部下との対話はまずこの3つの型から。信頼され、成果をあげるリーダーに手にしてほしい「対話力」という武器

上司と部下の世代間ギャップ・Z世代マネジメントの悩みを抱える管理職イメージ

「部下のためを思って配慮したのに、なぜか不満をぶつけられてしまった」
「ハラスメントが怖くて、どこまで踏み込んでいいのかわからない」
「自分たちの世代の当たり前が、Z世代にはまったく通用しない」

対話型ワークショップを通じて組織開発を支援する私たち KURUMAZA のもとには、こうした声が日々届きます。

上からは生産性向上や人的資本経営を求められ、下からはワークライフバランスや個人の尊重を求められる。

板挟みの中で、誰もが手探りのマネジメントを続けている。

話してくれるのは、チームのことを真剣に考え、試行錯誤を続けている、誠実な管理職の方ばかりです。

これだけ一生懸命やっているのに、なぜこんなに報われないのだろう。本記事では、その問いに向き合ってみたいと思います。途中から、私たちが提唱するキャラクター「タイワマン」にも登場してもらいながら、一緒に考えていきましょう。

取材・文/STUDY HACKER編集部

【プロフィール】
KURUMAZA(くるまざ)
KURUMAZAは、車座になって対話する機会を提供し、関係性に変化を起こし課題を解決しながら組織力強化を図る会社です。人間関係によって生じているチーム内の問題を完全オーダーメイド型のワークショップによって解決します。

「ズレ」とは何か

上司と部下のあいだのすれ違いは、どちらかが悪意を持っているわけでも、能力が低いわけでもありません。

同じ職場で、同じ言葉を使いながら、育ってきた時代も経験も違う人間が一緒に働いているために起きる——それが、認識の「ズレ」です。

たとえば「頑張る」という言葉。

上司世代にとってそれは、時間をかけ、我慢し、量で示すことでした。一方、Z世代にとっての「頑張る」は、効率よく成果を出し、消耗せずに走り続けることです。

 

上司の目に「やる気がない」と映る部下が、自分の価値基準では全力で頑張っている。

上司が「配慮」だと思ってやったことが、部下の受け取り方では「排除」に見える。

——これが「ズレ」の正体です。

部下もまた、成功したいし、上司とうまくやりたいと思っている。ズレているのは意欲ではなく、物事のとらえ方なのです。

ズレに気づいていないとき、人は誤解したまま判断してしまいます。

「やる気がない」「配慮が伝わらない」——その評価は、相手の価値観や背景を知らないまま下されたものです。誤解に基づいた判断が、さらなる誤解を重ねていく。

逆に、お互いの価値観の違いを知っていると、同じ場面でまったく異なる問いが立てられます。「やる気がないのか」ではなく、「この人にとっての頑張るは、どういう形なのか」と。その問いひとつで、次の一手が変わってくるのです。

上司と部下の価値観のズレ・職場のすれ違いを表すイメージ

善意の配慮が、すれ違いに変わるとき

育児休業から復帰したばかりの部下がいるとします。あなたは「無理をさせてはいけない」と配慮し、負荷の高い新プロジェクトから彼女を外しました。

しかし返ってきたのは、感謝ではありませんでした。

「なぜ私にはチャンスを与えてくれないのですか?」

 

「期待されていないようで、ショックです」

 

最悪の場合、この配慮が「マタハラ」として受け取られることすらあります。理不尽だと感じますよね。あなたは彼女のために判断した。その気持ちは本物です。

でもここで起きているのも「ズレ」です。

あなたの判断基準では「負荷を減らす=気遣い」でした。しかし彼女の受け取り方では、復帰後のプロジェクト参加は「まだ戦力として期待されているかどうか」の確認でもあった。

そして彼女もまた、上司がどんな思いで判断したかを知りません。「外された」という事実に「期待されていない」という解釈を重ねてしまう。ズレは双方向に起きている。どちらが悪いわけでもない。

