練習(思い出す学習を)するほうが、優れた成績につながると示されました。

これは、ワーキングメモリが高い学生でも低い学生でも、能力に関係なく共通して見られた結果です。*2

ワーキングメモリとは、情報を一時的に脳に置いておく機能のこと。つまり、思い出す学習方法は、認知機能の高さ・低さに関係なく、誰もが効果を期待できる方法なのです。

代表的なものにフラッシュカードが挙げられますが、思い出す勉強法は以下のかたちでもできます。

  • 昨日学んだ内容を3点だけ思い出す

  • 頭のなかで誰かに説明するつもりで学習内容をまとめてみる

正しく思い出せなくてもOK。「あれ、思っていたよりも理解できていない?」と理解度の確認にもなります。

通勤電車に乗りながら、もしくは休憩の合間に、いつでもどこでもこの勉強法を試してみてください。

休憩の合間にリトリーバル練習をして思い出し喜ぶビジネスパーソン

3.「最悪と理想の未来」をセットで考え直す

勉強し始めのとき、多くの人は理想の未来を思い描くのではないでしょうか。ただ、どうしてもその先で、仕事が大変になったり、突発的な出来事が起こったりなど、現実的な課題に直面してしまいます。

大きなことを成し遂げた自分の姿を想像するのは楽しいものですが、それだけでは続かないのです。「最悪な未来」も一緒に想像することが必要です。

モチベーション研究の専門家、筑波大学人間系教授(教育心理学)の外山美樹氏は、特に「長期的で困難な目標」におけるモチベーション維持に「心的対比」というアプローチが有効だと語ります。*3

心的対比とは、ポジティブな未来だけでなく、その先で直面しうる現実的な困難や障害にも目を向ける方法のこと。外山氏はこう説明します。*3

「理想の未来」と「現実の障害」をあえてセットで思い描くことで、目標達成に向けた現実的な覚悟や行動意欲が高まりやすくなるのです。

「英語の勉強」を例に挙げましょう。

まず、勉強計画を立てるときにイメージするのは、このように「成功した理想の自分」かもしれません。

  • 3か月後にはTOEIC800を超えている
  • 英語のメールや資料をサクサク読めるようになる

しかし、「現実に起こりうる障害」を考えると、以下の内容が思い浮かびます。

  • 仕事が忙しくなり「今日は無理」が続いて勉強できず
    自己嫌悪に陥る
  • 単語や文法を覚えてもすぐ忘れる
    「やっても意味がない」と感じる

そこで理想と現実のギャップに気づき、こうした対策を練ることができます。

  • 忙しくなる前提:「勉強しない日」を最初から許可する

  • 忘れる前提:「覚える」より「思い出す」を繰り返す

これなら遠く離れた理想の未来が、道筋の見えるリアルな未来になったのではないでしょうか。「よしやろう!」という気持ちも生まれやすくなるはずです。

「最悪な未来」と「理想の未来」をセットで想像することは、行動の始まりと継続をしっかりと支えてくれるに違いありません。

***
続けられない自分を責めて、自らを疲弊させないでください。

考え方の転換を図れば、勉強は「大変なもの」から「そう難しくない」に変わり、「日常的な習慣」へと姿を変えていくでしょう。

FAQ(よくある質問)

Q 勉強が続かないのは意志が弱いからですか?

A いいえ、意志の弱さではありません。勉強が続かない原因の多くは「行動を起こすきっかけ(トリガー)」の設計不足にあります。BJフォッグ博士の研究によると、行動には「能力」「動機」「きっかけ」の3要素が必要です。まずは勉強を始めるトリガーを見直し、誘惑となるきっかけを減らす工夫から始めてみましょう。

Q 忙しくて勉強時間が取れません。どうすればいいですか?

A 机に向かう時間がなくても「思い出す」だけで勉強になります。研究によると、学んだ内容を何も見ずに思い出す「リトリーバル練習」は、教科書を繰り返し読むよりも効果的です。通勤電車や休憩時間に、昨日学んだことを3つ思い出すだけでも立派な勉強になります。

Q 最初はやる気があるのに、途中で挫折してしまいます。どうすれば続けられますか?

A 理想の未来だけでなく「最悪の未来」もセットで想像する「心的対比」が効果的です。たとえば「仕事が忙しくなって勉強できなくなる」という障害を事前に想定し、「勉強しない日を最初から許可する」などの対策を立てておくことで、現実的な計画が立てられ、挫折を防ぎやすくなります。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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