仕事中に頭がフリーズしたら「目を閉じる」だけ。心理学で読み解く葛藤の正体と即効の対処法

パソコンの前でフリーズしているビジネスパーソン

仕事が立て込んでいるとき、「休んでる暇はない。でも疲れて進まない……」という状態になったことはありませんか?

素直に休めばいいものの、「休んだら遅れる」という焦りが頭から離れず、結局パソコンの前でフリーズしてしまう……。

これは、心理学で「葛藤(コンフリクト)」と呼ばれる状態。ふたつ以上の相反する欲求や動機が同時に存在し、どちらを選択すべきか迷う心理状態です。

本記事では、「葛藤」すると動けなくなってしまう理由を心理学の視点から整理し、驚くほど簡単に即実践できる対処法をご紹介します。

なぜ私たちは「休みたいのに休めない」のか?——葛藤の心理学

「ちょっと休憩したい。でも仕事が遅れるのは嫌」

こうした欲求同士がぶつかりあうと、そこに葛藤(コンフリクト)が生まれます。*1

冷静に考えれば、時間を区切って休憩と活動を分ければいいだけ。それなのに、この板挟み状態に陥っているときは、なぜか動かないという選択をしてしまいます。思考も行動も停止してしまうのです。

葛藤の「種類」

葛藤には以下3つの基本型があるといいます。*1

  1. 「接近—接近」型
    魅力ある対象が同時に存在。どちらかを選ばねばならない。
    例:チョコレートパフェと、いちごのパフェのどちらを食べようか悩む

  2. 「回避—回避」型
    近づきたくない対象が同時に存在。どちらからも逃げたい。
    例:勉強するのは嫌だけれど、単位を落とすのも嫌

  3. 「接近—回避」型
    ひとつの対象に対して、「欲しい」と「避けたい」が同時に存在。
    例:新しいスマートフォンは欲しいけれど、通帳の数字は減らしたくない

葛藤が行動に与える「影響」

心理学(産業・組織心理学)が専門の、東京未来大学学長・角山剛氏によれば、私たちは葛藤に際し、以下のような行動をとるといいます。*1

前段の例で説明しましょう。

  • チョコレートパフェと、いちごのパフェのどちらを食べようか悩み、結果としてチョコレートパフェを選んだ場合。
    選んだチョコレートパフェの素晴らしさを強調し、選ばなかったいちごのパフェの欠点を並べて合理化を図ろうとする

  • 勉強するのは嫌だけれど、単位を落とすのも嫌だというときは、どちらにも近づかないよう中間点で行動が停止
    中間点での停止が難しい状況のときは、逃げ出したり心身の不調に陥ったりすることがある。

  • 新しいスマートフォンは欲しいけれど、通帳の数字は減らしたくない場合、対象に近づいたり離れたりを繰り返す
    何度もその新しいスマートフォンを見に行くけれど、一向に買わないので、まったく進展しない状況が続く可能性あり。

パフェの種類や新しいスマートフォンについての葛藤ならまだしも、「もう疲れてやりたくない。でも仕事は終わらせたい」と葛藤し始め、思考が停止したまま何も進まない状態が続いていたら大問題です。

なおさら心身の不調にまでつながったら大変ですよね。

新しいスマートフォンを買おうかどうか迷っているビジネスパーソン

仕事中の葛藤は「目を閉じるだけ」で打開できる可能性がある

では、この「葛藤」を乗り越えるにはどうすればいいのでしょうか?

結論から言うと、あらゆる選択肢があるかぎり、葛藤が完全に消えてなくなる方法はありません。

しかしながら――

  • 脳の緊張を解いて処理能力を高める
  • 状況の改善に役立つアイデアが生まれやすくなる
  • アイデアに必要な情報を想起しやすくする

といったことは可能です。

その方法というのが、じつは「ただ目を閉じること」なのです。

もちろん、「目を閉じれば葛藤そのものが解決する」わけではありません。しかし、目を閉じることで脳の状態がリセットされ、膠着した思考が再び動き出すきっかけになると考えられます。

以下、その科学的根拠を見ていきましょう。

科学的に見る「目を閉じるだけ」の効果

オランダのラドバウド大学の研究では、以下の2点において目を閉じているときのほうが高いスコアを出したといいます。*2

  • 拡散的思考(ひとつのことからたくさんのアイデアを出す力)
  • 収束的思考(バラバラな情報からひとつの正解を導き出す力)

この結果について、目を閉じることで外からの余計な視覚情報が遮断され、脳内で「アルファ波」が増えたために、自分の内面的な思考に深く集中できるようになったと考えられています。*2

そして――

法心理学の権威ある学術誌『Law and Human Behavior』に掲載された研究(Perfect et al., 2008)では、目をつぶることにより見たこと(視覚的詳細)も、聞いたこと(音声情報)の想起もよくなったと報告されています。