問題は、ズレをどう扱うか、です。上司にとってはマネジメントスキルとして、部下にとってはキャリアスキルとして、双方がそのズレに向き合う必要があります。そしてズレを正しく認識するための手段が、対話です。

「育児中だから負荷を減らすべき」「Z世代だから飲み会は嫌いなはず」——こうした無意識のラベルは、配慮から生まれます。でもラベルを貼った瞬間、目の前の「その人」への確認が止まってしまう。

加えて、「直接聞いたら角が立つかも」という遠慮が、確認の機会そのものを奪っていく。あなたの優しさが、相手の成長機会を奪ってしまう——これが、現代のマネジメントにおけるもっとも皮肉なズレです。

「飲み会」をめぐる、上司と部下のズレ

かつて飲み会は、マネジメントの切り札でした。仕事中には言えない本音を引き出し、お酒の力で関係を深める。そのやり方でチームをまとめてきた成功体験がある方は多いはずです。

しかしいま、誘っても断られ、無理に誘えばハラスメントと言われかねない。長年磨いてきたものを突然封じられた感覚——その戸惑いは当然のことです。

ただ、飲み会を断る若手は、関係を深めることを拒否しているわけではありません。目的が見えない時間、なんとなく付き合わされる感覚を避けたいだけです。

若手の側もまた、上司がなぜ飲み会を大切にしているかを知らない。「強制される場」として受け取るだけで、そこに込められた「チームをひとつにしたい」という思いには気づけていない。ここでもズレは双方向です。

 

あなたが飲み会に込めていたもの——一体感、雑談から生まれる発見、本音が出やすい空気——それ自体はいまも価値のあることです。

ただ若手には、関係を深めるための別のやり方がある。それだけのことです。

「就業時間内の1on1」という場を手にしながら、「私はこう思っているんだけど、あなたはどう感じている?」と問いかける。それだけで、あなたが大切にしてきたものは届くようになります。

職場の飲み会を断るZ世代と上司のコミュニケーションギャップ・1on1対話のイメージ

「頑張る」をめぐる、2つのズレ

定時になると必ず帰る。休日は連絡がとれない。会議の発言も振らないと出てこない——

そういう若手を見て、「もっと頑張ってほしい」と感じたことはあるでしょうか。

一方で本人は、全力で頑張っていると自覚しています。業務時間内に集中して成果を出し、プライベートは自己研鑽と休息に充てる。それが彼らにとっての、誠実な仕事のやり方なのです。

上司世代の努力観は、時間・忍耐・積み上げ。右肩上がりの経済、終身雇用、年功序列——量で示すことが、もっとも合理的な戦略でした。あなたが積み上げてきた経験や判断力の厚みは、その日々が生んだ財産です。

Z世代の努力観は、効率・選択・集中。変化が速く正解が見えにくい時代に育った彼らにとって、消耗せずに走り続けることが誠実な戦略なのです。ここにも、生きてきた時代がつくった価値観のズレがあります。

ただ、この努力観の違いには、価値観のズレとは別の側面もあります。

あなたの目に「もっと頑張ってほしい」と映るとき、その背景には組織全体の成果や、この先に待ち受ける壁が見えています。量をこなさなければ身につかない判断力があること——長年の経験があるから見えている景色です。

一方で部下には、いまはまだその景色が見えていない。経験が違えば見える範囲が違うのは、当然のことです。

 

これは価値観の違いではなく、経験の差から来るズレです。

それをそのまま伝えようとすると「根性論の押しつけ」と受け取られかねない。だから言えずにいる管理職の方が、現場には多くいます。

だからこそ、普段の対話が必要なのです。「言いたいことが言える関係」は、いざというときに突然つくれるものではありません。

Z世代と上司世代の努力観・頑張り方の違いによる経験差のズレイメージ

明日からできる、3つの問いかけ

「対話が大事」と言われても、何をどう変えればいいのかわからない——そう感じた方も多いはずです。

難しいことはありません。特別なトレーニングも、新しいスキルも不要です。明日の会話からそのまま使える言葉を、3つだけお伝えします。

ここで、ひとつご提案があります。これから紹介する3つの場面で、ぜひ「タイワマン」を心の中に住まわせてみてください。

タイワマンとは、kurumaza が提唱する、対話の場に登場する架空のキャラクター。ズレが生じそうな瞬間に、あなたの心の中でそっと声をかけてくれる存在です。難しい顔はしません。ちょっとおかしくて、でもあたたかい。そんなやつです。

