本を読むなど十分なインプットをしている、日々いろんな情報を仕入れている、でも仕事でなかなか成果を出せない……その理由は「アウトプット」が足りていないからかもしれません。
グロービス経営大学院経営研究科研究科長の田久保善彦氏は、自分の頭に取り込んだ情報やデータを使わなければ、簡単に忘れて使い物にならなくなってしまうと指摘します。「納得できた」「わかった」で終わらせてしまうのは、ただ「学んだつもり」になっているだけ。実際の仕事の場面で使える知識として定着させるためには、「アウトプット」の習慣がとても大切なのです。
今回は、成果にきちんとつながるアウトプットの手法についてお伝えしましょう。
自分に向けてアウトプットする
アウトプットには、「自分に向けてアウトプットする」やり方と「他者に向けてアウトプットする」やり方の2種類があります。まずは、自分ひとりでできるアウトプットの方法からご紹介しましょう。
【方法1】文字・文章に残す
最も簡単な方法が、文字や文章としてアウトプットすることです。これは普段の勉強で取り組んでいる人も多いはず。文字や文章を書くために手を動かし、さらに書いたものを見返すことによって、インプットした内容が頭のなかへ繰り返しすり込まれていきます。
たとえば、本の内容を章ごとに要約してノートにまとめたり、動画を観ながら内容についてレジュメをつくったりしてみてください。大事な情報が頭のなかから抜け落ちてしまわないよう、いつでも目で見て確認できるかたちで記録に残す習慣を身につけましょう。
【方法2】図や絵にしてまとめる
文字や文章だけでなく、図や絵で表現するのもひとつの手です。たとえば、矢印を使って相関図を書いたり、3色ボールペンなどを使って挿し絵を描いたりすると、インプットした内容がイメージしやすくなります。
前出の田久保氏は、自分なりの深い理解に至っている人は、インプットした内容について図や絵で上手にまとめることができていると述べます。すべて文字や文章にするよりも簡潔に構造化してまとめる必要があるため、頭のなかが自然と整理されることになるのです。
他者に向けてアウトプットする
【方法1】1対1で人に話をする
ひとりでアウトプットを重ねても、インプットした内容をきちんと理解して仕事で使えるようになっているかどうか、まだ自信がもてない人もいるはず。そんなときは、友人や同僚へ話したり、後輩へ教えたりしてみてください。
インプットした内容の理解が不十分だったり解釈が曖昧だったりすると、いざ誰かへ説明しようとしてもうまくできません。自分の理解度を測るうえで、いいバロメーターになるのです。
内容以前に、そもそもどのように話すべきかわからないときは、要素を3つ程度にまとめて話してみましょう。その際は、「CREC法」が活かせます。「CREC法」とは、「結論」「理由」「具体例」「結論」の流れで話を展開していく方法です。
C:conclusion 結論・結果・主張
- R:reason1 理由・根拠
E:example1 具体例 - R:reason2 理由・根拠
E:example2 具体例 - R:reason3 理由・根拠
E:example3 具体例
C:conclusion 結論・結果・主張をもう一度
たとえば、「結論は〇〇です。そして、この結論に至る理由は、××、△△、□□の3つです」と大きな柱を3本立ててから順に伝えるとよりうまくアウトプットできるでしょう。それでも相手の反応があまり芳しくない場合は、インプットした内容に不足がないか振り返るようにしてください。
【方法2】複数人に話をする
「複数人」に対して話をするのは「1対1」で話をする場合よりもハードルは上がります。なぜなら、聞き手それぞれの立場やもっている情報の前提が異なるため、自分の伝えたい意図が相手へ確実に伝わるとは限らないからです。
プレゼンテーションなど多くの人の前で話すことになった場合は、必然と自分の理解度を上げなければなりません。スライドを作成したり、ストーリーを何度も見直したりすることで、仕事で使えるレベルへと理解を深められるでしょう。
【方法3】SNSやブログに書く
今日では、SNSやブログでの情報発信が盛んに行なわれています。インプットした内容を自分のなかで解釈し直して発信してみるのもおすすめです。
自分の意見をまとめるだけだと、文字や文章に記録に残すのとそれほど変わりません。しかし、SNSやブログで発信することによる大きなメリットは、誰かからフィードバックをもらったり一緒に議論をしたりできること。自分とは解釈が異なる人も出てきます。さまざまなフィードバックや議論をもとに学びを深めていけば、インプットした内容は身につきやすくなるでしょう。
仕事で使えるようになるための習慣づくり
これらのアウトプット方法を1、2回やって終わりでは意味がありません。仕事に使えるようになるためには、続けていくことが重要です。たとえば、上手な話し方について、先ほどの「CREC法」を本からインプットしたとしましょう。会議や取引先との商談で話す機会が出てきたら、まずは積極的に活用してみてください。もしミスをしたとしても、なぜミスをしてしまったのか、次はどうすればミスをなくせるかを振り返りながらアウトプットを続けていけば、習慣となり、インプットした内容はきっと身についていくはずです。
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アウトプットしてこそ学びは深まります。躊躇することなく、積極的にアウトプットに励んでいきましょう。
監修:グロービス経営大学院
(参考)
グロービス経営大学院(2014), 『グロービス流 ビジネス勉強力』, 東洋経済新報社.
グロービス知見録PICK UP|「仕事の成果につながる学び」とは?~『学んだつもり』に時間を費やしていませんか?~
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