しかも、その際に虚偽の記憶が増えることはなく、純粋に正確な情報だけが増えたという結果が出ています。*3

つまり、目を閉じることで思考力が高まり、必要な記憶も正確に引き出しやすくなる。これらの効果が合わさることで、葛藤で固まっていた頭が動き出す——という流れが期待できるわけです。

さらに、私たちが毎日小刻みに行なっている「まばたき」にさえも、多大な効果があるといいます。

ブルーライト研究の第一人者として知られる「おおたけ眼科」院長の綾木雅彦氏は、まばたきの効果について、以下のように説明しています。*4

  • 目を休めると同時に脳の緊張も解く
  • 脳は0.3秒ほど目を閉じているあいだに情報をとりまとめる
  • その後、目を開いたあと情報処理に取り掛かる

つまり、まばたきは目に潤いを与えて掃除してくれるだけの機能ではないのです。目や脳を休めて集中力を回復させながら、情報処理も助けるという、大きな役割を担っているわけです。*4

0.3秒のまばたきでさえ脳の情報処理を助けるのですから、意識的に数十秒〜数分間目を閉じれば、その効果はさらに大きくなると考えられます。

目を閉じてリラックスするビジネスパーソン

実践してみた——デスクで1分、目を閉じた結果

筆者にも、葛藤が生じてフリーズしてしまうことが大なり小なりあります。

とくに原稿の締め切りが重なったとき、「どれから手をつけるか」で迷い、結局どれにも着手できないまま30分が過ぎていた……という経験は一度や二度ではありません。

そこで今回の内容をふまえ、デスクワーク中に迷いが生じて動けなくなったとき、意識的に目を閉じるようにしてみました。

目を閉じている時間は1分未満と短いのですが、そうすると「まあ、できるところからコツコツやっていくか」という気持ちになれるのです。

目を閉じることで緊張がほぐれ、過去の似たような経験を思い出しやすくなるなどして、瞬時のあいだに脳の情報処理が進んだ——といったところでしょうか。すると、意外と身近に最適な道が見えてくるものです。

すぐできて簡単で、何のリスクもありません。ぜひ一度、試してみてはいかがでしょう。

***
ちなみに、この「目を閉じて情報を遮断する」というアプローチは、GoogleのCEOであるサンダー・ピチャイ氏が実践している休息法NSDR(Non-Sleep Deep Rest/眠らず深い休息を取る)とも共通する考え方です。*5

NSDRでは、横になり目を閉じた状態でガイド音声に従い、意識的に身体をリラックスさせます。本記事で紹介した「目を閉じる」方法は、このNSDRの核となる「視覚遮断で脳を休める」という考え方を、日常の仕事場面で手軽に取り入れる実践法といえるでしょう。

科学的な研究データと、世界をリードするリーダーの習慣。もしデスクの前でフリーズしてしまったら、迷わず数十秒〜数分間だけ目を閉じてみてください。それが、あなたの脳を再起動させる最も手軽な方法かもしれません。

よくある質問(FAQ)

Q.「葛藤」にはどんな種類がありますか?

心理学では主に3つの基本型があるとされています。魅力ある対象同士で迷う「接近—接近」型、どちらも避けたい「回避—回避」型、そしてひとつの対象に「欲しい」と「避けたい」が同時に存在する「接近—回避」型です。

Q.なぜ目を閉じるだけで葛藤状態から抜け出せるのですか?

目を閉じること自体が葛藤を直接解決するわけではありません。しかし、目を閉じると外部からの視覚情報が遮断され、脳内でリラックスや集中に関わる「アルファ波」が増加します。これにより脳の緊張がほぐれ、拡散的思考(アイデアを広げる力)と収束的思考(正解を導き出す力)の両方が向上するとともに、記憶の想起も正確になることが研究で示されています。膠着した思考が再び動き出すきっかけになると考えられています。

Q.目を閉じる時間はどのくらいが効果的ですか?

研究では数分間の閉眼が検証されていますが、1分未満でも脳の情報処理が進むと考えられています。記事の筆者も1分未満の実践で効果を実感しています。まずは数十秒から試してみるのがおすすめです。

Q.まばたきにも脳を休める効果があるのですか?

はい。眼科医の綾木雅彦氏によると、まばたきで約0.3秒間目を閉じているあいだに、脳は情報をとりまとめ、目を開けた後に情報処理に取り掛かるとされています。まばたきには目の潤いだけでなく、脳の緊張を解いて集中力を回復させる役割もあります。

Q.GoogleのCEOが実践しているNSDRとはどう関係していますか?

NSDR(Non-Sleep Deep Rest)は「眠らずに深い休息を取る」方法で、GoogleのCEOサンダー・ピチャイ氏が実践しています。横になり目を閉じた状態でガイド音声に従い、意識的に身体をリラックスさせる手法です。目を閉じて視覚情報を遮断し、脳を休息状態に導くという基本的なアプローチが、本記事で紹介した方法と共通しています。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。