1|方針を決める前に、相手に確認する

何か対応しようとするとき、その前に一度、本人の受け取り方を確認してみてください。

対話を促すキャラクター・タイワマン
タイワマン

「ちょっと待って。その配慮、本人に聞いてみた? 聞かずに決めると、相手には"勝手に判断された"って伝わることがあるんだよね。善意って、確認してはじめて善意になるんだよ」

このひとことだけで、ほとんどのズレは未然に防げます。

2|自分の考え方や価値観を先に見せる

ズレを解くためには、まず自分がどういう考え方をしているかを相手に見せることが必要です。

対話を促すキャラクター・タイワマン
タイワマン

「まず自分から。鎧を脱いだ人にだけ、相手も鎧を脱いでくれるんだよ。"完璧な上司"を演じてると、相手も本音を隠したまま。あなたが先に人間らしくなると、場がほぐれるんだよね」

「じつは私も、どう声をかけていいか迷っているんだ」

 

「私はこういう時代に育ったから、こういう考え方が染みついているんだよね」

 

自分の考え方を先に見せた人間にだけ、相手もまた自分の本音を開いてくれます。

弱さを見せることは上司の威厳を損ないません。むしろあなたを「役職」から「信頼できる一人の人間」へと近づけてくれます。

3|「あれ?」と思った瞬間を、流さない

会話の途中で、なんとなく話がかみ合っていない気がする——その小さな違和感は、ズレが表面に出てきたサインです。流さないでください。

対話を促すキャラクター・タイワマン
タイワマン

「そのモヤモヤ、流さないで。それがズレのサインだから。"まあいいか"って流したとたん、ズレはどんどん育っていくんだよ。小さいうちに拾えるのが、対話のいちばんの強みなんだよね」

「いま、ちょっと話が食い違った気がするんだけど、もう一度整理してもいい?」

 

ズレに気づき、歩み寄ろうとするその姿勢そのものが、「この人はちゃんと聞いてくれる」という信頼につながります。

上司と部下の職場対話・1on1で信頼関係を築くマネジメントのイメージ

まず「対話」からはじめる

この記事で取り上げてきた問題は、どれも根っこに同じ構造があります。お互いの価値観や経験の違いを知らないまま、誤解に基づいて判断してしまっている、ということです。

そしてもうひとつ、管理職の方が感じている板挟みがある。部下のスキルを上げることも、あなたの仕事です。でもそれを伝えようとすると、ハラスメントと受け取られかねない。だから言えない。

この板挟みを解くのも、対話です。

ただしここで言う対話とは、「うまく話す」スキルではありません。指導してもハラスメントと受け取られない関係と環境を、日常の中でつくっていくスキルのことです。

普段から自分の考え方や判断基準を開示し、相手のものさしを確かめ、ズレに気づいたときに言葉にする——その積み重ねが、「この人になら言われても大丈夫」という土台をつくる。その土台があってはじめて、必要なことが必要なときに伝えられるようになります。

タイワマンを心の中に住まわせてみてください。「ちょっと待って、聞いてみた?」「そのモヤモヤ、流さないで」——そんな声が自分の中から聞こえてくるようになったとき、対話はもう始まっています。

必要なことを必要なときに伝えられるようになるには、関係が先に必要です。その関係をつくる入口が、対話です。

日々板挟みで迷いながらも「良いチームにしたい」と願い続けている——その誠実さは、対話という形を得たとき、はじめてチームに届きます。

 

【ライタープロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)

株式会社新恵社 代表取締役/株式会社スタディーハッカー創業者。1977年生まれ、福岡出身。2014年、メディア「STUDY HACKER」を立ち上げ。以後運営に携わる。
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